マンション売却を思い立ってから不動産会社に依頼するまでに、重要な5つのポイントを順にご説明します。 少なからず知識が必要となりますが、要点を外さずにしっかりと押さえておきましょう。
(写真はイメージです)
ポイント1「マンション売却の資料収集」
マンション売却の最初のポイントは、売却物件に関する基本的な情報を把握しておくことです。
具体的には
・名義人(持ち主)について
・抵当権設定(銀行ローンの担保)の有無
・ローン残額がいくらか
など、現状をきちんと把握できていることが重要です。
マンション購入時の売買契約ファイル一式
物件を購入した時に不動産会社から受領した、売買契約の資料も探しておきましょう。1冊のバインダーにまとまっているものが多く、その中には次のような付属資料があるはずです。
・売買契約書
・重要事項説明書
・登記証
・マンションカタログや当時のチラシ
・測量図や室内レイアウト図などの図面類
・マンション管理規約
・アスベスト
・耐震などの診断書(あれば)
・長期修繕計画や積立金報告書など
マンションの登記簿謄本(登記事項証明書)
購入当時の登記簿謄本が残っていれば、上記の名義人などを確認できます。しかし登記簿に変更があるかもしれません。最寄りの法務局(または出張所)に行けば最新の登記簿謄本を入手できます。
こうして改めて、売却するマンションの名称や住所・部屋番号、また土地・建物の名義人とその持分、抵当権の設定の有無やその設定会社(通常はローン銀行の子会社名)とその設定担保額を把握しておきます。
また、名義が奥様や親御さんとの共有である場合は、その共有者にも売買取引への合意や捺印が求められます。さらに、物件の最終引渡しの段階では、抵当権の抹消や所有権移転登記作業の依頼が伴います。こうした事態に備えて、共有名義や持分なども再確認しておきましょう。
ポイント2「売却マンションの周辺相場を知っておく」
マンション売却を思い立った方の中には、周辺の類似マンションのチラシやウェブ情報などがきっかけとなった方も多いのではないでしょうか。そうであれば、大体の相場情報は予想されているでしょう。
しかし、売りたい価格と実際の売却価格には、大きく差が出てしまうケースが多いのも実情です。
相場の把握はポータルサイトが基本
最近は、不動産ポータルサイトの物件情報が大変充実しています。まずは「suumo」「HOME’S」「アットホーム」などの全国区サイトから、売却したいマンションと類似の物件を探し、相場を把握していきましょう。
また、財閥系の大手不動産会社や東急リバブルなどの電鉄系不動産会社のサイトも参考になります。売却マンションのブランドや路線立地によっては、これらのサイトから類似物件の売り出し価格をつかめます。
しかし、売り出し価格は決定価格とは当然違ってきます。また決定価格が一般公開されていることはありません。
不動産会社は、加入している指定流通機構・REINS(レインズ)に決定価格を登録するよう要請されてはいますが、実際は登録しないことが多いようです。不動産会社にはメリットも特にないからでしょう。登録されているのは、あくまで「売り出し価格」だということです。
最新の売却マンション価格や過去の売却マンション価格の推移などが分かる、第三者的なサービスも参考になります。
例えば、東京カンテイと@Niftyが提供しているサービスでは、@Niftyのユーザー登録さえあれば鑑定依頼が可能で、指定マンションや周辺マンションの売り出し価格事例や履歴までの情報を、1件5,000円弱で報告書として入手できます。
参考:マンション価格情報サービス
なお、複数の不動産会社に査定を依頼できるという「一括査定」サイトは、手軽さから人気のようですが、あまりおススメはできません。
こうしたサイトは不動産会社が提供しているものではありません。あくまで運営会社が見込み客の個人情報と売却物件情報を取得し、スポンサーの不動産会社に提供するのが収益の目的であるため、正しい査定価格にはならないでしょう。
査定する各不動産会社も、顧客を獲得するために売り出し価格を高めにせり上げようとするため、意味のない査定になりかねません。
最も理想的なやり方は、信頼できる不動産会社を選んで、その会社としっかりとコミュニケーションを取り、あなた自身が納得できる売り出し価格の戦術を立てることです。
ポイント3「不動産会社を選ぶスタンスの確定」
数ある不動産会社から、どこに売却を依頼するのかを選ぶのは、本当に大変です。この煩雑さを避けるにはまず、候補をピックアップする時のご自分のスタンスを確定しておくことです。
一括査定サイトにだまされない
