12月17日に東京テレビ系で放映された「どっちの家を買いますか?」では、実際に家の購入を検討しているご家族に、2人の凄腕営業マンが希望条件に見合う家をそれぞれ提案して、どちらか1つを選択してもらうという、まさに真剣勝負を展開して話題を呼びました。

 

今回のコラムでは、放映された3つの対決のうち、「新築のいだてんVS未公開物件の鬼」と題された、都内の一軒家を希望する5人家族へのプレゼン合戦について解説していきましょう。

 

リビングルーム

(写真はイメージです)

 

ご希望は世田谷区or大田区の戸建て一軒家

 

購入希望者の緑さんご一家は、ご夫妻と高2・中1の息子さん、高1の娘さんがいらっしゃる5人家族。現在は千歳船橋の3LDKの賃貸にお住まいで、世帯年収は共稼ぎで1,200万円です。

 

緑さんご一家のご希望条件は
・世田谷区(奥様のご希望)or 大田区(旦那様のご希望)
・一戸建て
・予算5,000万円台
というもの。

 

希望エリアについては、「そこから違うんかーい」と司会の村上信五にツッコまれていました。あくまでも推測ですが、奥様は現在の住環境からあまり離れたくないという想いがあるのではないでしょうか。千歳船橋は世田谷区ですから。

 

一方でご主人は予算も考慮して、世田谷区からは程近いけれど、やや相場の安い大田区を希望されているように思えます。

 

予算については、世帯年収が1,200万円ということなので5,000万円は射程距離です。ただ、この希望エリアで新築一戸建てなら6,000万円~7,000万円が妥当でしょう。もう少し予算を高めに設定したいところです。

 

しかし、世帯年収は共稼ぎという点から、ご夫婦どちらも永続的に働ける環境にあるのか、収入がどの程度将来的にも見込めるのかが番組からは分かりませんでした。

 

また、お子様たち3人もまだ高校生以下で、これから進学費用など教育費がかさむ時期を迎えます。決して余裕がある予算設定でないことは留意しなければいけません。

 

新築のいだてんVS未公開物件の鬼

 

今回物件をプレゼンテーションした不動産屋は、いずれもなかなか個性的です。一方は世田谷区のタウンネットという不動産会社の長谷川社長。従業員4名の小さな会社ですが、なんと年商30億円。長谷川社長はそのうち25億円を売り上げるというのですから恐れ入ります。「うちは未公開物件を扱います」「プライドなんかありません」と豪語し、電話をかけまくるタイプの不動産屋さんです。

 

未公開物件とは、番組内でも紹介されていましたが、「売主から直接情報を仕入れた、市場に公開する前の物件」をいいます。

 

居住中の家や営業中の物件、相続した物件などでは、何らかの理由で、売却しようとしていることがご近所や業界に知られるのを売主が嫌うケースがあります。そうした物件はインターネット上や新聞広告などで一般公開せず、業者間の口伝のみで買主を探すことになります。これが「未公開物件」です。

 

また、マンションデベロッパーやハウスメーカーなど、事業用の物件を扱う業者間の売買では、公開物件は皆が一度は目を通しているものとして興味をあまり持たれず、未公開物件が重宝される傾向があります。特定の人間だけが知っている情報というのはお得感があると評価されやすいのでしょう。

 

番組内でも触れられていますが、未公開物件を扱うためには、そうした情報を集める能力と、「この会社なら、この人なら、物件を預かってもきっちり販売してくれるだろう」という、販売実績と信頼が必要になります。

 

対するは、新築物件を中心に販売しているベンハウスの徳山氏です。物件の周辺環境や駅の様子などをお客様にお伝えするために、歩いて歩いて歩き続けることから「新築のいだてん」と言われています。今まで履きつぶした靴は100足以上だとか。

 

徳山氏は最初に、緑さん一家の希望地区から外れた、神奈川県・綱島の物件を紹介し、その後で同じ価格帯の大田区の物件を紹介して一緒に内覧しています。

 

綱島の物件の方が、相場が安い分広いです。同じ価格帯で広さが両極の物件をお見せすることで、反応を確認し、広さの許容レベルを図ろうとしたとのことです。

 

筆者も、ここまで極端なことはないにしろ、依頼者のご希望から少し外れていても他の条件に特色のある物件を、あえて何件か交えてご紹介することがあります。

 

そうした物件に対する反応や会話から、依頼者自身が何を一番重視しているかが浮き彫りになり、成約につながることが多いのです。そうした内覧を積み重ねて成約に至ると達成感もひとしおです。

 

一方で、物件情報を何度ご連絡してもなかなか内覧にご一緒してくれないお客様は、成約は難しいと思っています。

 

意外な厳選物件 購入されたのはなんと…

 

