首都圏で毎年、増え続ける分譲マンション。しかし、その資産価値を長く保つことができるものは限られるのではないでしょうか。不動産の価格は、利用価値で決まるといわれます。

 

その不動産を利用する人間の数が減っていく近未来、利用価値は低くなるため、価格は下がっていきます。住宅ジャーナリスト、榊淳司氏は近著『2025年 東京不動産大暴落』でこう警鐘を鳴らしました。

 

各メディアで健筆をふるう榊氏は不動産への愛ゆえの辛口で知られますが、そんな榊氏にも資産性や流動性からその価値に脱帽したマンションがあります。マンションの具体名を挙げて、なぜ優れているのかを紹介していきます。

 

住まい・暮らし・街 イメージ

(写真はイメージです)

 

ユトリシア

 

売主・有楽土地(現大成有楽不動産)他 京成本線「実籾」駅徒歩11分 
2009年1月~2015年7月竣工 全1453戸 14階建

 

伝説の販売不振物件も、すでに竣工5~11年

 

このマンションは、新築してから全戸完売するまで10年近くかかっていた記憶があります。あまりの苦戦ぶりに、そもそも計画通り1553戸すべてを建設するのか疑問に思った時期さえありました。やればやるほど赤字に見えましたね。それが証拠に参番街が竣工して2年程度経過してから4番街、5番街が着工していました。その間、ずっと参番街までの完成在庫を売っていました。

 

私は、マンションの適正規模は100戸未満だと思っています。大きなマンションにはどんなメリットがあるのでしょう。共用施設がいっぱいあったり、集まってくる管理費や修繕積立金の額が大きくなったりするくらいではないでしょうか。

 

幸い、ここには維持管理にお金がかかりそうな共用施設はありません。ただ、いかんせん規模が大きすぎます。

 

ここはもともと鉄鋼系の建材会社の工場跡地。それを長谷工プロジェクトとして当時の有楽土地などが事業化しました。ところが、土壌汚染が発覚してその改良に時間がかかりました。その間にリーマンショックが発生。そのせいで、デビューのタイミングが悪かったですね。

 

新築を売っている間に、同じマンションで中古物件も売り出されていました。2012年あたりでそんな中古物件の価格は坪単価にして90万円台くらいです。これはあくまで売主希望価格であり、実際はここから10%程度は下がって取引が成立したと推測できます。現在の中古価格も坪単価は100万円を切るあたりが目安でしょう。そう変わりません。

 

今後の人口減少とこのエリアの過剰供給状況を考えればこれからじりじり下がっていって、最終的には坪単価50万円あたりになってもおかしくはないマンションです。不動産の価値は基本的に「需要と供給の関係」で決まります。供給がやたらと多い京葉エリアの中で、こういった最寄り駅がマイナーな物件は「安く買えるけれども、資産価値も脆弱」だと心得ておくべきでしょうね。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。