不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE
- 最終更新日:2023年12月25日
- 公開日:2023年12月11日
『正直不動産』とは? 前シリーズを見逃した方も、これさえ読めば間に合います!
2024年1月3日の『正直不動産スペシャル』を皮切りに、翌週から全10回にわたり放送されるNHKドラマ『正直不動産2』。小学館のビッグコミックで連載中の同名漫画(原案:夏原武氏、脚本:水野光博氏、作画:大谷アキラ氏)が原作で、不動産業界の闇や不動産をめぐる人間模様を描いたドラマは山下智久さんや福原遥さんらキャストの好演もあって人気を博しました。
(写真はイメージです)
みなさまの中には「前回、見逃した!」という方もいるかもしれません。でも、ご安心ください。これさえ読めば、前回のシリーズの概要を簡単に押さえ、『正直不動産スペシャル』『正直不動産2』の視聴が楽しめるでしょう。
(不動産のリアル編集部)
目次
嘘がつけなくなった不動産営業マン
都心のきらびやかな夜景を見下ろすタワーマンションの一室。ワイングラス片手に窓の外を見つめ、女性に甘い言葉をささやく、登坂不動産営業副課長の永瀬財地(演:山下智久)。翌朝、高級スーツに身を包み、高級腕時計を腕に巻いてさっそうと出勤する永瀬の営業成績は圧倒的1位です。
永瀬の転落と真実の重さ
しかし、永瀬は同僚から「ライヤー永瀬」「息を吐くように嘘を並べて契約をもぎ取る」と陰口をたたかれています。本人も、後輩の月下(演:福原遥)に向かって堂々と「この業界には『千三つ』って言葉がある。千の言葉の中に、真実は三つだけ。正直者が馬鹿を見る。嘘をついてなんぼ。それがオレの営業スタイルだから」と言い放つ始末。不動産営業マンに対して世間が抱いていそうな偏見を体現したような人物です。
ある日、地鎮祭の準備が行われていた土地にあった小さな祠(ほこら)を撤去しようした永瀬は手元が狂い、破壊してしまいます。そのとき、一陣の風が永瀬の体を通り抜けました。これはたたりだったのか、以降、永瀬は肝心な場面で本当のことしか言えなくなります。職場の人間関係に支障を来すばかりか、契約も次々と白紙になり、自宅はタワーマンションから1Kの薄汚れたアパートへと転落してしまいました。
真実が解き明かす人間の心
仕事でさらに舌禍は続きます。新社会人の女性が父親とともに賃貸マンションの契約をする際、永瀬は「オレならこんなクソみたいなオーナーの物件には金をもらったって住まないけどな」と言ってしまい、契約が破棄されてしまいます。さらに、怒鳴り込んできた賃貸マンションのオーナーに、大勢が見ている前で入居者へのストーカー行為や盗撮行為を暴露。収拾がつかなくなり、もはや辞表の提出も覚悟した永瀬でしたが、親子から「言い方は無礼だったが、正直に話してくれたおかげで危険な目に遭わずにすんだ」として改めて部屋探しを依頼されることになりました。
正直なことが逃げかけた客の心を動かし成約へ
誠実な営業が生む意外な信頼
2話以降も、嘘をつけないことがあだとなってピンチに陥りながらも、その正直さが客を助けることになる、というパターンが続きます。
3話では、妻が上位の夫婦がペアローンでマンションを買おうとしたとき「離婚の可能性も視野に入れていますか?」と口走る永瀬。しかし、ペアローンの本質を「二人分の人生を人質に取られるようなもの」と喝破し「夫婦は対等なんです。あなた方、お互いの気持ちを包み隠さず、トコトン話し合ったんですか? このままだと、本当に離婚しますよ」と熱っぽく語り、夫婦の心を動かして無事に成約します。
リバースモーゲージと新たな選択
7話では、自宅の売却を任せようとしてくれた客に、あろうことか「絶対にこの家を売ってはいけません」といい、知人で三友銀行の榎本美波(演:泉里香)が担当のリバースモーゲージの契約を勧めてしまいます。会社からすると背信行為のような言動ですが、それは敏感肌を持ち一般の公園では遊ぶことができない客の孫にとって唯一の遊び場である自宅の庭を失わないようにしてほしいとの思いからでした。こんな言葉に客は「あなたなら信頼できます」と永瀬に売却を懇願する結果となりました。
