住宅購入を検討されている方は「リノベーション」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
中古のマンションや戸建てを大規模に改造して、新築に負けないような付加価値を持つ住宅に再生させることをいいます。リフォームが、経年劣化によるマイナスをゼロにする、原状回復や修繕工事の意味合いが強いことに対し、リノベーションはマイナスをプラスにまで引き上げる改造だといえるでしょう。
最近では、テレビのバラエティ番組で様々なリノベーションの実例やタレントの手によるリノベーションが取り上げられるなど、ちょっとした時代のムーブメントになっているようです。都心の新築マンション価格や地価が高騰していることも、新築よりも安く満足度の高いリノベーション物件に人気が移っている理由の1つでしょう。
そこで今回は、リノベーション物件のあれこれや、仲介手数料を安くしてお得に購入する裏ワザをご紹介することにしましょう。
(写真はイメージです)
リノベーション物件のメリット・デメリット
まずは、リノベーション物件のメリット・デメリットを新築物件のそれらと比較してみましょう。
リノベーション物件のメリット
- 価格が安い:中古物件をベースにしていますから、改修工事の程度や築年にもよりますが、新築物件の60~90%程度の価格で購入が可能となります。
- 立地・エリアを選ばない:新築物件(特に戸建て)は、都内では郊外以外ほとんど販売がありませんが、築年数が問題にならないリノベーション物件であれば、エリアや立地が限られることは少なくなります。
- 自由度が高い:リノベーションを自分で行う場合、内装や間取り、仕様などを自分好みに仕上げることが可能です。
- 構造や眺望のチェックが可能:新築マンションは実物の竣工前に販売されるため、建物の構造や眺望などを事前にチェックすることは不可能。リノベーションの場合、基礎構造が利用されるので、リノベーション前の引き渡しでもチェック可能です。
リノベーション物件のデメリット
リノベーション物件は中古住宅の購入となりますので、新築物件よりも建物部分の評価が低くなります。金融機関にもよりますが、一般的には築20年を超えると、建物の評価額はほぼゼロとして土地の評価分しか融資されないことが多いでしょう。リノベーション済みの物件でも、その価値を認められない場合が多いです。
中古住宅のローン金利も新築ローンより高い金融機関が多くみられます。また購入後リノベーションをする場合は、住宅ローンとは別にリフォームローンとなる場合もありますので、ご利用予定の金融機関とは事前に十分な打ち合わせが必要です。リフォームローンも通常は一般の住宅ローンより金利が高いです。
その他、次のようなデメリットがあります。
- 住宅ローン控除に条件が付く:売買の際には、築20年(耐火建造物は25年)以内、もしくは耐震基準適合証明書・建設住宅性能評価書の写し・既存住宅売買瑕疵担保責任保険付保証明書のいずれかを添付できること、などが求められます。増改築などの場合のローン控除も、修繕場所や面積などに一定の要件を求められます。
- 保証がない、または短い:新築物件の場合、不動産会社が10年間の瑕疵担保責任を負いますが、個人が販売する中古物件では免責の場合がほとんどです。不動産会社が販売する場合でも義務づけられているのは2年。またリノベーションなどの保証も2年が基本的です。
- 共用部の補修はできない:マンションの場合、共用部の塗装や配線・配管の工事は、基本的に個人ではできません。マンション全体の修繕計画に合わせるか、管理規約に基づいた協議・許可が必要となります。
リノベーション物件は、新築物件よりもエリア選定や間取りなどに自由度があり、比較的安価にお好みの家を入手できるメリットがありますが、ローンや税制面で不利になるなどのデメリットもあります。住宅に何を望んでリノベーション物件を選ぶのか、自分自身の価値観をよく確認してから購入を決める必要がありますね。
リノベーション物件を購入する方法とは
リノベーション物件を購入する方法は、大きく分けて以下の2つです。不動産仲介手数料の節減が可能な方法についても言及していきましょう。
中古物件を購入後、リノベーションを実施する
一般の中古市場から物件を購入してリノベーションを実施する場合、方法は2つあります。
- ワンストップ型のリノベーション専門業者に依頼する
- 物件探しは不動産会社、リノベーションは専門業者に依頼する
1にあげたワンストップ型のリノベーション専門業者は、物件選びからリノベーションのプランニング、施工、引き渡しまで、一貫して手配してもらえるので便利です。
