不動産業界のあるべき姿を模索、提言している住宅ジャーナリストの榊淳司氏に、不動産流通システム(REDS・レッズ)代表取締役の深谷が話を伺いました。インスペクション(住宅診断)の問題点や今後の不動産市況の変動要因について話をお聞きしました。


 
新築マンション購入の難しさと中古物件購入のタイミング

 

深谷:榊さんの著書『新築マンションは買ってはいけない!!』に「新築マンションの危険性」という話がありましたが、これについてお聞かせください。

 

榊氏:新築マンションを購入することは、実は大きな「賭け」だと言うことができるかもしれません。なぜかというと、きちんとしているのは100棟中たったの2、3棟しかなくて、ほとんどの物件で何かしらの不具合があるといって過言ではないからです。さらに、不具合があっても保証の通りに修繕してもらえることもほとんどありません。管理組合の人の能力や意識に差も見られ、あまり主張しないところが多いといえます。

 

深谷:不動産会社側では、管理組合にうるさい人がいるかどうかで、A、B、C、Dとランク付けしていることがあります。私が所有していたマンションで管理組合の理事長をやったことがありますが、管理会社が不動産会社の関連会社だったので、その部分の経費を削減するなどの方法で管理費を2万円くらい下げさせた経験があります。このときはAランク認定だったでしょうね。

 

榊氏:さらに「うるさい」と思われると、Sランクになるらしいですよ(笑)。

 

深谷:榊さんは著書の中で、築10年くらいの中古マンションの購入を勧めていらっしゃいました。私自身、今は一戸建てに住んでいますが、これまでに居住用のマンションを4回購入していて、最後に持っていたマンションは築14年目に入るところで購入しました。大規模修繕予定を考慮すると、私は築10年ではなく、15年くらいがよい時期かなと思っていました。

 

最近、大規模修繕の費用が高騰していて、今ある修繕積立金だけでは足りないというところが増えています。管理会社が、修繕施工会社やエレベーターのメンテナンス会社と癒着しているところでは、経費を削減せずに住人に価格転嫁するという悪質な問題も潜んでいます。

 

また、内装をリフォームする方も出てきて、管理会社が協力的かどうか、近所付き合いがうまくいっていたかどうかなどが初めて分かるということもあります。

 

やはりマンションを購入する際は「新築」という選択肢はできるだけ外して検討し、いろいろな問題をはらんでいる修繕などがすでに済んでいる「中古」を選んだほうが賢明でしょうか。

 

榊氏:そうですね。中古がいいでしょう。ただ、私は著書にも書いた通り10 ~13年がよいと考えています。15年くらいたったマンションなら、そろそろフルリフォームの時期に来ていますから、それを安く購入して300万円くらいかけてリフォームするのが賢いと思います。

 

杭打ちデータ改ざん問題でわかったように、新築は怖くて買えません。

 

あのとき、日本全国のマンションの全棟検査を実施することになるかと思いましたが、結局はうやむやになって終わりそうな感じです。分譲マンションは600万戸以上あると思いますが、そのうちの10万戸でも施工不良があるとなったら、「私も不良マンションをつかまされているんじゃないか」と普通はパニックになってもおかしくないですよね。でも実際は、そのくらいの数の施工不良があると私は思っています。

 

深谷:そうなるとそれだけの数の資産が大きく目減りするわけですから大変なことですね。

 

榊氏:不正があった横浜のマンションでは、希望者があればデベロッパーが買い戻すと言っていたので、まだよかったと思いますが、不正が明るみに出なかったほとんどの不良マンションが保証されることもなく、ただ資産価値がなくなるというケースが多いと思います。

 

深谷:そのマンションに限ったことではなく、壁などにひびが入っているマンションはけっこうあります。1カ所2ミリずつとして、それが10カ所あれば、そのズレは大きなことになります。建て替えとなると業者だけでなく住民も大きな負担を強いられるため、デベロッパー側は住民の総意は建て替えの方向にはならないはずだとタカをくくっていたのかもしれませんが、結果的に建て替えで対処することになりました。住民の大きな怒りが形になったということでしょう。

 

榊氏:私は、あの横浜のマンションの管理組合はものすごい結束力を見せましたね。大いに興味があります。

 

深谷:ああいうトラブルはどこでも起こりかねませんので、管理組合の負担は大きく、運営も難しいのは理解できます。レッズで中古物件の売買を仲介するときに、物件について管理組合から教えてもらいたいことがあっても、個人情報を盾にして、なかなか教えてくれないことがあります。会合などの議事録があればまだよいのですが、議事録もないところが多いです。長年、不動産を扱っていると、「何となくおかしいな」という物件は分かりますから、そのときは管理組合からの情報だけに頼るのではなく、他の住民にも聞き込みをさせていただいて、正確な実情把握に努めています。

 

榊氏:しかし、いざ自分が買う立場になってみると、外観や室内の様子を見て大丈夫そうなら、何も調べずに買ってしまいがちです。

 

深谷:買うときはまだ調べる意欲はあるかもしれませんが、買ってしまってからはいわゆる「不都合な真実」は知りたくないという心理も働くのではないですか?