不動産業界の悪しき商習慣も余すことなく描写
ドラマが映す業界の暗部
また、どのエピソードにも不動産業界の悪しき慣習や、客と業者の情報の非対称性を利用してビジネスを優位に進めようとする企みが余すことなく描かれているのもポイントです。
2話では不動産会社の営業マンが心理学を駆使して予算超えの部屋を契約させるテクニック、5話ではホームインスペクターを懐柔してニセ診断をさせ、欠陥マンションを売りつけようとします。6話では建築コストを減らすために、ハウスメーカーが下請けの工務店に欠陥住宅を作らせようとしました。
7話には、不動産の所有者になりすまして売却を持ちかけ、多額の代金をだまし取る「地面師」が登場。地面師といえば、戦後まもない頃やバブル時代には多発しましたが、不況とともに下火になりました。平成末期、大手ハウスメーカーが55億円をだまし取られたことで再び世間にその名が知られることになりました。
このほか、業者が賃貸住宅をオーナーから一括して借り上げるサブリース契約や、オーナーが事故物件化を恐れて単身老人がなかなかアパートに入居できない問題など、不動産にまつわる代表的な社会問題がテーマに取り上げられており、単にフィクションにとどまらないエピソードが満載でした。
永瀬を取り巻く人間関係
複雑な繋がりと登坂不動産の内幕
永瀬を取り巻く人間関係についても振り返っておきましょう。永瀬が勤務する登坂不動産の社長、登坂寿郎(演:草刈正雄)は、永瀬が大学時代、自宅を競売にかけられそうになっているのをたまたま知り、上手に処理してあげました。感激した永瀬は「お客から感謝されて、金ももうかる。そんな仕事、最高じゃないですか」と宅地建物取引士の資格を取得し、登坂不動産に入社します。
永瀬の上司で、たびたび昭和の価値観を部下に押しつけるコミカルな営業部長、大河真澄(演:長谷川忍)も高校中退後、ティッシュ配りのバイトから登坂社長に拾ってもらい、不動産の営業マンとして鍛えてもらった過去があります。
後輩の月下咲良(演:福原遥)は「カスタマーファースト」に一途な女性営業です。一家が離散し、六畳一間の築古アパートに引っ越すときに案内してくれた営業担当の女性から「家なんかハコでしかない、住む人が幸せだと思える場所。それこそがいい家なんだ」と気づかされ、「だったら今度は私が」と不動産業界に飛び込んだそうです。
対立と協力の間で
登坂不動産でライバルだった桐山貴久(演・市原隼人)は、永瀬に他社のスパイを疑われるほど成績に激しくこだわっていました。実は建設会社勤務だった父親が不祥事の責任を押しつけられて自殺しており、父のような真面目な社員が報われる会社を、建設に近い不動産という業種で興そうとしていたからでした。桐山は登坂不動産を離れ、不動産ブローカーとして独立。食えないヤツながら、ピンチに陥る永瀬にさりげなく解決のヒントを示してくれる存在です。
こうして見ると、永瀬の同僚は、見えない同じ糸に手繰り寄せられたように思えます。そんな登坂不動産を目の敵にして、ことあるごとに客を横取りするのが鵤(いかるが)聖人(演:高橋克典)率いるミネルヴァ不動産です。
鵤は里親の地面師から地上げや詐欺を学び、登坂が昔勤めていた大手不動産会社も狙いました。登坂の通報により鵤の父親は警察に摘発され、獄死するという壮絶な過去があります。登坂を逆恨みする鵤の怨念はさらにすさまじく、父親に虐待を受けた仕返しに父親を殺害する予定だったのに、登坂のせいでかなわなかったので、登坂を許さないというのです。
ミネルヴァ不動産で活躍する花澤涼子(演:倉科カナ)はたびたび永瀬や月下の客を横取りする敏腕営業で、プライベートでは一児のシングルマザー。もともと大手ゼネコンで施工管理者でしたが、作業員から連日セクハラを受け女性ゆえに軽視されることに疲弊しているところを、鵤社長に拾われたという過去があります。
2024年1月3日の『正直不動産スペシャル』と翌週からの『正直不動産2』ではさらに新キャラが登場し、ストーリーを盛り上げます。これだけインプットしておけば2022年の『正直不動産』を視聴していなくても楽しめるはずですが、より深く知っておきたいという方は、当サイトの全話のレビュー記事と宅建士による解説記事を、ぜひご覧ください。
(不動産のリアル編集部)