電車の中吊りや新聞の折込、各種インターネットのバナーなどで新築マンションの広告をよく見かけます。そこにはセールスポイントのアピールだらけで、懸念点などはほとんど記載されていません。

 

これらの広告を見て気になった人の多くは、次に新築マンションのモデルルームを見学に行くのですが、このモデルルームには見学者がマンションを気に入るようにたくさんのわなが仕掛けられています。

 

モデルルームを気に入って、早々に購入の決断をしてしまうと、住み始めたときにモデルルームとのあまりの違いに愕然としてしまうかもしれません。わなをくぐって、いい買い物をするためのポイントをお伝えします。

 

リビング

(写真はイメージです)

 

購入意欲を高めるモデルルームの仕掛け

 

標準仕様ではなく魅力的なオプションが多数設置されている

 

モデルルームには、食洗機や二重窓、造り付けの棚、アクセントクロス、珪藻土キッチンマット、エコカラットなどお部屋をバリューアップさせるオプションが多数設置されています。全面が白い壁紙よりもアクセントクロスのあるお部屋はオシャレに見えます。造り付けの棚は寸法がお部屋にピッタリなので、お部屋がスッキリと見えるでしょう。

 

ただ、これらは家を買って普通についてくる物ではありません。当たり前ですが、希望して設置するには追加の費用がかかります。新築マンションのモデルルームの中にはオプションだらけというお部屋もあり、購入後に完成したお部屋を実際に見た時にイメージと大きく違うと残念な気持ちを抱く人もいます。ブライダルフェアで見学する結婚式場と同じような感覚かもしれません。

 

家具や家電、インテリアにも要注意

 

モデルルームには、生活のイメージが沸きやすいように家具や家電が設置されています。これらの家具や家電は高級品の場合もあります。私も実際、30万円近い高級ブランドのダイニングセットが設置されているモデルルームにご案内したことがあります。家電や家具を買い替えるならば良いのですが、今ある家具・家電をそのまま使いたい方は、モデルルームの家具家電に幻想を抱かないように注意しましょう。

 

モデルルームの明るさ

 

また、モデルルームでは室内を明るく見せるために全ての照明が点灯しています。普通の暮らしでは電気代の節約のために不必要な電気は消しているはずです。明るいモデルルームに感動して購入しても、実際のお部屋は暗くなるでしょう。一般的に南向きバルコニーの間取りであれば、玄関は北向き、共用廊下は専有部の中央です。照明が点灯していなければ真っ暗です。玄関を開けたらお部屋中がパッと明るいということはまずありません。

 

モデルルームでは分からない事がたくさんある

 

「モデルルームを見に行ったらすごく気に入った。マンションの場所は知っているから、その場で購入の決断をした」という方もいます。ですが、モデルルームを見学しただけでは、そのマンションの特徴を理解したとはとても言えません。モデルルームのみでは分からないことがたくさんあります。

 

実際のお部屋の環境は分からない

 

まず、モデルルームとマンションを建設している現場の立地条件が異なります。当然のように、陽当たりは異なりますし、周辺の建物によって風通しも違ってきます。風が抜けずに湿気でカビが発生しやすいというお部屋もあります。あくまで雰囲気を知るためのモデルルームであり、その環境がそのまま購入するお部屋の環境に当てはまるということはまずありません。

 

敷地内の住戸配置や構造は分からない

 

また、見落としがちなのがマンションの住戸配置や構造です。モデルルームは、仮設建物ですので入ってからすぐにモデルルームへたどり着きます。しかしながら、大規模のマンションでは、エントランスから5分ぐらい歩かなければならないこともあります。駅徒歩5分のマンションでも、敷地内でプラス5分歩くのならば、駅まで10分以上もかかってしまいます。エレベーターが少ないマンションでは朝の通勤時間にエレベーターの待ち時間が長く、思ったよりも駅の到着に時間がかかるということだってあるでしょう。

 

モデルルームで分かるのは住戸内の雰囲気だけ、と考えましょう。ただ、生活を営む上では、マンション周囲の環境はもちろん、マンションの敷地内の共用施設や構造もとても重要なポイントです。

 

モデルルームにダマされないためのポイント

 

以上のように、モデルルームで見た情報だけに左右されるのは危険なことです。完成前に完売することが多く、現物を見て買うことがなかなかできない新築マンションですが、購入に当たって注意しておくことはなんでしょうか。

 

お部屋以外にもしっかりと目を向けよう

 

