新型コロナウイルス感染症の終息がまだ見通せない。この騒ぎが収まる日はいつかやってくるだろうが、それまでの間に持っているマンションを売却したい人もいるはずだ。そうした人に向けて、確実に売却を成功させるにはどうすればいいか、これまで不動産価格が上がり続けた経緯を交えて解説してみよう。

 

売却編

(写真はイメージです)

 

局地バブルが起こった理由

 

われわれが見る風景は、コロナ前とコロナ後で大きく変わっていると考えるべきだ。何よりも変わるのは空気だろう。コロナ前は「まだまだこの市況は続く」という空気が支配的だった。

 

2013年に始まった異次元金融緩和の開始以来、首都圏のマンション市場には限られた地域だけでマンションの価格が新築・中古ともに高騰する、という現象が見られた。私はこの現象をかねがね「局地バブル」と呼んできた。

 

これは日本銀行が金利をゼロベースにするとともにマネーをジャブジャブと市場に供給したことが原因である。黒田東彦日銀総裁は市中のお金を増やすことで「インフレ率2%」の目標を達成しようとしたのだ。

 

ただ、就任以来7年間で一度として達成できていない。現代社会では、資源でも工業製品でも需要以上に生産できるようになったので「お金を増やせば相対的にその価値が下がって物価が上がる」という20世紀の経済理論が通用しなくなっているのだ。

 

その代わりに値上がりしたのが不動産だ。不動産は資源や工業製品のように増産できない。マンションというのは、新築を供給すれば多少は増やせるが数は限られている。だから、都心やその周縁ではマンション価格が高騰した。2013年から7年の間、首都圏の限られたエリアではマンション価格が上昇し続けたのだ。

 

利回り3%はバブルの幻想

 

その空気が、コロナ騒動で変わろうとしている。人々はコロナショックによって幻想から目覚めるだろう。その仕組みを説明しよう。

 

局地バブルエリアにおいては、マンション価格が投資利回りに換算して3%台まで高騰していた。そのマンションを賃貸に出して得られる年間賃料収入が、物件価格の3%になってしまっていたのだ。

 

それにしても、3%台というのは平明に考えて、あり得ない水準である。マンションを所有するというのはさまざまなリスクを背負うことでもある。まず、マンションは老朽化する。その寿命を50年だと想定すれば、年に2%ずつその価値が失われていく。なのに、賃料収入は3%台とはどういうことか?

 

さらに、大きな地震や水害によって被害を受ける可能性だってある。空室にもなることもあるし、運が悪ければマンション内で不自然な死亡事故が起こることもある。

 

そういうリスクをすべて含んで3%台の賃料収入しか得られないとなると、それは投資として不適格だ。にもかかわらず、3%台での物件価格が成立していた。これはバブル以外の何物でもない。

 

幻想からの目覚めで価格下落へ

 

そのバブルの幻想は、コロナショックによって覚まされるはずだ。

 

世の中、何が起こるか分からない――。この平凡な真実が、多くの人をそれまで見失っていた「常識」へと立ち返らせるはずなのだ。

 

普通に考えれば3%台の収入で、大きなリスクは取れない。たとえば1億円のマンションの年間投資利回りが350万円(3.5%)だったとする。このマンションの投資利回りが5%になるには、物件価格が7千万円にならなければならない。つまり3割ほど値下がりすれば、5%というわりあい適格な投資利回りの物件に変化する。

 

コロナショックは、マンションの価格を下落させるのだ。

 

とにかく早く売りましょう!

 

この先、マンションの価格が下がるとすれば、売却予定の人はどうすればいいのか?

 

答えはひとつである。「できるだけ早く売る」。

 

幸い、チャンスはまだいくらか残っている。多くの人は、漠然と「コロナでマンション価格は下がるかもしれない」と思っている。しかし、いつ、どれくらい下がるかは分からない。見えていない。

 

実は、分からないのは不動産業者も同じだ。ここ35年でバブルは3回起こって、2回は崩壊した。ベテランの不動産業者なら、それを経験している。他ならぬ私も不動産業者ではないが、その周縁でこれを経験した。

 

その経験から言えば、価格の下落は見えないところで静かに起こる。ふと気が付いた時には「こんなに下がっているの!」と驚くことになる。つまり、しばらくは分からないくらいにゆっくりと下がっていく、ということだ。

 

売りたいマンションがあるのなら、すぐに売り始めることだ。

 

大手仲介には駆け込むな

 

しかし、駅前に店舗を構える大手系列の不動産仲介会社などに駆け込むのはよろしくない。彼らこそは日本の不動産仲介業そのものをゆがめている存在だ。彼らのやっていることは、不動産業者としては恥ずべきことだと私は考えている。

 

まず、信頼できる仲介業者を見つけること。会社のスケールではない。言ってみれば、不動産業者として「お客様の利益のために売らせていただく」という矜持を持った業者である。

 

これは基本中の基本だが、これを持つ業者は残念ながら少数派でしかない。しかし、私の感覚では一定数は確実に存在する。地域に密着した小規模な会社に多いように思える。

 

信頼できる業者なら助言を尊重しよう

 

あとは、欲を張らないことだ。すでにコロナによって市場の空気は変わっている。コロナ前の価格で売れると考えてはいけない。誠実で信頼できる業者なら、本当に売れる価格は長年の経験と勘で分かるし、それを包み隠さず教えてくれる。彼らの助言を尊重するべきだ。

 

時間はあまり残されていない。5月末まで延長された緊急事態宣言が解除、あるいは緩和されると大手仲介業者もいっせいに対面営業を再開する。

 

ネットの普及で過去2回のバブル崩壊時よりも今は情報の浸透スピードが速い。動くなら今すぐ、という気持ちが大事だ。信頼できる不動産業者は、案外身近で見つけられるかもしれない。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。最近は不動産を中心とした時事問題解説系YouTuberとしても活躍している。