昨年末にテレビ東京系で放送された番組「ガイアの夜明け」の特集「追跡!マネーの“魔力”」では、不動産投資の光と影に焦点を当て、「影」の例として、レオパレス21のサブリース訴訟を取り上げていました。昭和の不動産バブルを経験してきた筆者には、「いつか来た道」の繰り返しに映ります。新たなプレーヤーは、過去の歴史を繰り返す。アパート経営においても同様の現象が起きているようです。

 

不動産バブル

(写真はイメージです。)

 

過剰な供給がもたらしたサブリース問題

 

サブリースとは、通常、オーナー(土地所有者)が金融機関からの借入資金でアパートなどの賃貸用建物を土地の上に建設し、それをサブリース会社がオーナーから全室を一括借り上げし、入居者を募集して転貸するシステムを指します。家賃の回収や物件管理は、通常はサブリース会社が行います。

 

サブリース会社は家賃収入から手数料を差し引いて、オーナーに決められた金額を支払います。もし空室があっても、オーナーへは決められた金額が支払われます。これが家賃保証です。「家賃収入の保証」は、いつの時代も変わらず不動産オーナーをとりこにする「甘い言葉」です。

 

番組では、家賃保証をした契約書の例が紹介され、そこには「本物件の一括賃貸料は、当初10年は、月額〇〇円とし、不変とする」「10年を経過した後については、経済情勢、近隣相場家賃等を勘案した上で、甲乙協議の上、2年毎改訂するものとする」と明記されていました。

 

しかし、レオパレスのオーナーで作る「LPオーナー会」(2014年1月に名古屋市で発足)は、会員約1,000人のオーナーからの聞き取り結果として、約300人のオーナーが10年未満で家賃が減額されていると説明していました。また、契約後10年超の物件では家賃減額を一方的に迫られたケースや契約解除をされたケースもあったそうです。

 

さらに番組では、レオパレスの営業損益と管理物件戸数の変化も示されていました。営業損益については、2008年のリーマンショックでアパート需要が激減し、同年約500億円あった黒字が翌2009年には約300億円の赤字となりました。需要激減の理由を、レオパレスは「主な入居者を製造業の派遣社員としていたから」と説明しています。「派遣切り」が社会問題になった頃です。

 

その後、2009年、2010年と赤字は続くものの、2011年には約40億円の黒字に転換。黒字転換した2011年は、経営難を理由とするサブリース契約の解約やオーナーに支払う家賃の減額が増えた時期と重なります。

 

一方、管理物件戸数で見ると、1996年の約8千戸が、リーマンショック以降、ピーク時の2010年には約57万戸と実に70倍以上に増えています。その後、2012年には一時55万戸を切りましたが、2016年には再びピーク時の57万戸に迫ろうとしています。すなわち、新たな契約者は増えているのです。

 

家賃保証契約の文言が変わらない限り、これからもトラブルは増加する可能性があります。新築物件は入居者を比較的確保しやすいですが、立地条件などに競争力がない限り、2回転目からは入居者確保が難しくなるのが、木造アパートの一般的傾向だからです。

 

貸家業向け融資の増加と経営リスク要因の変化

 

今回のレオパレス21の問題に限らず、アパート経営に関するトラブルは、以前から予想されていました。2年前の2015年10月には、日銀が「地域金融機関を中心に貸家業向け貸出が増加している」(日本銀行金融システムレポートBOX2)と指摘しています。

 

さらに2017年4月には、賃貸不動産業向けを中心とした貸し出し増加について検証しています。そこでは、地域銀行の不動産業向け貸出残高の実績が、経済の実勢から説明できる水準から上方に乖離(かいり)していること、また一部に貸家市場における需給緩和を懸念する声が聞かれ始めていることを指摘しています(同システムレポートBOX4)。

 

貸出残高増加の背景には、金融機関がいわゆる「サラリーマン大家」向けにマンション・アパートローンを商品化し、新たな不動産投資家を取り込んでいることがあります。

しかし当然、アパート経営(不動産投資)にリスクはあります。主な要因は、金利と空室です。

 

リスク要因(1)金利

 

日銀は低金利の金融緩和政策の継続を決めましたが、2018年4月には日銀の黒田東彦総裁が任期を迎えることから、先行きは不透明です。また、金融引き締めの姿勢を打ち出している米国ではFRB(米連邦準備理事会)が昨年12月にこの年3回目の利上げを決め、2018年と2019年はそれぞれ3回ずつ利上げが実施されるとの見通しを示しており、日本にも影響するかもしれません。

 

リスク要因(2)空室

 

空室に影響を及ぼすのは、貸家の供給と入居者の動向です。貸家の供給については、全国(年換算ベース)では2016年7~9月の44万戸台から2017年6月以降は40万戸台に落ちています(国土交通省「建築着工統計調査」)。

 

国交省は、貸家の供給減の一因は民間資金の減少と分析していますが、金融庁の監視強化で地銀の積極融資が厳格化したという背景があると思われます。ただ、首都圏の貸家供給はリーマンショック後の2010年の10.7万戸を最低に、2016年には15万戸台へと回復し、1997年以降、首都圏では毎年10万戸以上の貸家が供給されています。

 

また入居者の動向については、アパートの入居者予備軍となる18歳人口を見ると、2016年の約120万人が2030年には約100万人へ減少し、さらに2040年には約80万人まで減少すると文科省は推計しています(文部科学省2017年4月発表の「高等教育の将来構想に関する基礎データ」より)。

 

筆者は先月、岩手県の人口10万人規模の都市で不動産評価を行いましたが、1Kを中心とした新築アパートの募集物件の異常な多さに驚きました。これからは首都圏でも空室率の上昇が懸念されることになるでしょう。

 

賃貸収入を目的とする不動産投資は、長期的な投資です。「リスク要因は常に変化する」という想定が必要です。都心では不動産投資セミナーが盛況ですが、一部の政令指定都市を除く地方は様相が全く異なります。これから、さらに地域間での格差の拡大が予想されます。

 

かつての「不動産バブル」と今とは違う?

 

2016年の金融機関の不動産向け融資額は12.2兆円と、昭和の不動産バブル時代の10兆円を超えて過去最高額となっています(日本銀行「貸出先別貸出金」)。

 

昭和の不動産バブルはリゾート法(総合保養地域整備法)の制定も重なり、全国どこでも宅地に限らず山林や原野などのような不動産でも価格が上昇し”1億総バブル”となりました。誰もが、日常会話で「不動産」を話題にした時代です。しかし今回は、前回以上に貸出額が増えているのに、不動産業界にいる筆者には、昭和の不動産バブルのようには感じません。明らかに、一部の地域、特定の種類の不動産におカネが集中していると思われます。

 

くしくも、大阪の女子高生の「バブリーダンス」が話題となっています。YouTubeの動画再生回数は3千万回を超えたそうです。しかし、建設・土木や仮想通貨など一部の業界を除いて、バブリーな人は今どれだけいるのでしょうか。バブルへの憧れというより、社会のあらゆる分野で格差が存在しており、その一部でバブルが発生していることを象徴しているのかもしれません。

 

 

三浦雅文(米国国際資産評価士・不動産鑑定士)
土地家屋調査士・行政書士・宅地建物取引主任士の資格も保有。1954年北海道生まれ。大学卒業後、測量、登記、鑑定、総合不動産会社を経て独立。多分野での経験を活かした不動産のアドバイスとオールラウンドの鑑定評価の業務を中心に活動中。

 

 

この記事に関連する「榊 淳司のマンション注意報-2018年前半の東京都心部マンション市場を占う」もぜひご覧ください。

 

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