年明け早々、首都圏で緊急事態宣言が再発令されるなど、不穏な幕開けとなった2021年、「不動産のニューノーマル」はどうなっていくのでしょうか。連載3回目は「2021年の住宅購入」について、不動産事業プロデューサーでオラガ総研株式会社代表取締役の牧野知弘氏にうかがいました。

 

(中)から続く

 

(取材・構成 不動産のリアル編集部)

 

牧野先生下-6

牧野知弘氏

 

住宅の選択肢は増加。家に何千万も使うべきではない

 

――飲食店への時短営業要請、年明け早々の緊急事態宣言発令などで経営が行き詰まり、収入が減って住宅ローンが払えなくなったために手放された物件が2021年には市中に出てくることが予想されます。

 

牧野:これからどんどん出てくると思いますよ。2021年3月末までは、閉店倒産ラッシュでしょう。飲食店や物販店は厳しいです。自己破産などをする人が増えれば増えるほど当然、不動産も出てきます。つまり供給が増えるわけです。しかも国民の多くが財布のひもを締めているわけですから、実需ベースの物件を中心に不動産価格は下がります。

 

――2021年に住宅を買う人がローンを組むとき、基準になるのが2020年の収入です。2020年は収入が下がってしまって、ローンの融資額が減ってしまう人も多いのではないでしょうか。そういった人が家探しをするときのポイントとは。

 

牧野:2,000万~3,000万円台の住宅を買う場合、すべての条件は満たすことはできませんから、絶対に譲れない項目を絞って検討すればいいと思います。都内にどうしても住みたいという場合でも1,000万円台から戸建てはあります。千葉でいいという人なら、松戸や船橋の中古マンションで、それほど不便ではない立地にある築25~30年のものが500万~600万で買えます。

 

ここのところ選択肢は本当に広がっています。もう家に何千万もお金を使う時代ではないと思いますよ。松戸の築35年とかだと、マンションは車1台分ぐらいで買えますよ。分譲時におそらく3,000万円くらいだったのが10分の1くらいになっています。

 

2021年は住宅を買うのに悪い年ではない

 

――任意売却となった物件や競売物件が安くて狙い目という人もいます。買うときの注意点は。

 

牧野:競売物件は安くなるケースが多いので魅力に感じる人もいるでしょう。丹念に洗っていればいい物件はあります。すごくいい物件がたくさんあるかというと必ずしもそうではないですが、時たま掘り出し物がありますので、探してみるのも悪くないでしょう。しっかり自分の目で確かめて、経緯もよく理解した上で買われるのだったら、むしろいい選択かもしれません。

 

実需で買おうとしている方にとっては、2021年は悪い年ではありません。買う人にとっては選択肢が本当に広がります。住宅の選択肢が広がるということは、需要が分散化するということです。しかも供給が増えているわけですから、価格は当然下がります。思わぬ拾い物を得るチャンスではあります。

 

僕は中古の戸建てマンションをこれから買う人はハッピーだと思いますよ。2018~2019年に新築を買っちゃった人はちょっとつらいなと思います。これからも新築のニーズは下がっていくのではないでしょうか。2020年は供給も3万戸割れでしょ。2021年は3万1000戸って予測も出ていますけど、あれは供給数であって売れる数ではないから、結構厳しいのではないかと思います。

 

牧野氏オススメは神奈川・大磯

 

――2021年に住宅購入を検討している人にとって、狙い目となるエリアはありますか。

 

牧野:例えば大磯なんかはいいですね。戸建てが2,000万円台で買えます。予算3,000万円台ならそこそこいい家が買えます。

 

私は藤沢に住んでいるのでよく分かるのですが、東海道線の駅前にしては特殊なぐらいに何もなく、田舎で不便です。ただ、大磯は昔から政治家や軍人たちの別荘がたくさんあったところで、環境はいいし風光明媚なところです。ちょっとした大型商業施設だと平塚に行けばありますし、東京まで東海道線でだいたい1時間ですから、週1、2回程度の通勤でよくなった方には大磯はおすすめです。

 

良物件をリーズナブルに買える時代が来る

 

――2021年は不動産価格は下がってくるだろうけど、世の中がどこか暗い雰囲気になってしまうと考えがちですが、そういうことはなさそうですね。

 

牧野:それはないと思います。経済はいずれにしろ回復しますから。あと半年ぐらいはこういう状況が続くかもしれませんし、職を失わないように頑張らないといけないんですけど、コロナはあくまでも感染症ですから。何か経済が根底からひっくり返ったわけはないので、必ず元に戻ります。

 

飲食や観光のように根底からひっくり返された業界もありましたけど、そうでない業界もあります。やはりコロナ禍は一過性のものです。その中で不動産が一時的であれかなり安くなることが見込まれます。

 

それから、これをさらに後押しする要因として、これから大相続時代に突入します。このため売り物件はまとまった数が出てきますので、じっくりお選びになれば良い物件をリーズナブルに買うチャンスだと思います。もう新築を買う必要はなくて、まさに中古の時代だと思います。

 

――ありがとうございました。

 

終わり
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牧野知弘氏
オラガ総研株式会社 代表取締役
東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。2009年株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年オラガ総研株式会社設立、代表取締役に就任する。2018年11月、全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立、使い手のいなくなった古民家や歴史ある町の町家、大自然の中にある西洋風別荘などを会員に貸し出して「自分らしい暮らしの再発見」を提供している。

 

著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』『不動産激変~コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(中公新書ラクレ)などがある。テレビ、新聞などメディア出演多数。