住まい選びにおいて、毎日の通勤や通学、お買物の利便性も生活の重要なポイントです。最寄り駅までの道のりが暗くないか、お部屋から自転車置場やごみ置場の距離は問題ないか、多くの居住者が通る動線の住戸ではないか、さまざまな面からチェックをしましょう。

 

冬に現地を見たらバルコニー前面の落葉樹の葉が落ちていて陽当たりが良かったのに、夏になったら葉が生い茂って日当たりが悪くなったというケースもあります。そのお部屋で春夏秋冬、毎日生活をすることをしっかりとイメージして住まい選びのポイントに見落としがないか再確認しましょう。

 

モデルルームはオプションだらけと認識しておく

 

モデルルームはパッと見て多くの方が気に入るように見栄えのよいオプションを組み込み、きれいな家具・家電を配置しています。目を引かれるのはしょうがないことですが、生活感のあるお部屋にはなっていませんので、過度に惑わされることなく見学しましょう。現場に現在の自宅の写真を持ち込むなどすると、生活イメージが沸きやすいのでおすすめです。

 

生活を脅かすかもしれない「新築プレミアム」

 

新築マンションは、土地の仕入れ価格に建物の建設費と分譲会社の販売経費や利益を加えて最終的な販売価格が決まります。一方、中古マンションは、売主各々が購入したときの価格を基準にするのではなく、周辺で売買が成約した事例を参考にしながら価格が決まります。

 

新築はいったん入居すると中古マンションとして扱われます。築1~2年の築浅マンションも同様であり、周辺の中古マンションの成約価格が低ければ、価格決定の方法の違いによって新築時の購入価格よりも大きく値下がりしてしまうケースがあります。この新築から中古へ取り扱いが変わったときに下落する価格の差を指して「新築プレミアム」と呼びます。

 

新築時に物件価格の100%の住宅ローンを組んでしまうと、急な転勤辞令などによって築浅状態で売却しなければならない場合に、新築プレミアムの影響から中古としての売却価格よりも残債が上回ってしまうという状況に陥る可能性もあります。こうなると、家計に大きな負担となるでしょう。そこが新築の怖いところです。

 

中古マンションにも魅力がたくさんある

 

日本では昔から住まいに対しては新築を求める傾向が根強くあります。しかし、新築物件には上記のようなリスクもあるため、昨今では、新築よりも中古マンションの売買が活発であり、2016年には新築の成約件数を中古の成約件数が上回りました。プロの私から見ても、中古マンションには新築にはない魅力がたくさんあります。

 

中古のメリット(1) 実際のマンションとお部屋を見学できる

 

新築マンションと違い、購入するお部屋を実際に見学できるのは中古の大きな魅力です。実際に住むお部屋の陽当たりや風通しなどを確かめることができ、生活がイメージしやすいです。

 

中古のメリット(2) 住民や管理運営が見える

 

新築では絶対に見えないこと、それは他の住民やマンションの管理運営態勢です。同年代の子供がいるか、ゴミ出しや駐輪のマナーは悪くないか、管理員さんはいい人か…。新築は、どのようなコミュニティになるかわからないというデメリットがあります。また、管理会社がどのように運営してくれるかも、資産価値に大いにかかわってくるだけに気になるところです。どのような方が住み、どのように管理運営がなされているかを知ることができるのは中古マンションならではのメリットです。

 

中古のメリット(3) 幅広い選択肢

 

新築よりも選択肢の幅が広いという点は中古のメリットの1つです。駅からの距離、お部屋の広さ、築年数、階数(眺望)、共用施設の有無、規模など、新築とは違って多数のマンションから少数の売却住戸があるので希望条件の優先順位をつけながら、自分に合ったマンションを選ぶことができます。また、一般に立地がいいマンションは中古のほうが多いです。

 

おすすめは「リフォーム済みの中古マンション」

 

「中古マンションも気にはなるけど、他人が使ったお部屋に住むのはちょっと…」と思われる方もいるでしょう。とくに風呂やトイレ、キッチンなど水回りには毎日使うだけに古さが真っ先に出てきます。

 

こういう人にはリフォーム済みの中古マンションがおすすめです。室内がリフォームされていて新築のようにきれいでピカピカ、さらに実際のお部屋の環境やマンションの管理状態も確認することができます。

 

このように、住まい選びの候補を最初から新築マンションのみに絞るのではなく、リフォーム済みの中古マンションなども検討することが、賢い買い物になるでしょう。

 

 

斉藤勇佑(宅地建物取引士)
大学卒業後、5年間不動産売買業務に従事。その後、不動産管理会社に転職し、分譲マンションの維持・管理を中心とした業務に5年間かかわり、現在は不動産のストック分野の業務に従事。