2020年1月10日、NHK総合テレビの番組『首都圏情報 ネタドリ!』で、昨今の東京の大規模開発をテーマにした内容が放送されました。大手町や虎ノ門、渋谷、湾岸エリアなど都内各地ではあちこちで大規模な再開発工事が行われています。2020年五輪イヤーに向けた「東京大変革」とも呼べる取り組みで、世界の中で東京という都市のポジションを知る上で重要なことではあります。

 

ただ、すでに東京に住まいを所有している人にとっては開発が住宅の資産価値にどれだけ影響を与えるか、またこれから購入を検討している人にとってはどんな開発が行われている街でマンションを買えばその先の資産価値が安泰なのかのほうが気になるのではないでしょうか。そんな「裏テーマ」のヒントが番組内でも少しだけ示されていましたのでご紹介します。

 

永代橋からの眺め

(写真はイメージです)

 

目下の大規模開発プロジェクトは286件

 

『首都圏情報 ネタドリ!』は、首都圏の気になるニュースの「ホンネ、真相、本当のこと」にせまる生放送番組。キャスターは高橋みなみさんと岡田結実さんが隔週で担当しています。10日の放送では「首都大変革 変わる東京」と題して東京で目下、進行中の大規模開発について取り上げていました。ゲストはお笑いタレントで都市問題に詳しい厚切りジェイソンさん、都市計画や住宅政策が専門で東洋大学理工学部建築学科の野澤千絵教授。

 

番組によると、現在、東京23区内で行われている大規模開発プロジェクト(延べ面積1万㎡以上)は286件。背景の中でも特に大きいのが、戦後に整備されてきたインフラが更新時期を迎えていること、規制緩和により民間事業者による開発が活発化してきたこと、東京五輪への期待―の3点だそうです。

 

その上で、まちづくりが大きく動いている渋谷、池袋、湾岸エリアが紹介されました。

 

高低差という弱点の克服に挑戦する渋谷

 

渋谷

 

渋谷では現在、駅周辺を中心に「百年に一度」の規模でオフィスビルの建設が行われています。それだけではなく、2019年から20年にかけての年末年始には、東京メトロ銀座線の渋谷駅ホームを130メートル移動させるという前代未聞の大工事が行われました。

 

番組に登場した渋谷区役所の責任者は「だれもが歩きやすい街」を再開発のテーマに挙げました。渋谷は駅を谷底に高低差18メートルのすり鉢状になっていて、駅は上下の動線が不十分で車椅子やベビーカー使用者には使いにくい構造になっていたそうです。

 

これを解消しようと2008年から進めてきた計画がこの年末年始にようやく実現し、これで障害者やベビーカー使用の人の移動も楽になったということです。野澤教授は「駅はたくさんの人が集まっているのに目的地に行くしかない。最近はウォーカビリティといって、人が歩いて楽しめる街を目指すことが海外ではトレンドになっていて、街が活性化するきっかけとなる」と話していました。

 

確かに、現在の渋谷は迷路のようでどこへ行くにも迷ってしまいがちという弱点があります。この弱点が解消されつつあるようです。

 

ネガティブな池袋 文化芸術の街でイメージ回復作戦

 

南池袋公園と池袋の高層ビルディングの風景

 

次に紹介されたのは、『ハレザ池袋』 という新しい複合ビルに8つの劇場を誕生させた池袋でした。大きな歓楽街があり、不良のたまり場となった公園が小説でも描かれるなど、池袋は街に対するネガティブなイメージに悩まされ続けてきました。

 

これを払拭しようとする取り組みに、多くの人がイメージを変えつつあります。特に、公園の全面を芝生にし、オーケストラのコンサートも催されるなどして休日には多くの人でにぎわうようになったことは、全国から注目を集めているそうです。

 

マンション街になった湾岸エリア 東京五輪に向け人も変貌

 

晴海・豊洲のタワーマンション

 

最後に紹介されたのは東京五輪の関連施設が集まる湾岸エリアです。五輪後には選手村跡地は『晴海フラッグ』として5,600戸のマンションが供給されるほか、この春には地域最大の商業施設『有明ガーデン』がオープンする予定です。

 

このエリアは昭和の高度成長期に埋め立てが進み、発電所や工場、造船所が造られたのですが、やがてそれらが海外に移転するなどしていきます。都心への距離が近いことから、やがてタワーマンションが林立するようになりました。

 

ただ、人口増加の歪みも現れていて、深刻な通勤ラッシュなどが問題となっています。こうした状況で五輪の舞台となり、たくさんの人が訪れることついて、住民どうしで課題を話し合う動きも紹介されていました。タワマンの自治会長がグループ「湾岸ネットワーク」を結成し、オリンピックの際「有明アリーナの動線にあるマンションはどうなってしまうのか」「選手村の交通整理の問題は」など、今後起こりうる問題について、マンションの垣根を越えてエリアの課題を解決しようと動いています。

 

まちづくりが継続する街、資産価値の落ちない街

 

野澤教授は湾岸エリアについて「長期的に見ると、できあがった街をどう維持していくのかが課題。デベロッパーや行政も売りっぱなしで終わるのではなくて、五輪の後も積極的に維持管理に責任を持って新しい仕組みづくりを行い、新しいオリンピックレガシーにしてもらいたい」とコメントしていました。

 

これは首都圏各地のニュータウンと呼ばれるところや地方のレジャー地などの多くで住宅拡大の動きが野放図に展開され、その後に放置されることに対する批判が含まれています。そうしたところでは、需要がなくなってしまい、造りすぎてしまった建物は老朽化が進んで資産価値がガタ落ちしています。これに対し、番組で紹介された街はいずれも、東京五輪後に起こる環境や人の価値観の変化にも耐え、弱点を克服して選ばれる街として存続していけるよう官民ともに力を尽くしているように感じました。

 

住まいを探す際には、通勤に便利という視点だけでなく、このように街の価値を維持していくために不断の努力がなされているエリアであるかを見極めることも非常に重要ではないでしょうか。購入したマンションのスペックもさることながら、そのマンションのある街が住みやすく便利な街であるかどうかも、同じくらい住宅の資産価値に直結してくるのは間違いないからです。

 

番組では、湾岸エリアにマンションを買った若い夫婦が紹介されていました。購入の決め手はズバリ「街の将来性」ということでした。男性は「人のにぎわいがどんどん増えていくような街になると思っている。より暮らしやすい街になるのではないか」と話し、女性も「楽しみしかない」と声を弾ませていました。

 

行政やデベロッパーには、こんなピュアな期待を抱いて住宅を買う人の気持ちを裏切ることなく、マンションを取り巻く環境をよきものにする努力を続けてほしいと願います。野澤教授の言うように、その流れが東京五輪のレガシーとなり今後のスタンダードになれば、日本の住宅のあり方が大きく変わる転換点になることは間違いないでしょう。

 

(不動産のリアル編集部)