マンション売却を成功させるため、売主のみなさんはあれこれと作戦を立てられるはずです。しかし、いくら値下げをしても売れないことがあります。
売れない理由はいろいろありますが、どうしても早く売ってしまわないといけない事情があるとき、どうすればよいのでしょうか。今回はそんなときの最終手段として「業者買い取り」という選択肢をご説明します。
(写真はイメージです)
不動産会社が提案する価格では売れないこともある
マンションが売却が成功するかどうかは、最終的には「ご縁物」ともいえます。不動産仲介業者は売主の事情も考慮した上で売却想定価格を提案しますが、それは「必ず売れる価格」という保証はありません。
不動産売買では、過去の成約事例から成立する相場と、現在販売されている類似物件と比較との合わせ技で、不動産会社が査定価格を算出します。その査定価格をもとに、売主と話し合った上で売却価格を決めます。
しかし、その価格で売却が上手くいかずに想定よりも長引いてしまうことがあります。少しずつ販売価格を下げていけば、いつかは購入希望者が現れるものですが、それがいつになるかは誰にも分かりません。
こんなとき、一般の購入検討者を探す方法とは別に、「不動産業者による買い取り」という選択肢があります。不動産業者による買取は成約する確率が非常に高く、売却が上手くいかないときに有効なのですが、詳しくご説明しましょう。
不動産業者が買い取る理由
一般の方がマンションを探す理由は「自分で住むため」や「他人に貸すため」などいろいろですが、買取業者がマンションを購入する理由はひとつしかありません。それは「利益が得られるから」です。
買取業者がマンションを売却する場合、買い取り後にリフォームして売却するのが最も多いパターンです。築30年が経過したマンションは経年劣化がかなり進行していますし、設備も古くなっています。こんな状態では、一般の購入検討者にとっては、リフォーム後のイメージが抱きにくく、購入意欲が高まりにくいでしょう。
こういう人のために、不動産買取業者が専門家の知見を踏まえて現在の住宅ニーズに合わせたリフォームを施して付加価値を加えることで、買取金額に利益を乗せて売るというビジネスモデルです。
買い取りを選択するときのメリットとデメリット
業者買い取りをした場合、メリットとデメリットとありますが、今回はデメリットの面から説明します。
一番のデメリットとして挙げられるのは買取価格が一般の相場価格よりも低いことです。古本や古着をリサイクルショップなどで売った経験のある方はイメージしやすいと思いますが、買い取り価格は、店で販売されている中古品の販売価格よりも当然、下回るのと同じです。リフォーム再販の場合、いくら業者が付加価値を加えて再販するとはいえ相場価格から大きく上乗せした価格では売れません。なので、買い取り価格は安くなるのです。
相場価格が3,000万円の場合、不動産会社が買い取ってリフォーム再販する際の価格の内訳の一例はこうなります。
買取価格 |
2,500万円 |
経費 |
100万円 |
リフォーム費用 |
300万円 |
再販利益・再販経費 |
300万円 |
再販価格 |
3,300万円 |
「そのマンションのお部屋にリフォーム済みという付加価値を加えた場合、相場よりもどれだけ高く再販価格を想定することが出来るか」ということを考え(今回は3,000万円→3,300万円)、そこから経費や利益を差し引いた額が買取価格になります。
売主は、相場よりも低い価格で売却するという事実を受け入れなければなりません。これは、大きなデメリットといえるかもしれません。
一方のメリット、それは「スピード」と「確実性」です。
「スピード」とは、売買契約締結までのスピードと、契約締結から引渡までのスピードに分かれます。要するに、前者は購入希望者を見つけるまで、後者は買主が現れてから引き渡すまでの早さです。
一般の購入希望者がなかなか現れない状況では、前者の期間には目途が立ちません。しかし、業者買い取りであれば、一週間もあれば足ります。
また、一般の購入希望者と違い、業者買取の場合は後者の期間の短縮も可能です。買主が一般人だと、売買契約後に住宅ローンの本申込を進めるため、2~3カ月はかかるのですが、買主が業者だと、資金工面などが容易なので、通常1カ月、早ければ2~3週間で引渡までを完了できます。
すぐにでも売却したいという事情の売主にとっては、業者買い取りのスピードは大きなメリットになります。
2つ目のメリットが「確実性」です。また住宅ローンの話になりますが、一般の買主は住宅ローンの審査が必ず通るとは限らず、その場合、特約に基づき売買契約を白紙撤回されてしまいます。一方、業者買取の場合はそのようなことはまずありません。
3社くらいに価格を提示させ比較検討を
マンションを含め不動産を買い取る業者は世の中にたくさんあります。マンションリフォーム再販に特化した業者もあれば、一定の地域に特化して販促費を抑えようとしている業者もあり、利益を得るまでのビジネスモデルや特色がそれぞれ異なります。また、決算前だったり、他物件の買取状況がたくさんあったりなどタイミングの問題で、購入に対する熱意に差が出ることもあります。
業者買取を検討する場合が、少なくとも3社程度の業者に買取価格を提示してもらうことを忘れずに。1社だけだと買取価格が妥当であるか判断できません。
最後に
業者買取でつけられる価格は一般の取引より低くなってしまうというデメリットがありますが、スピードと確実性では大いにメリットがあります。手持ちの現金が足りないために、現保有のマンションを売却してしまわないと新しい物件を買えないという場合などでは、早く確実に現金化できるということが「売却価格の数百万円ダウン」を上回るという判断もあり得ます。
これは売主それぞれの事情によります。業者買取のメリットとデメリットを理解し、不動産仲介業者とも相談しながら総合的に考えるようにしましょう。
以上
斉藤勇佑(宅地建物取引士)
大学卒業後、大手不動産仲介業者にて不動産売買仲介に5年間従事。その後、不動産管理会社に転職し、分譲マンションの維持・管理に6年間従事している。