不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 公開日:2023年3月30日

隣地から越境した枝は切除OKに? 2023年4月施行の改正民法を専門家が解説

今年2023年4月1日は、2021年に改正された民法の施行日です。不動産に関係する法律の中には「明治以降の大改正」といわれるほど大きな改正がありました。主なものに共有制度の改正、財産管理制度の改正、相隣関係の改正などがあります。

 

これらのうち、相隣関係の改正のメイン論点の1つ、「新しい枝の切除に関するルール(民法第233条)」について解説します。

 

庭木の剪定

(写真はイメージです)

 

改正【前】は隣地から伸びてきた木を切るなら裁判

 

いきなりですが、みなさんに〇×クイズを出します。

 

Q:土地の所有者は、隣地から木の枝が境界線を越えて伸びてきたとき、自らこれを切ることができる。○か×か?
 
A:×(できない)

 

「え? なんで?」と思われた方もいるのではないでしょうか。まず、改正前の条文を見てみましょう。

 

■旧法条文(竹木の枝の切除および根の切り取り)
第233条 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

 

2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

 

改正前の民法では、土地の所有者は木の所有者に枝を切らせることはできますが、木の枝を自ら切ることは認められていませんでした。

 

これは、越境した枝を切ることは、木に物理的な変更を加えることになり、場合によっては木の価値にも影響を与えるため、木の所有者が枝を切ることが合理的であり、かつ、適切であると考えられたからです。

 

一方、2項にあるように、隣地から木の「根」が境界を越えて伸びてきた場合は、自ら切ることができます。

 

通常であれば、「枝が越境しているから切ってくれ」と頼めば、隣地の所有者は「ごめん、ごめん」とばかりに枝を切ってくれておしまいです。

 

しかし、そうでない場合もあります。伸びてきた枝によって迷惑を被っているのに何もしてくれないなら自ら木の枝を切るしかありません。そのためには、裁判所に訴えてお墨付きを得た上で、執行官による立ち合いのもと、枝を切る必要があります(強制執行)。

 

これは手続きが煩雑で費用もかかります。また、隣地が共有となっている場合、改正前の民法では、共有者全員に対して強制執行を申し立てる必要がありました。隣地の所有者がわからない場合については、改正前の民法では触れられておらず、土地の所有者に不公平なケースが生じていました。

 

このため、隣地からの枝問題は「隣から根っこが伸びてきたら勝手に切ってOK。だけど、枝が伸びてきたら勝手に切っちゃダメ。切る場合は裁判が必要」というふうに理解されてきたのです。

 

改正【後】はルールのもとで切除が可能に

 

改正後の条文を見てみましょう。

 

■改正法(竹木の枝の切除および根の切り取り)
第233条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

 

2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

 

3 第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

 

(1)竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにも関わらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
(2)竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
(3)急迫の事情があるとき。

 

4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

 

改正後でも、改正前と同様に、原則として自ら枝を切ることはできません(所有者に切らせることは可能)。しかしながら、2項によって共有の場合の取り扱いが新たに定められました。また、3項で、例外的に(1)(2)(3)の場合は、自ら枝を切ることが認められることになりました。

 

2項(共有の場合の取り扱い)ですが、法改正により、隣地の木の枝が越境している場合に、隣地が共有のときは、各共有者は単独でその枝を切ることができることになりました。改正前は共有者全員に対して強制執行を申し立てる必要がありましたが、改正によって共有者の1人に対して行えば済むことになり、手続きが軽くなっています。

 

次に、3項(例外的に自ら枝を切ってOKなケース)についてです。3項(1)は、隣地の所有者に枝を切ってくれるよう頼んだにもかかわらず、一定の期間がたっても枝を切ってくれない場合は、裁判を経ずに自ら木を切っていいことになりました。

 

ただし、隣地が共有になっている場合は、共有者全員に催告する必要がある点に注意が必要です。また、相続登記が未登記で相続人が複数いるような場合も手続きは面倒です。また、催告後の「相当の期間」はおおむね2週間ほどが目安とされています。

 

3項(2)は、隣地の所有者が誰かわからない場合、あるいは、誰かわかっても、どこにいるかがわからない場合は、自ら枝を切っていいことになりました。ただし、所有者が不明か否か、所在が不明か否かの確認は、ただ電話する程度の確認では不十分で、登記簿謄本による確認や役所での確認などが求められます。

 

最後の3項(3)の「急迫の事情」とは、枝を切らなければ火事になってしまう場合や、建物修繕工事を実施するためには枝を切らなければ工事ができない場合などです。

 

まとめ

 

以上が改正民法のうち、枝の切除に関するルールの変更点になります。

 

改正によって、越境された側は枝を切りやすくなりました。しかしながら、自ら枝を切ってしまうのはあくまで最終手段であり、まずは隣地の所有者に枝を切ってもらうのが原則です。これは、改正前も改正後も民法に規定されるとおりになります。

 

安直に枝を切ってしまうと、場合によっては、隣地の所有者とトラブルになり、損害賠償請求をされてしまうことさえ考えられます。隣地の所有者に枝を切ってもらえず、自ら切る場合であっても、相手方の承諾を得てから切るなどの配慮が必要でしょう。

 

また、隣地の所有者が木を切ってくれた場合は、費用負担の問題はありませんが、自ら木を切った場合に、その要した費用をどちらが負担するのかが問題になります。費用負担については、民法に規定がありません。ですが、一般的には隣地の所有者が負担すべきと考えられます。

 

ただ、隣人が費用を出してくれるような人なら、枝を切るよう依頼したときに素直に切ってくれているはずですから、負担してもらえる可能性は低いかもしれません。

 

 

後藤武
不動産鑑定士。宅建士。大手不動産鑑定会社で10年間、不動産鑑定評価を行い、事業会社の不動産部で10年ほど不動産売買、管理、仲介の実務を行う。現在は、自営にて不動産管理業を営む。

 

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