首都圏で毎年、増え続ける分譲マンション。しかし、その資産価値を長く保つことができるものは限られるのではないでしょうか。不動産の価格は、利用価値で決まるといわれます。

 

その不動産を利用する人間の数が減っていく近未来、利用価値は低くなるため、価格は下がっていきます。住宅ジャーナリスト、榊淳司氏は近著『2025年 東京不動産大暴落』でこう警鐘を鳴らしました。

 

各メディアで健筆をふるう榊氏は不動産への愛ゆえの辛口で知られますが、そんな榊氏にも資産性や流動性からその価値に脱帽したマンションがあります。マンションの具体名を挙げて、なぜ優れているのかを紹介していきます。

 

タワーマンション

(写真はイメージです)

 

津田沼ザ・タワー

 

売主・三菱地所レジデンス他 JR総武本線 「津田沼」駅 徒歩4分
全759戸 2020年4月完成予定 地上44階 地下2階建

 

市営駐車場跡地を大手3社が開発した巨大タワマン

 

また、津田沼にすごいタワマンができてしまいました。「モリシア(ショッピングセンター)の南側」といえば近隣エリアの方はお分かりになるはずです。ずっと昔は習志野市営「なかよし幼稚園」があった場所。最近は市営の駐車場でしたので、利用された方も多いはず。そこが三菱、三井、野村によってタワーマンションとなります。

 

駅からは「徒歩4分」の表示。ペデストリアンデッキがアクセスになります。残念ながら、雨が降れば濡れるでしょう。4分ほどのことですが。それでも津田沼の駅周辺エリアではピカイチの立地。10年くらい前に分譲していた「奏の杜」なんてすっかりかすんでしまいましたね。

 

それにしてもスケールがすごい。759戸と卒倒しそうな規模。もちろん、周辺にタワーマンションなんて見かけません。そこに44階ですから、もはやランドマークと言っていいはず。20階以上なら360度どの向きでも眺望はスカッと開けているはず。

 

ただ、ものすごく心配なのは「資産価値を維持できるか」ということ。まず、ここ10年くらいの京葉間でのマンション供給は異様な規模です。しかも、次から次へと大型プロジェクトが登場しては、軒並み販売不振になるという有様です。ほとんどが完成在庫になった後に値引きの嵐で何とか完売させていました。同じ三菱地所レジデンスの「奏の杜」でさえ、最初のシリーズ以外はほぼほぼ完成在庫になっていた記憶があります。

 

そして今、京葉間には「幕張ベイパーク」なんてのも出てきました。あちらも10年くらいかけて数千戸が供給される見通しですが、もう絶対と言っていいほど販売不振が見えています。10年後どころか、3年後にも恐ろしい状況になりそうな予感がします。この大手3社さんもきちんとマーケティングをなさったのでしょうか。

 

ご近所の「奏の杜」はここ10年以上をかけて当初の坪単価180万円から、最近では200万円台前半まで売出価格を上げてきました。このマンションは、当然それよりも高くなるはずで、坪単価が300万円台を超えたとしても不思議はありませんでした。

 

5年くらい前に売主のうちの1社である野村不動産が、東京都下の立川駅前に開発したタワーマンションで坪単価330万円に挑戦。当時は「何と無謀な」という声に満ち満ちていました。ところが、見事に短期間で完売させました。「マーケティングの勝利!」と野村不動産を称賛する声が業界内外のあちこちから上がりました。購入したのは地元の医師を中心とした富裕層だったとか。

 

さて、この津田沼でも立川と同じような現象が起きたのでしょうか? 私の感覚では、千葉エリアの新築マンションで坪300万円以上が売れるのは、本当に主要駅の駅前だけだと想定できました。津田沼は主要駅ですし、「徒歩4分」なら駅前にあたると考えてもよさそうです。

 

2019年8月頃のオフィシャルサイト概要には価格について以下のように表示されていました。

 

販売戸数 15戸
販売価格 28,880,000円~65,080,000円
最多価格帯 5,100万円台(3戸)(100万円単位)
間取り 1LDK~3LDK
専有面積 41.36㎡~75.91㎡

 

ここから坪単価を計算すると230万円から283万円。思ったよりも安く出してきました。未確認情報ですが全体の平均は坪単価260万円台の後半だとか。板状型に少し乗せたくらいですね。私に言わせれば何とも弱気な値付けでした。そのせいか、思った以上のスピードで完売しました。2020年の4月に建物が完成し、その後に引渡しが始まります。

 

2020年1月8日時点では、レインズには売出住戸1戸が出ていました。10階の住戸で坪単価が300万円超。転売屋さんの物件ですね。新築時よりも1割程度は乗せているご様子ですから、カンタンには売れないでしょうね。こういうマンションは中古でも値が下がりにくいので新築時の売出価格の水準で買えるなら、十分に検討範囲だと思います。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。