新型コロナウイルスはさまざまな面で世界を変えようとしている。ある意味で、社会のあり方を大きく進化させる「革命」かもしれない。

 

不動産需要にも変化をもたらしている。キーワードは「テレ」と「リモート」。日本語でいうと「遠隔操作」だ。

 

テレビ会議

(写真はイメージです)

 

G7では見送られたが世界の首脳会議も今やテレビ会議

 

われわれは電子情報技術の発達によって、世界のどこにいる相手ともカンタンに映像でコミュニケーションできるようになった。今は2次元が基本だが、そのうち3次元のホログラムになる。ただ、現行の2次元でも、十分に目的を達することは可能なので何の問題もない。

 

トランプ米大統領は先進7カ国首脳会議(G7サミット)を従来のスタイルで予定どおり6月に開催しようと考えたが、結局9月に延ばしたようだ。テレビ会議なら6月でも十分に可能だったはずだが、それを選ばなかったということになる。すでに、世界の首脳間ではテレビ電話でのやり取りが行われ、国際会議もそういった形式が主流になっているのに。

 

G7では見送られたが、世界の首脳会談という超重要な会議でもリモートで可能なのだ。われわれレベルの普通のビジネスの世界で顔を突き合わせた会議や商談を完全にリモート化することが不可能なはずはない。

 

さらには、情報端末とネット環境があれば、どこだって仕事ができる。その作業効率はオフィスに通勤して行う場合とほとんど差がない。この自粛期間中に多くのビジネスマンや経営者がそれを確信したはずだ。それどころか、会議や打ち合わせの中身を効率化し時間も短縮できることさえわかってしまったケースも多いはずだ。

 

無駄な空間・人間の省力化でオフィス需要が激減する近未来

 

この平凡だが厳然たる真実は、さまざまな面で空間と人間の「省力化」を推進するだろう。ただその現実は、企業や人に厳しい一面をも備えている。不動産の面でいえば、オフィス空間への需要がかなり減少するだろう。これまでのような「社員×n」の面積が必要なくなるからだ。

 

本社は大手町や渋谷のキレイな最新式のビル内にあったとして、そこは少数のスタッフと最低限のワーク&コミュニケーションのスペースがあればよくなる。ただし、そういう体制でこれまでどおりのビジネスを展開するには、スタッフがテレワークでも成果を出せるほどに優秀でなければならない。

 

テレワークは、人事評価もシビアにするだろう。今までであれば会議において大きな声で発言することで存在感を示していただけのベテラン社員が、最も苦しくなりそうだ。テレビ会議では無駄な発言が無駄だと分かりやすい。さらに、多くの場合にそれはデジタルで記録されてしまう。後で動画を再生すると、無駄な発言や意味のない意見の表明が妙に目立ってしまう。それがテレビ会議の特徴である。

 

このようなビジネスの「遠隔操作」化は、世界同時進行で発生していると考えるべきだ。コロナは、人間社会に宿痾のように溜まっていた無駄をあぶり出して、排除するキッカケを作ってしまったのではないか。それは、無駄に集まって仕事をする慣習だ。さらに、そのためのスペース、つまりオフィス空間だ。これらの多くが無駄であることに気づき、理解してしまったのだ。

 

IT系優良企業が都心を埋め、周辺のオフィスビルが住宅に

 

オフィスビルへの需要減退の動きは目立たぬところで確実に進行しそうである。これまで、渋谷周辺や港区内の人気エリアではオフィス空間が不足気味であった。IT系の優良企業の入居希望が集まっていたからである。今後、コロナによる深刻な不況が始まることは確実だ。

 

しかし、IT系は最も傷が浅い産業カテゴリのひとつではなかろうか。テレワーク周辺も含めて、コロナ後もIT系技術への需要は衰えるどころかますます高まることが予想できるからだ。

 

都心一等地でのオフィス需要が減退しても、その分は新しいIT系企業によって埋まるはずだ。玉突き現象によって都心一等地の周辺エリアでは空室発生が増えるだろう。さらにその周辺、たとえば山手線の外側になると中小オフィスビルの空室が目立ってくるかもしれない。そういうオフィスビルはやがて姿を消し、分譲マンションや戸建て住宅へと変わっていく。

 

テレワークに移行する人にとっては、通勤に便利な場所の住まいもさほど必要ではなくなるだろう。これまでは「職住近接」を求めるビジネスマンを対象に、都心近郊ではタワーマンションの供給も多かった。コロナ後はこういった住まいへのニーズも減退する。

 

売れ行きが悪いとなると、デベロッパーも二の足を踏むことになる。これまではパワーカップルなどの「近住」志向による需要に支えられてきた湾岸エリアや武蔵小杉などのタワーマンションも、その人気にハッキリと陰りが出そうである。

 

無駄をなくさせたコロナによる動きはもはや「革命」だ

 

そもそも、コロナ以前からテレワーク自体は技術的に可能であった。現にそれを取り入れている企業もあった。毎日オフィスに出勤するための通勤時間とその費用、そして1人につきデスク1台分のスペースなどは、テレワークを前提とすれば必要ない。交通費も空間も、ある意味「無駄」だった可能性が高い。

 

今回の騒動で、こういう無駄をなくす方向へと人々を自然に導いたことは、もはやこれは「コロナ革命」と呼ぶにふさわしい変化ではないか。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。最近は不動産を中心とした時事問題解説系YouTuberとしても活躍している。