「だます」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、サイトと提携する各不動産会社は、上述の通り「他社に先駆けて顧客を確保したい」と考えるため、高く見積もられることが多く、見積価格の公正さが保たれないといわれています。また残念なことに、一括査定サイトに登録した後、一斉に業者からメールや電話が入ってきて困るというケースも多いようです。
「大手だから安心」とは限らない
売却したいマンションに「ブランド」がある場合は、同系列の大手不動産会社を選ぶのが無難です。同一ブランド系列なら、グループのマンション売買情報も豊富であると考えられ、また購入見込み客の獲得も進んでいるでしょうから、信頼はできます。ただし「上から目線」のコミュニケーションには我慢も必要でしょう。
ここで注意すべき点は、大手不動産会社は、売り手・買い手両方から仲介手数料を取るビジネスモデルだということです。本来利害が対立する、いわば犯人と被害者の両方を弁護するようなことは、利益相反行為にあたり、禁じ手といえます。
もしあなたが、手数料価格もリーズナブルな取引をしたいのなら、今業界で進んでいるエージェント(代理人)方式を採用し、コストダウン努力をしている不動産会社を選ぶのが良いでしょう。また、2重の手数料を取ることを狙った囲い込みを行っていないことを宣言しているような会社が望ましいです。
そうした会社は、売主の立場に立っての売却活動に専念してくれるでしょうし、経営努力と企業倫理で「片手」型の仲介が可能なはずです。できれば上場企業のグループで、社会的責任や取引の信用と実績を持っている会社から選ぶのをおすすめします。
ただし、そうした会社はまだ業界全般としては一部の動きですので、サイトの全般から、
仲介手数料を割り引いてくれる不動産会社に頼む
Googleの検索エンジンを使って、検索キーワードに例えば「マンション売却 仲介手数料無料」と入力してみましょう。より短期でマンション売却をしたいのなら、こうしたキーワードを看板とし、かつグループ基盤もしっかりした不動産会社に仲介依頼してみるのが近道です。
具体的には、首都圏ならソニー不動産やレッズ(REDS)社、また京阪神ならウィル社などがあります。
ポイント4「媒介契約の種別と特徴」
マンション売却の仲介を不動産会社に依頼する契約を「媒介契約」といい、いくつかの種類があります。媒介契約の種類について詳しくは他に譲りますが、ここでは、契約タイプを選ぶ時のツボをご説明します。
専属・専任契約を選ぶケース
資金があり買い替えでも心配のない方や、ゆっくり売却先を探したい方は、大手不動産会社との専属・専任媒介契約がおすすめです。
しかし、極力コスト意識を抑えて売却活動をしたいと考えている方なら、まず3か月間の専任媒介契約を締結します。契約する不動産会社が、既存の潜在顧客を保有していれば即売却できることもあります。
また、通勤などに便利な希少物件で価格設定がうまく顧客ニーズにマッチした場合などは、3か月でマンションを売却できるケースもあります。
一般媒介契約を選ぶケース
専属・専任契約をして3か月で売れなかった場合は、別の不動産会社と専任契約を締結しなおすことをおすすめします。やはり需要と供給で決まる市場ですから、競争原理がプラスに働きます。
ポイント5「売却予定価格と予算のシミュレーション」
最後の重要なツボです。何といっても、全体にかかるコストをシミュレーションし、しっかりと把握しておくことは大切です。
譲れない最低限の売却価格の腹づもり
買い替えをする時には、「最低限、この価格でマンションが売却ができなければ資金計画が破綻する」という、ぎりぎりの価格ラインをしっかり認識しておきましょう。この価格を下回る局面では、マンション売却の中止も想定に入れておきます。
念のため、不動産会社とも相談した上で、専門の買い取り会社に事前に確認し、最低限譲れない価格以上で買い取りできるかも見積もっておくと良いでしょう。
買い替え時のローンへの備え
売却が決まれば、次に購入するマンションの売買契約を締結しやすいですね。もし、先に購入契約をした場合には、「二重ローン」の状態になります。この負担に耐えられない場合には、二重ローン時の対応ができるローン引受銀行に事前に相談し、事前審査を受けておくと安心です。
仲介手数料や家具などに充当できる「諸費用ローン」なども含めて考えてると良いでしょう。
次のマンション購入に必要な銀行ローンの「事前審査」を通しておくことも重要です。銀行には、仲介不動産会社から話を通すなどして、事前によく相談しておきましょう。売買契約後は「本審査」に速やかに通り、ローン契約へと進むことが望まれます。
いかがでしたか? マンション売却を依頼するまでにこうした5つのポイントを把握しておき、買い替えの成功を勝ち取ってください。
すずき忠(宅地建物取引士)
電器メーカー勤務後にコンサルタントとして独立。東京でWEB活用の宅建業を実施。マンションサイト構築・運営やライティング活動に従事。