新築のいだてん・徳山氏が最終提案したのは、千歳船橋徒歩16分の3LDK。新築どころかまだ建設中の分譲地です。来年3月までに13棟建設予定で、そのうち2棟は既に売約済み。モデルルームをご案内しながらの提案となりました。広さも間取も緑さん一家の理想に近い様子でしたが、お値段が6,280万円。ちょっときついなあ、というご夫婦の表情です。

 

一方、未公開物件の鬼・長谷川社長の最終提案は、自由が丘駅から徒歩17分。ご主人が理想とする、リビングの広い部屋といいつつ案内したのは、なんと平成7年築(築24年)の3LDKのマンションでした。

 

長谷川社長は、なぜマンションを最終提案としたのかについて、こう説明しています。

 

「将来の変化に備えて、資産価値が下がらない家を紹介したい」

 

「これからご主人が80歳までの住宅ローンを組むとして、32年間もある、その間に子供たちが独立したり結婚したりすることもあるだろう。10年後くらいにまた買い替える時にも売りやすい物件を選んだ」としています。

 

資産性が高い根拠として、「自由が丘という人気の高いエリア」「南西の角部屋で日当たりが良い」としています。

 

もう1つのポイントは、奥様が他の物件の内覧時に放った「富士山が景色にないのは許せない」という一言でした。

 

このマンションは自由が丘ですが、窓から富士山が見えるのです。

 

そしてお値段ですが、最初に提示されたのは6,480万円。「これじゃあ…」と、ちょっとがっかりした様子のご夫妻を見て、長谷川社長は売主に電話します。さすが、未公開物件の鬼。見事値引きに成功し5,XXX円という回答を引き出しました。(相場を崩さないように詳細は秘密だそうです)

 

ここまでされては、緑さんご一家も陥落。見事、長谷川社長がこの対決を制しました。

 

最後に触れておきたい、未公開物件の「闇」

 

今回の対決では、長谷川社長が見事に未公開物件の販売に成功しました。緑さん一家の家族構成や趣味嗜好まできめ細かく把握して、最善の提案をしていく姿勢は、さすがに個人で25億円を売り上げるだけあります。まさにあっぱれです。

 

ただ、筆者個人は、不動産会社が「未公開物件」ということを前面に押し出すことには否定的です。

 

前述したように、売り物件であると公にしたくない売主の事情も分かります。「経済的に困窮している」「先祖代々の財産を大事にしない」などと思われて世間体が悪い、信用不安につながるという問題があるからです。そうした要望を否定する必要はないでしょう。

 

また、買主側が「未公開物件」「会員のみの特別情報」などという言葉に付加価値を感じることも否定できません。

 

しかし、本来の売主の利益を追求するという点に関していうと、疑問を感じ得ません。売物件の情報が広く拡散していないことで、売主は本来販売できていた機会を損失している可能性があるからです。これは購入側にとっても同様です。

 

日本の不動産に関する法律(宅地建物取引業法・宅建業法)では、売主側に依頼された不動産会社が買主を自分で見つけると、売主からも買主からも仲介手数料をもらうことができます(両手取引)。

 

両手取引は、買主を他の不動産屋が探してくる「片手取引」に比べると仲介手数料が倍です。そのため不動産会社はできるだけ両手取引を目指して努力します。

 

しかし一方、両手取引したいがために他社に販売情報を公開しない「囲い込み」という行為もあります。

 

この囲い込みをさせないために宅建業法では、他の不動産会社が仲介できないような独占的な仲介契約(専任媒介契約または専属専任媒介契約)を締結した場合、営業日7日ないし5日以内に物件の売買情報をレインズ(不動産会社専用の物件情報・検索サイト)に登録して情報を公開する義務を課しています。

 

囲い込みは、法律で規制されるくらいですから不動産業界には延々と残り続けている悪習です。そして、これをカムフラージュするのが「未公開物件」という言葉だともいえるでしょう。

 

また、専属専任媒介契約や専任媒介契約を結ぶとレインズに情報公開されてしまうため、買主が決まるまでは売主と正式に媒介契約を結ばないという抜け道を使う不動産会社もいます。正式な契約に基づく売却希望価格でもありませんから、ざっくりした値引き交渉を買主の前で見せ、お得感を演出することも可能になります(一般論ですよ、念のため)。

 

「未公開物件」といった言葉に惑わされず、不動産会社とは真摯にコミュニケーションを図り、希望に合った物件を上手に探すようにしていきましょう。

 

 

早坂 龍太(宅地建物取引士)
龍翔プランニング代表取締役。北海道大学法学部卒業。石油元売会社勤務を経て、北海道で不動産の賃貸管理、売買・賃貸仲介、プランニング・コンサルティングを行う。

 

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