先日お客様より、パワービルダー(建売住宅業者)が建築した木造建売住宅が「耐震等級3」なのに、このマンションはなぜ「耐震等級1」なのかとご質問をいただきました。耐震等級は1級よりも3級の方がレベルが上です。

 

地震が発生し避難をする若い女性

(写真はイメージです)

 

確かに、ペラペラに見える建売木造が「3級」なのに、強固に建築された大規模なマンションですら「1級」が圧倒的に多く、不思議な感じがします。これはひとえに、軽い建物の方が重い建物よりも耐震性がよいためです。重い方が地震に強そうですが、これは逆なんです。

 

耐震等級といっても初めて聞く方も多いでしょうから、頭から解説します。耐震等級は2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の中で定められた「住宅性能表示制度」に基づく評価基準です。「住宅性能表示制度」は、住宅の性能に関する基準を定めた制度で、建物の構造以外にも火災時の安全性や省エネ性能、維持管理のしやすさなどの評価基準があり、第三者機関が評価します。

 

具体的には、建物がどの程度の地震まで倒壊や崩壊に耐えられるのかを示すもの。レベルは1級、2級、3級で、数字が大きいほど高い耐震力があると評価されます。1級が建築基準法をクリアした、一般住宅の耐震性能としては十分なもの、2級が病院や学校など避難所となる建物に求められる耐震性、3級は消防署や警察署など防災の拠点となる建物の耐震性となります。

 

耐震等級1級は、震度6から7程度の地震に対して倒壊しない、震度5程度の地震に対して外壁や内壁に被害が出ない程度の強さを持つとされています。ただし、住み続けるためには大規模修繕が必要となることもあります。耐震等級2級は、その1.25倍、耐震等級3級は1.5倍の地震力に対抗できる耐震性とされ、一定の補修程度で住み続けられます。

 

国土交通省の「住宅性能表示制度の利用状況(2013年)」によると、新築の鉄骨造、鉄筋コンクリート造のマンションのうち、住宅性能表示制度を利用している割合は42.7%。マンションなどの共同住宅の耐震等級の取得状況をみると、耐震等級1級が87.1%、耐震等級2級が8.5%、耐震等級3級が1.2%、その他は免震構造などという状況です。

 

実に90%近くの新築マンションの耐震等級が最もレベルの低い1級となっているわけですが、意外に思われる方も多いと思います。

 

理由は大きく分けて2つあります。

 

まず、建築工法の問題があります。マンションの構造は、鉄筋コンクリート造(RC造)が最も一般的です。鉄筋コンクリート造でも地震の縦揺れに強い柱や梁による「ラーメン構造」と、壁によって地震の揺れを受ける「壁式構造」がありますが、耐震等級を重視して設計を考えると、柱を太くしなくてはいけません。

 

そうすると、壁を厚くする必要があり、窓や開口部が少なくなります。その結果、採光や通風、間取りが悪くなってしまい、住みやすい住宅でなくなる恐れがあります。デベロッパーは住みやすさを優先し、売れやすい物件にするために、耐震等級1級のマンションを多く造るのです。

 

2つめの理由として、建築コストへの配慮があります。マンションのような大規模な建築物で耐震性能を上げると、建設コストが莫大になります。柱や梁の大きさ、使用する鉄筋の量、壁量なども増えるために材料費が高くつき、施工にも時間がかかるからです。

 

マンションの建築費が上がり、販売価格も上昇するため、敬遠されているのです。

 

こうした理由で耐震等級1級のマンションが多くなるのですが、耐震等級が1級だからといって、地震に弱くて住むのに危ないというわけではないことは知っておいていただきたいと思います。

 

 

藤井英男(REDSエージェント、090-9815-3411、h.hujii@red-sys.jp)
新潟県出身。所有資格は宅地建物取引士、宅建マイスター、損害保険募集人資格、第二種電気工事士。東京都、川崎市、横浜市のほか、23区内城南地区と東急各沿線は特に精通している。借地権、相続など権利関係が複雑な不動産取引を数多くこなしている。
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