「仲介手数料最大無料」を掲げて業界に新風を吹き込んでいる不動産流通システム(REDS・レッズ)。   これまで4回にわたって、4人の営業マンでお客様担当の「エージェント」からそれぞれの手腕や会社の秘密を語ってもらった。 自分でドンドン動いて家を売る高坂拓路(こうさか・ひろみち)さんに話を聞いた。

 

  仲介手数料無料REDSの取締役営業部長 高坂拓路

(不動産流通システム 高坂拓路)    

仲介手数料がすべて割引・最大無料でも、とにかく「早さ」にこだわる

  「先日、私から家を買われたお客様からメールをいただきました。『ご活躍を見てうれしく思いました』と。こういうおつきあいが今でもできていることは本当にうれしいですね」   高坂さんは、これまでの連載で述べてきた営業活動のやり方を、最も色濃く実行している立場だ。同社では成約後、物件を購入の決め手となったことをお客様に教えてもらうそうだが、高坂さんが仲介したお客様は、こう話したという。

 

  「仲介手数料を無料でやっている会社をいくつか見つけてコンタクトしてみたが、一番最初に返事が来たのがレッズの高坂さんだった。問い合わせのメールをしたら、すぐに『1時間以内に返答します』とメールがきた。待っていたら、1時間後ではなく、15分後に返事が来たんです。なので、その日のうちに会う約束をしました」

 

  このお客様は、会って3日後には物件購入の契約をした。すさまじい早さといえそうだ。   お客様は大企業に勤めていたため、住宅ローンもすんなり審査がクリアすることを見越して契約を進めた。しかし、一時期やっていたアルバイトの収入を確定申告していたため、実際の収入が源泉徴収票と合致しない部分があり、滞りなく審査を進めるためには、以前に居住していた他県まで課税証明書を取りに行かないといけないなど、悩み事がたくさんあった。

 

  営業マン(エージェント)の仕事は契約書を交わすまでなので、本来ならそれはお客様のやること。なのに、高坂さんは、お客様の代わりに、わざわざ他県までいって、課税証明書を取得する手伝いをしたという。こうした親切に、お客さんはとても感動。「つらいこともありましたが、心細いときに質問したり相談したりしたら、必ず的確な答えが返ってきたので、とても頼もしかった」と話したという。

 

  「お客様は、うち(レッズ)以外にも同じ内容の問い合わせをしているはず。その中から選ばれるため、何がアドバンテージかと考えたら、それはスピードが一番です。普通の会社は、すぐに返信することはまずないのではないでしょうか。朝、出社してメールを確認したら、夕方退社するまでに返信しておけばよいと考えている営業の方が多いと思います。でも、自分がお客さんの立場だったら、メールを送っても返信がないと、届いているのかどうか不安になりますよね。早く返信があれば、うれしいですよね。ならば、うれしいことをお客様にして差し上げる。ただそれだけです」

 

  成約後に、お客様からレッズのどのサービスに、満足度が高かったかをアンケートしたら、ダントツで「メールの対応が迅速だった」というものが多いという。「だから、いかに他社がやっていないか、ということですよね。お客様のために動くなら、当たり前のことなのに」と高坂さん。  

 

こんな話もしてくれた。   「僕はレッズでの勤続年数が一番長いのですが、この業界は、成績を残さないと会社に居づらくなって辞めざるをえなくなる。REDSはみんなが残っているということは、みんなちゃんと会社の方針どおりにやって、成果を出しているということです」   同社のお客様への満足度調査のなかで、「早さ」に次いで多いのが「営業マンが知識豊富で頼りになった」という回答だった。つまり、レッズの営業マン(エージェント)全員が、4番打者の務まる選手だといえるのかもしれない。    

 

35歳で不動産業界に転職ー「案内ボーイ」が感じた偽顧客主義

  高坂さんは35歳で旅行業界から転職してきた。旅行会社の支店では支店長として後進を指導する立場だったが、不動産会社の店舗に入ってすぐにもらった肩書は、「案内ボーイ」だったという。その仕事は、とにかく案内した見込み客を、店舗まで連れてくることだった。

 

  「ウチの会社はこのエリアで仕事をしてるんだから、目をつむっても物件を案内できるようにしておけ。客が急に来店して『この物件が見たい』と言ったら、『えーーーっと、少々お待ちを…』なんて言ってる場合じゃないぞ」といつもカツを入れられていたという。   そんな営業マンに反発心を抱くこともあった。しかし、連れて帰ってきた見込み客を先輩に引き渡すと先輩営業マンが、客が「YES」というまで何時間も説得し、契約に持ち込むのには、舌を巻いたという。   また、不動産を購入した経験のある人なら、営業マンからこんな話を聞いたことはないだろうか。  

 

「お客様とは一生のお付き合いですから」、と。   「物件を売ることだけが目的ではありませんよ」と安心させるためのキラーフレーズのようなものだといえる。ただ、そういわれた人のうちどれくらいの人が、購入後10年たった後もその営業マンと変わらぬ付き合いを続けているだろう。そもそも、大手では数年ごとに転勤があるし、中小の場合は転職が非常に多い業界なのだ。   しかも、公益財団法人不動産流通近代化センターが平成24年に出した報告書によると、宅地建物取引業者の統計では毎年、全宅地建物取引業者の約 5%程度の新規参入および廃業があるという。これは業界の新陳代謝の激しさを物語っている。

 

  また、平成10 年と 20 年の二時点での比較によれば、宅地建物取引業の免許取得後年数の長短にかかわらず、宅地建物取引業者の残存率が約 50%となるという。要するに、10年後には2つに1つの不動産会社がなくなっているというわけだ。営業マンの「お客様とは一生の付き合いですから」は話半分で聞いておいた方が賢明と言える。   「だから、『お客様第一主義』と、どの会社もよく言いますけど、本音は全部、自分のためでしょう。」   高坂さんは、こうした業界の実態をいやというほど体験し、新天地レッズではキッパリ決別したのだ。    

 

他社もやっている「仲介手数料割引」―その中でもレッズが成立する秘訣

  実は最近、レッズのように「仲介手数料割引」をうたう業者は増えてきている。高坂さんはこうした状況を脅威とはとらえていないのだろうか。   また同社は、不動産業界の真の姿を伝えるオウンドメディア「不動産のリアル」を立ち上げるなど、情報発信にも力を入れている。この記事のように、そこでは同社が仲介手数料を安くしても会社が回る秘訣が惜しげもなく提供されているほか、いわゆる「両手仲介」や仲介手数料を法定上限まで取っていることなど業界全体の悪癖についても批判している。パンドラの箱を開けてしまったといえそうだが…。

 

  「まず、仲介手数料を3%キッチリ取る他社さんは、わが社など相手にしておりません(笑)。個々のエージェントの取引件数が多いとは言っても、業界全体でみたらシェアは極々小さなものです。でも、同規模の会社には、ビジネスモデルをまねされるところもあります。ただ、結論から言うと、『仏作って魂入れず』では続きませんよ。それまで仲介手数料を上限まで取っていたのに、急に割引だとか無料とかにしてみたところで、これまで語ってきたような体制が整っていなければ、成立しないと思います」   高坂さんはこう締めくくり、自信をのぞかせた。  

 

  飛鳥一咲(あすか・いっさく) 昭和53年、高知県生まれ。大阪大学卒業後、全国紙記者として関西の支局や東京本社社会部などを歴任。平成26年に退社後、フリーライターとして幅広く取材し、ウェブを中心に執筆している。

 

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