毎週金曜日夜8時、NHK・Eテレで「あしたも晴れ!人生レシピ」という番組が放送されています。人生で直面する悩みについて、様々な視点から解決策を提案する番組です。去る3月20日(金)の放送では、空き家問題がクローズアップされました。

 

総務省が発表した「平成30年住宅土地・統計調査(概数集計)」によると、日本全国の空き家は約846万戸、空き家率は13.6%に及びます。8戸に1戸の割合で空き家だと考えると、問題の大きさがより鮮明になるのではないでしょうか。

 

番組内では、空き家が増えた要因の1つとして、地方から都市圏へ人口が流入していることが挙げられていましたが、前述の統計調査によると、東京都内の空き家は約81万戸、空き家率は10.6%となっており、全国ほどではないにしろ、首都圏も空き家問題に直面しています。

 

今回は、放送された番組内容に触れながら、首都圏の空き家活用術について解説いたします。

 

人が住まなくなって荒れた空き家

(写真はイメージです)

 

番組では触れられなかった、空き家の相続の問題点

 

放送では、空き家であっても定期的な管理が必要だということに触れられていました。実際その通りで、建物内の定期的な換気、キッチンやトイレなどの封水処理など様々な管理作業が必要になります。近所なら頻繁に訪れることもできますが、番組で紹介された事例のように遠方の実家などを相続で受けた場合、こうした管理作業で現地を訪れるだけでも一苦労です。

 

そして、空き家と周囲に認知されてしまえば、ゴミが捨てられたり、動物の住み処になったり、最悪の場合、犯罪者が隠れる場所になってしまうことも考えられます。

 

一方で番組では「相続放棄が最終手段」とされており、他の資産も無くなってしまうという理由からあまり解説がありませんので、ここではもう少し詳しくお伝えします。

 

実は、その最終手段の相続放棄を選択したとしても、すぐには空き家の管理責任から逃れることはできません。相続放棄の場合には、裁判所に相続財産管理人の請求を行い、相続財産管理人が相続財産の処分に動いていきます。この相続財産管理人の業務にはもちろん費用が発生しますし、相続財産管理人が選任されるまでの間は、相続を受けた人が空き家の管理責任を負うのです。

 

番組で紹介された空き家活用術の現実性

 

首都圏の空き家活用術として、番組では3つの事例が紹介されていました。

 

・横浜市のある空き家は、次男の発案により、地域コミュニティの集い場として活用されています。
・茅ケ崎市のある空き家は、「月額4万円で日本全国の30ヶ所以上の空き家を利用できる」という新サービスに登録することで、主にフリーランスの宿として活用されています。
・世田谷区のある空きアパートは、築30年以上で古くなった建物を改装して地域高齢者のケアセンターとして活用されています。

 

公共性を重視するNHKの番組だからか、地域コミュニティとのつながりや福祉への協力といった活用術が紹介されていましたが、多くの方が気になるのは、その収支ではないでしょうか。

 

いずれの活用方法も日本の社会問題の解決に貢献できる素晴らしい方法ですが、空き家を維持していくためには固定資産税や火災保険などの費用がかかりますし、老朽化への対応費用も考えなくてはなりません。

 

世田谷区のケアセンターのように、初期投資として数百万円のリフォーム費用を空き家のために捻出するのは無理だと考えた方も多いのではないでしょうか。

 

「現況のまま売る」が手離れが良くて現実的

 

番組でも触れられていたように、「家族の思い出が残る実家をできるだけ残していきたい」と考えている方も多くいらっしゃるでしょう。ですが、その空き家の管理のために、家族が悩み苦労しているという状況を故人はどのように感じるでしょうか。

 

また、茅ケ崎市や横浜市の事例のように相続以外で入手した空き家には、大きな取得費用がかかっています。建物の経年劣化を考えると、有効活用できていないという状態はそれだけで目に見えない損失を生んでいることになります。

 

結局のところ、現実的な空き家の活用術としてたどり着くのは、敦賀市の空き家で提案されていた「現況のまま売却する」「解体してから売却する」「リフォームして貸し出す」の3パターンになろうかと思います。

 

「解体してから売却する」方法は、初期費用がかかりますし、番組でも紹介されていた通り、更地にして年をまたぐと翌年の固定資産税は軽減措置の適用を受けられなくなり、大幅に増加します。

 

「リフォームして貸し出す」方法も初期費用がかかりますし、その後の賃貸運用が上手く続けば収益を得られますが、賃借人が入らなければ空き家問題が続く上に、賃貸管理という新たな問題が生じます。

これらを踏まえると、「現況のまま売却する」という方法が、初期費用も少なく最も現実的な空き家の解決策となります。空き家のまま活用していく方法の場合、相続が発生すると親族で分割することができず、持分で相続することになります。親族が各々持分を持つと、その後の管理は誰が主体となって行うのか、その費用分担はどうするか、といった問題になります。また、空き家の持分のみを売却することは難しく、家族の火種が残る状態になります。

 

一旦売却して現金化することにより、親族の間で分け合えるようになりますので、前述のような相続におけるトラブルの火種が残る状態は解消されます。

 

首都圏では不動産価格が上がっている今が売り時

 

首都圏では、昨今の「かぼちゃの馬車」問題やスルガ銀行の不正融資の問題などから、金融機関が一斉に不動産投資への締め付けを厳しくしています。フラット35を扱う住宅金融支援機構も2020年4月1日から融資条件を見直し、セカンドハウスの規定や総返済負担率の算定に関する条件を厳しくする予定です。このような状況から、不動産投資の動きは鈍ってきています。

 

また、新型コロナウイルスの影響により、東京五輪は2021年の夏までの延期が確定しました。東京五輪が延期となることで、選手村として使用された後に分譲される4,000戸超の超大型マンション「晴海フラッグ」の販売に影響が及びますし、規模が規模だけに首都圏のマンション価格へも波及するでしょう。

 

「コロナショック」で世界の株式市場の株価が下落しており、日本も世界も経済情勢の先行きは不透明です。この状態が続けば首都圏の不動産価格が急落する可能性もあり、売却したくてもなかなか売れないという状況になってしまう恐れがあります。

 

今のところ、土地の価格指標である公示地価において東京圏は4年連続で上昇していますが、昨今の情勢を踏まえると、持て余している空き家があるのなら早めに売却して現金化しておくのが得策でしょう。

 

まとめ

 

NHKの番組内容を通じて空き家問題について論じてきました。

 

一口に空き家といっても、戸建・マンション・アパートなど形態も様々ですし、所有者側の状況も様々ですので、一概にこの方法がベストな提案だと決められるものではありません。

 

空き家の活用でお困りの場合には、実績と信頼性のある宅建士にまずはご相談することをおすすめします。不動産相場を教えてもらうこともできますし、活用パターンごとのシミュレーションを示してもらえますので、空き家問題の解決の一助になるでしょう。

 

 

斉藤勇佑(宅地建物取引士)
大学卒業後、5年間不動産売買業務に従事。その後、不動産管理会社に転職し、分譲マンションの維持・管理を中心とした業務に5年間かかわり、現在は不動産のストック分野の業務に従事。