新型コロナによる影響がさまざまな分野に及んでいる。

 

先日、銀座のティファニービルの持ち主がソフトバンクの孫正義氏から、みずほ銀行系不動産会社のヒューリックに移った、というニュースがあった。銀座の一等地のビルの所有者が変わるなどということは、そうそうない。数年に一度あるかないかではなかったか。それが、今後はちょくちょくと起こりそうなのである。

 

チャンス

(写真はイメージです)

 

キャンパスライフが奪われた大学生が脱下宿か

 

世の中は、見えるところであれ、見えないところであれ、大きく動いている。そしてコロナは、これまでの社会の常識を次々と覆していくような予感がする。

 

私はメディアからの取材を受けることが多いが、コロナ以後は半分以上がZoomになった。初対面でもZoomである。それがまた、ほとんど違和感がない。もちろん、支障もない。むしろ効率的と言っていいほどだ。ただ、相手に対する親近感は多少薄くなる。

 

これまでは対面でなければならない、と思い込まれていたことがどんどんテレワーク化しているのだ。

 

たとえば、今年の大学1年生はほとんどキャンパスに足を踏み入れていないそうだ。講義は、ほぼオンラインで、試験に通れば単位はもらえるらしい。

 

それにしても、大学へ入って新しい友人との出会いやサークル活動への参加を期待していた新1年生にとっては、かなりの落胆ではないか。楽しいキャンパスライフがなくても、講義だけはしっかりと受けなければならないし、おまけに試験もキッチリあるのだから。

 

オンラインの大学の講義が普遍化すれば、そのうち東京大学や慶應義塾大学といった大学の枠の意味が薄れてくる。トランプ大統領が卒業したという、ペンシルベニア大学で行われている講義を、日本で受講して単位を取得することすらカンタンに実現してしまう。

 

大学のオンライン化は不動産市場への影響もいろいろありそうだ。毎日キャンパスに行かなくてよいという仕組みになれば、これまでのように地方から出てきた学生が学校の近くでワンルームマンションなどを借りる必要がなくなる。

 

たとえば「月に3日は行かなければならない」というのなら、賃貸マンションを借りる人もいるだろう。ただ、宇都宮や高崎、小田原あたりに実家がある学生なら、借りないという選択も十分にあり得る。その日だけ登校した方が経済的にも安上がりだからだ。

 

そうなると、大学近辺の賃貸住宅市場に影響が出てくる。当然、資産価値へは下落圧力となる。

 

産業界の負け組の売り物件が勝ち組に安く買われる

 

産業界ではどうやらコロナによる勝ち組と負け組に分けられつつあるようだ。

 

銀座や新宿、渋谷などの繁華街にある飲食店の経営の窮状はテレビなどでも頻繁に伝えられている。外出の自粛によってまず、絶対的な客数が減っている。さらに「ソーシャルディスタンスを保つ」という社会要請によってテーブル間の距離を離さなければならない。

 

こういったことは、コロナが一応の収束をみせた後でもしばらくは続きそうだ。ということは、繁華街の飲食店がコロナ前の売り上げに戻るまでには何年もかかることになる。売上も利益も大幅に減少するだろう。

 

そうなれば、当然のことながらテナント賃料の減額要請につながる。賃料が安くなれば、ビル全体の利回りが減る。するとビル自体の価格も安くならざるを得ない。つまりは、不動産価格の下落である。

 

一方、巣ごもり需要によるゲーム業界やテレワーク関連、ネット通販などの業種は好調だ。彼らのような勝ち組に対し、観光や外食、鉄道、航空、自動車関連などの業界は負け組だ。勝ち組が2なら負け組は8くらいの割合ではないか。

 

負け組企業に勤める社員は、この冬のボーナスが大幅に減額となる。中には、住宅ローンの返済が苦しくなる人も出てくるだろう。そういった人々は任意売却せざるを得なくなるが、目立ちだすのは2020年の年末あたりからではないかと私は考えている。コロナが収束しなければ、来年いっぱいは続きそうである。

 

任売で市場に出てきた売り物件を買うのは、勝ち組企業に勤める人々。しかし勝ち組企業は少数派なので、需要数は少ない。売り物件をすべて吸収することはできないだろう。売り物が余ると、価格への下落圧力となるのは理の当然。コロナ収束の見通しが立たなければ、来年は先の見えない下落相場となる可能性がある。

 

我慢の反動需要はこれまでと中身が異なる

 

一方、回復バブルというものも期待できるかもしれない。コロナが収束すれば、これまで我慢していた消費が復活するのである。

 

我慢の反動という点では、マイホームの購入もそのひとつだ。緊急事態制限が解除された6月、首都圏のマンション市場は新築も中古もそれなりに動きがあった。2か月の我慢を強いられていた人々が動き出したのだ。しかし、どうやらそれは一過性のものであったような感じだ。

 

コロナの収束が見えるとさらに本格的な動きがみられるはずだ。マイホームの購入を我慢していた人々が一斉に動き出すのだ。

 

ただ、マイホームに関しては、コロナ後の需要は以前とは少し中身が異なるかもしれない。コロナ前ならば「都心」と「駅近」がマンション選びの二大要素であった。しかし、コロナ後は多くの企業がテレワークを常態化する。テレワークによって会社に通う必要のなくなった世帯は、周辺環境や住まいの部屋数、広さ、そしてテレワークスペースの有無などが購入の大きな決め手となる。都心や駅近は以前ほど強く求められなくなるだろう。

 

2020年は、後世に間違いなく「コロナイヤー」と呼ばれるはずだ。これまで動かなかったものを動かしているという意味で歴史の転換点となるだろう。この変化を自分の人生やビジネスにどれだけ生かせるか、ということをそろそろ考え始めなければならない。変化はすでに始まっている。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。最近は不動産を中心とした時事問題解説系YouTuberとしても活躍している。