マンションや戸建ては、建物部分の工法によってリノベーションのしやすさに違いがあるのですが(ラーメン構造や軸組工法がリノベーションしやすい)、施工の分かる専門業者なら物件選びの時から齟齬が生じません。リノベーション後のイメージを物件選びの段階から業者と共有しながら、提案を受けられるでしょう。
ただし業務の全部を1社に任せるわけですから、例えば不動産購入の仲介手数料を割引してもらうとか、工事費用の相見積を出させるといった交渉はちょっとやりづらいですね。全体の報酬から多少の値引きを依頼する程度の交渉となるでしょう。
一方で、物件購入からリノベーションまでの全体の予算を業者は理解できているので、契約後に大幅な予算オーバーになってしまう可能性は少ないといえます。
物件の購入とリノベーションを、それぞれ別々の専門業者に依頼するのであれば、話はかなり簡単になります。物件の購入を「仲介手数料・最大無料」のサービスをしている不動産会社に依頼すれば良いのです。
2,000万円の物件の仲介手数料上限額(税抜)は66万円(売買金額×3%+6万円)です。これが無料となれば、バスルームのリノベーション代くらいは賄えてしまいます。ずいぶんお得に思えませんか?
また、物件購入が決まってからリノベーション業者を決めることもできますので、リノベーションの具体的なイメージと予算に従って業者を選べます。
リノベーションの具体的なイメージを業者と一緒に作り上げていく方はワンストップ型リノベーション業者に、具体的なイメージをすでにご自分で強く持っている方は別々の業者に依頼するのが良いと言えるでしょう。
リノベーション済みの物件を購入する
さらに、不動産会社が既にリノベーションを実施した物件を購入するという方法もあります。
リノベーション済み物件の多くは、不動産会社が買い取った物件を大量にリノベーションしてスケールメリットを出しています。同じ程度の仕様であれば、個人で購入してリノベーションするよりも数段安いコストで入手できるのです。
その他、リノベーション済み物件には次のようなメリットがあります。
•不動産会社が販売元のため2年間の瑕疵担保責任が付き、他にも各社の保証が付くことが多い
•中古住宅ローン控除を受けられる場合が多い
•リフォームローンではなく住宅ローンの利用が可能
•工事期間が発生しないので即入居が可能
•不動産会社が販売元のため、仲介手数料は基本的に不要
リノベーションの魅力の1つである「間取りや仕様の自由度」が失われるのは難点ですが、「新築並みの設備や仕様で、新築よりも安い価格」という点を重視されるなら、リノベーション済み物件の購入をお勧めします。
リノベーション後の物件を購入する場合でも、不動産会社に依頼しよう!
最近はリノベーション物件の人気が高いため、SUUMOやHOME’Sといった不動産物件サイトでも、リノベーション物件特集が常設されるようになりました。自分で物件の目星を付けて、販売元の不動産会社から直接購入することが可能となっています。
しかしリノベーション物件は、基本的には中古物件ですから、トラブルがないわけではありません。特に多いのが水回りのトラブルです。給排水配管工事は、リノベーション後は自分では確認できませんし、前述の通り、マンションなどの共有部の配線・配管工事は基本的に手が付けられないからです。
うわべだけを新品にした安易なリフォームを「リノベーション」として販売する不動産会社もないわけではありません。契約における保証の問題などもトラブル要因の1つです。
そうしたトラブルを未然に防ぐためにも、買主側は不動産会社に仲介を依頼して、物件のチェックや契約書の確認事項について適切なアドバイスを受けた方が安心です。不動産会社を大いに利用しましょう。
「せっかく不動産会社が販売元なのに、他の不動産会社に依頼したら仲介手数料がかかるじゃないか」とご不満の方もご安心を。仲介手数料無料の会社を選べば良いのです。彼らは販売元から仲介手数料をもらえますので、ただ働きにはなりません。誠心誠意、きっちりあなたのために働いてくれるでしょう。
仲介手数料無料の不動産会社を上手に利用して、賢くリノベーション物件をゲットしましょう。
早坂龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング 代表取締役。1964年生まれ。1987年北海道大学法学部卒業。石油元売り会社勤務を経て、2015年から北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。