誰もが予想しなかったトランプ大統領の誕生。安倍総理はさっそくトランプ次期大統領との会談をセッティングした。アメリカは日本にとってもっとも重要なパートナーであるから、安倍総理の動きは当然といえば当然。

 

さて、産業界もトランプ氏が大統領になったら自分たちの業種、あるいは自分たちの会社がどういう影響を受けるのか、怖れと期待を描いている。しかし、それは実際のところなってみないと分からない。彼があの無軌道な公約をすべて実行に移すとは思えないし、もしそうなれば世界は大混乱だ。ここでは、彼がさほど非常識な政策は取らないだろう、という前提で考えていきたい。

 

都心の不動産価格はトランプ大統領誕生でどうなる?_01
(写真はイメージです。本文の内容とは関係がありません。)
 

ビジネスマン志向の大統領で予想されること

 

まず、彼のこれまでの言動からすると「アメリカの景気を良くする」というベクトルが見える。企業の所得税を軽減するとか、雇用を守るために環太平洋経済協定(TPP)は破棄する、といった発言から見えることだ。TPPを破棄、あるいは有効にしないということが、アメリカ経済にとって総合的にメリットがあるのかないのかは議論の分かれるところ。少なくともオバマ大統領は「アメリカによかれ」と進めてきた政策であり、彼の政権が納得して合意が得られたものである。それを反故にすることがアメリカの利益につながるのかについて、私には大いなる疑問があるが、それは別の機会に論じよう。

 

ともあれ、トランプ氏はビジネスマン出身者として「アメリカのビジネスマン」にとって仕事のやりやすい環境づくりに努めるだろう。そのひとつが企業減税。そして、公共事業の拡大。

 

その財源はどうするの? という疑問は付きまとうが、ここではひとまず置く。

 

アメリカの景気が良くなると、日本にとっても悪くない。なぜなら、日本はアメリカに多くのものを輸出している。アメリカ人が日本製品をたくさん買ってくれれば日本の経済はよくなる。しかし、そんなにカンタンにアメリカの景気が良くなるとも思えない。

 

今まで、アメリカの景気を悪くしようと考えた大統領など、ひとりもいないはずだ。現職のオバマ氏にしたところが、一生懸命景気対策に取り組んできた。地味ながらも、一定の成果は上がっていると思う。

 

注目すべきはFRBの金融政策

 

私は、企業減税や公共事業の拡大といった従来型の経済政策よりも、金融政策に注目している。というのは、日本の不動産市場に最も影響するのはアメリカ国内の景気対策よりも、金融政策であるからだ。さらに言ってしまうと、金利が上がるのか、下がるのか。

 

ところが、アメリカや日本のような先進国では、一国の為政者が恣意的に金利を決められない仕組みになっている。金利の変動を決めるのは、アメリカならFRB(連邦準備制度理事会)。日本なら日本銀行。どちらも合議制になっているが、トップの意向に左右されるのが現実。アメリカはイエレン議長、日本は言わずと知れた黒田総裁。

 

FRBのイエレン議長は利上げを続けるか

 

アメリカの大統領はFRBの議長を決める人事には介入できるが、金利政策には直接口を出せない。イエレン氏は、はっきりいって金利を上げたがっている。早ければ、この12月にも上げるだろう。2017年は数回、金利を上げると予想されている。

 

トランプ氏は、基本的にビジネスマンだ。ビジネスというのは、金利が低い方がやりやすい。特に彼が手掛けてきた不動産ビジネスは低金利な方が利益を出しやすい環境にある。だから、金利を上げたがるイエレン氏については、好ましく思っていないはずだ。

 

イエレン議長任期中の置き土産が日本にも影響

 

イエレン氏の任期は2018年2月まで。実質的にトランプ政権の最初の1年だけ。トランプ氏は大統領選挙の期間中に、イエレン氏の再任を認めない趣旨の発言をしている。しかし、イエレン氏は任期中に置き土産で金利を上げる可能性も高い。

 

今、マネーに国境はない。アメリカ、日本、EUといった自由主義経済圏においては、ほとんど金利の差がなくなった。というかリーマンショック以降の利下げ競争で、各国とも金利がゼロに近づいた。今、経済力が世界一であるアメリカが金利を上げると、日本もタイムラグがあるにせよ、追随せざるを得ないだろう。

 

次期日銀総裁で「異次元」金融緩和が終わりを迎えるか

 

インフレを継続で、経済の安定成長を図ることができるとするリフレ派と目される黒田日銀総裁の任期も、2018年3月まで。消費増税のプレッシャーをかけ続けた黒田氏と安倍総理との関係は、必ずしも良好とはいえない。また、安倍総理は財務省とも疎遠だ。すると、次期日銀総裁は財務省出身者ではなく日銀のプロパーである可能性も高い。つまり、日銀もイエレン議長の退任後には、今の「異次元」金融緩和から引締めに転ずる総裁を迎える可能性がある。

 

金利動向に左右される都心の不動産価格

 

都心の不動産価格というのは、今や需給よりも金利に左右されている。リートが買い手の一角を占めるようになってから、特にその傾向が強い。その結果、金利が下がれば不動産価格が上昇する。今の都心の局地バブルがその状態。逆に、金利が上がれば強力な下落圧力が発生する。

 

トランプ氏が大統領になっても、即座に日本の不動産市場に何か大きな影響を与えることはないだろう。しかし、イエレン氏が予定通り金利を上げればそれが巡り巡って都心の不動産価格の下落圧力になる。だが、1年後にトランプ氏が選んだ「低金利派」の議長が就任すれば、日本の不動産市場では金利の影響をあまり受けずに、本来の需給による価格形成が行われるだろう。その場合は、供給過剰によるなだらかな下落になると予測できる。

 

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)

 

1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

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