首都圏で毎年、増え続ける分譲マンション。しかし、その資産価値を長く保つことができるものは限られるのではないでしょうか。不動産の価格は、利用価値で決まるといわれます。

 

その不動産を利用する人間の数が減っていく近未来、利用価値は低くなるため、価格は下がっていきます。住宅ジャーナリスト、榊淳司氏は近著『2025年 東京不動産大暴落』でこう警鐘を鳴らしました。

 

各メディアで健筆をふるう榊氏は不動産への愛ゆえの辛口で知られますが、そんな榊氏にも資産性や流動性からその価値に脱帽したマンションがあります。マンションの具体名を挙げて、なぜ優れているのかを紹介していきます。

 

新緑のマンション

(写真はイメージです)

 

プラウドシティ船堀

 

売主・野村不動産ほか 都営新宿線 「船堀」駅徒歩4分 
全245戸 2012年10月完成 14階建て

 

意外に穴場な住みやすさ

 

都営新宿線の「船堀」駅というのは、沿線以外の人にはあまり知られていない街。しかし、この駅のまわりには食品スーパーが何軒もあり、大きなドラッグストアやスポーツクラブ、公園などがあって意外に住みやすいところ。駅前のホールにはシネマズもあって文化的な薫りもたたえています。それでいて、かつてはマンションの価格があまり高くなかったので、住みやすさで選ぶとかなりの「穴場」的なスポットでした。

 

そこへ東日本大震災の直後の頃に、野村不動産と三菱商事がドカンと245戸のマンションを建設したのがこのマンション。駅からは徒歩4分とほどよい距離感覚です。4方道路で、敷地の条件も悪くありません。これは、めったに出ない好条件なマンションではないかと当時は思いました。

 

ただ、計画内容はかなり単純な作りでした。まず、配棟計画。南を角にした単純なL字型で、住戸は南東向きと南西向きです。

 

それはそれでよいのですが、羊羹切り(道路に面する間口が奥行きの数倍はある地形の土地のこと。道路から見て、奥に長い土地で建売分譲をする場合は私道を入れなければなりませんが、道路に沿うように間口が長いと、そのまま羊羹を切るように土地を切っても切られた土地はすべて道路に面している状態となっていることを指します。羊羹切りができる土地は、分譲会社にとって無駄のない魅力的な地形です)された中住戸の間取りはいたって平凡。まるで長谷工の大規模物件を見ているような気分になったことを覚えています。

 

お決まりのように真ん中の空き地に駐車場と駐輪場、共用棟などを配置。駐輪場は「490台」と表示されていますから、住戸数のほぼ2倍もあります。立体式になっていたはずです。

 

問題なのは駐車場。当時のオフィシャルページの「LAND PLAN」を見ていると、平置きは22台分しか確認できません。しかし、スーモの表示では「102台」でした。もしかしたら5段になった機械式ではないでしょうか。

 

機械式は15~20年で設備を更新しなければなりません。メーカーや種類にもよりますが1台につき100万~200万円の費用がかかります。ほとんどの住民が駐車場を使っているのなら、費用負担はほぼ公平です。しかし、当物件のように半分以下の住戸しか駐車場が利用できていないと、多額の更新費用を車を使っていない世帯まで賄わされることに異論が噴出する可能性があります。

 

つまり、機械式駐車場というものは、管理組合に内紛を生じさせかねない「時限爆弾」かもしれないのです。この物件をご検討される方は、そのあたりを十分に考慮すべきでしょう。

 

この物件がある土地、元は産業廃棄物処理場だったそうです。土壌改良を行った気配もあります。そういったことを、ご近所の人々はよく知っていますね。したがって、ご近所の方が「待っていました」とばかりに買いに来るような物件ではなかったのも事実。

 

でも、表面上は「船堀駅徒歩4分」。野村不動産ならではの「強気」が見えました。私に相談があった事例から推測すると、新築時の平均坪単価は240万円前後。現在の中古価格も新築時とさほど変わりはありません。むしろ値上がり気味と考えてもいいかもしれません。

 

このマンション、リセールバリューの考え方としては産廃跡地という土地の来歴よりも、駐車場などの管理面の影響が大きいと考えます。もうすぐ築10年になります。産廃の跡地であったことなど忘れられているでしょう。それよりも今後、老朽化するであろう機械式駐車場は大きなハンディになりそうだと思います。

 

まあ、そういった懸念を除けば、船堀エリアでは有数の魅力を備えた物件ではあります。価格さえ高くなければ、十分に検討に値する物件だと思います。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

物件名:プラウドシティ船堀

物件外観・画像

物件概要

  • 交通

    船堀駅より徒歩で4分

  • 沿線

    『船堀駅』 都営新宿線

  • 所在地(住所)

    東京都江戸川区船堀3丁目16番5号

  • 構造

    RC一部S(鉄筋コンクリート一部鉄骨)

  • 階建て

    地上14階

  • 築年月

    平成24年11月

  • 総戸数

    245戸

  • 管理方式

  • 土地権利

    所有権

  • 用途地域

    第一種住居地域,近隣商業地域

  • 小学校区域

  • 中学校区域

  • 備考

    ●ルーフバルコニー:あり ●専用庭:あり