 

榊氏:SNSなどを見ていると、「マンションを買ってみたんだけど、○○が・・・」などという書き込みが目立ちます。つまり、これから買うというタイミングよりも、実は買った後の方が気になることが多いということのような気がします。

 

深谷:日本では家やビルなどを建てる際、神道に基づいて地鎮祭を執り行う。これは誰も住んでいなくても、「土地というものに対しての思いがあるから」というご見解です。日本人にはそもそも土地や建物に対して特別な思いを持っている。次々と新しい住宅を建てていくのではなく、一つひとつを大切にしていくことが重要と感じました。

 

榊氏:以前は築10年を超えた住宅はいかにも古い感じがしましたが、最近は築20年のマンションでもそれほど古く感じません。そろそろ築20~30年でスクラップアンドビルドというのではなく、建てる側も住む側も、長く住める住宅を大切にするという意識に切り替えていきたいものですね。

 

真に有効な住宅診断とは

 

榊氏:確かにこれまでは、マンション購入といえば新築を探すのが当然という考えが主流だったと思います。住宅取引に占める新築の割合はアメリカが3割くらいなのに対し、日本の場合は8割と突出して高かった。この傾向が最近変わってきて、昨年のデータをみると、売り出された新築マンションと中古マンションの取引量を比べると、中古がかなり増加してきているようです。

 

深谷:平成元年頃までの不動産業者は土地の売買によって利益を得ていましたので、建物は下請けの工務店に丸投げでした。不具合が出たときにも工務店にまかせっきりです。

 

平成12年に「住宅の品質確保促進法」ができましたが、自分たちが作ったものを法の規定通りに10年間保証することなどできないと訴える工務店がありましたが、そういうところは淘汰されましたね。

 

最近はインスペクション(住宅診断士が専門家の見地から住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき個所や時期、費用などを見極めてアドバイスすること)の必要性が叫ばれています。

 

ただ、この「住宅の品質確保促進法」施行以前の住宅にインスペクションを入れたらどうなるか、全く予想もつきません。たとえば、雨漏りの問題があります。施主の希望通りに建てたら雨が漏ったという場合、「住宅の品質確保促進法」施行以前の住宅に、売主は責任を負わなくてよいことになります。しかし施行後では、売る側の意識も大きく異なり、作っている製品も異なります。

 

今回、施行前後で区別することなく、それらを全部対象にしようということです。確かにインスペクションは必要で、実施するべきことだと思います。しかし、「住宅の品質確保促進法」施行以前の住宅は、そもそもインスペクションが馴染むようには作られていないので、一律にやることには疑問があります。

 

榊氏:その点ですが、条文を読むと「必ず実施しなさい」ということではありません。「実施した場合はそれを見せなさい」というものですよね。

 

深谷:このインスペクションは、本来、住宅を買う側が実施するべきことだと思います。「売る側が住宅を保証します」「インスペクションでチェックしました」という物件を、売買が成立したときに利益を得る仲介業者が紹介するのは理屈に合わないと思います。

 

インスペクションは当たり前の姿だと思いますが、購入する側が独自に、仲介の取引や売主とは無関係なところで実施することにより、自分が買おうとしている物件が本当に大丈夫なのかどうかの判断をするべきでしょう。なおかつ、取引がまとまったときに、診断した側に利益が出るような構造では意味をなさないのではないでしょうか。

 

榊氏:このインスペクションは、「誰が実施するか」という規定はありません。しかし、家を「診断」するのですから、宅建士程度の知識ではなく、一級建築士程度の知識で実施する必要があると思います。

 

先日聞いた話ですが、新築物件のインスペクションを実施したところ、十分でないという判断で、4棟のインスペクションがやり直しになったそうです。こうしたことからも、宅建士程度の知識でインスペクションを実施するのは不十分だと思います。

 

深谷:ある大手の不動産の中古マンション売買価格の平均は約2000万円、新興のブランド力のある不動産でも2000万円台後半くらいだそうです。レッズでも扱い物件に幅があり、3000万円の物件なら手数料が45万円となりますが、1000万円以下の中古住宅や土地の場合だと、いただける手数料の額が小さい半面、調べることも多く、書類も多いので、なかなか折り合いをつけにくいところです。地方の不動産会社が、両手仲介の手数料がないとやっていけないという事情も理解できます。

 

今後の不動産市況の変動要因

 

榊氏:東京での賃貸の利回りは、3~4%くらいと言われていますが、かなり低い水準です。また2016年からは賃貸の危機が始まっていると考えています。実際、賃貸住宅の空き部屋率が全国平均で約22%、東京で約19%という数字が出ています。オフィスの方は賃料が上がっているということですが、空きもいっぱいありますから、皆が思っているほど市況はよくないと思います。

 

深谷:金融緩和を受けて資金が不動産に一気に流れていますが。

 

榊氏:ただ、この動きはかつてのバブルとはまた違う様相です。

 

深谷:以前よりも複雑化していますから、もしこれがまた弾けたら、経済に与える影響は日本だけの問題では済まないでしょう。イギリスのEU離脱で、ファンドの解約などが殺到しているというニュースもありました。

 

榊氏:これがきっかけとなり、連鎖反応が起こる可能性もあります。日本の市場には海外の投資家も多いので、以前のバブルと違って読めないところがあります。

 

深谷:最近では居住用に作られた不動産物件が、投資用に使われることが増えて、本来の用途に使われていないという問題もあります。

 

榊氏:外国人投資家が所有する物件が増えて、賃貸物件なのだから貸しておけばいいという考えのもと、管理が行き届かなくなっています。

 

深谷:そういった部分を見えなくするために、政府がいわゆる「民泊サービス」の規制を緩和しているところもあるようですね。

 

榊氏:中古物件の場合、管理組合が正しく機能していれば民泊を管理規約で禁止することもできますが、最近の新築物件は誰が買っているのか分からないことが多く、当初から民泊を禁止している物件でない限り、管理組合が軌道にのっていないと管理規約で禁止することもできないので民泊を規制しきれません。

 

深谷:その意味でも、これからはますます「中古マンションの時代」ということですね。

 

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