首都圏で毎年、増え続ける分譲マンション。しかし、その資産価値を長く保つことができるものは限られるのではないでしょうか。不動産の価格は、利用価値で決まるといわれます。

 

その不動産を利用する人間の数が減っていく近未来、利用価値は低くなるため、価格は下がっていきます。住宅ジャーナリスト、榊淳司氏は近著『2025年 東京不動産大暴落』でこう警鐘を鳴らしました。

 

各メディアで健筆をふるう榊氏は不動産への愛ゆえの辛口で知られますが、そんな榊氏にも資産性や流動性からその価値に脱帽したマンションがあります。マンションの具体名を挙げて、なぜ優れているのかを紹介していきます。

 

高層マンション・青空

(写真はイメージです)

 

ザ・タワーズ・ウエスト

 

売主三井不動産レジデンシャル他 総武中央線 「市川」駅 徒歩1分
全572戸 (地権者住戸165戸を含む)  2009年1月竣工 45階地下2階建

 

いわくつきマンションも資産価値が向上中

 

このマンションは12年ほど前に「鉄筋不足」として大問題になった物件です。少しだけ振り返ると、あの時はマンションの構造計算書を偽造した「姉歯事件」からまだ日が浅く、世の中がマンション建設にナーバスになっていました。

 

しかも、発覚当初の売主の三井不動産レジデンシャルなどの対応も悪かった。「取り壊して建て直す必要まではないので、きちんと修復補強をしました。それでもキャンセルなさりたい方は手付金をお返しします」と最初にキッチリ誠意を見せればよかったのです。ところが、こともあろうに「絶対に値引きはしない」といってしまったようです。対応を誤った事業主側のミスは長く記憶されるでしょうね。

 

そもそも、計画自体は悪くないものだと思います。むしろ、お勧めできるでしょうね。私はタワーマンション自体が好きではありませんが、駅前にあって、そこに住みたい方が買うのであればそれはもう、ライフスタイルの問題です。

 

このマンションも、実際は売り出しから間もなく「完売」していました。それが、初期の対応を誤ったせいで最終的には無条件でキャンセルを受け入れることになりました。もちろん、キャンセル続出です。それが建物完成後も長らく残っていて、販売が続きました。最終的には施工したゼネコンが引き取ったようですね。

 

さらに、ここまで世間を騒がせた住まいですから、資産価値に影響しないわけがない、と思ったのですが、それも昔の話。10年も経てばみな忘れてしまいます。今では都心の局地バブルの影響を受けて新築時よりも値上がりしています。坪単価の目安として300万円弱と言ったところでしょうか。

 

ただ、気になることがひとつ。それは地権者住戸が165戸も含まれていることです。これは全住戸の4分の1を超えています。マンション管理において、共用部分の用途変更など重要な決定はたいていが「区分所有者の4分の3の賛成」です。つまり、新住民と旧住民の意見が対立したとき、旧住民が結束したら何も決められなくなるのです。

 

この手のトラブルは結構多いものです。管理組合の総会議事録を取り寄せるなどよく調べた上で、検討すべきですね。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。