中古マンション市場というのは、何とも相場観がつかみにくい。実際にどれくらいで取引されているのか、という正確なデータがどこにもないからだ。

 

住宅市場

(写真はイメージです)

 

成約情報を登録するレインズが怪しい

 

比較的実態に近いのが、国土交通大臣指定の不動産流通機構である「レインズ」のデータであろう。不動産の仲介業者は企業規模にかかわらず、売却を依頼された物件情報をここに登録して他の仲介業者が買い手を探しやすくする義務を負う。さらにその物件の売買が成約した場合もその金額を登録する。

 

仲介業者がこのルールを真面目に守っているのであれば、中古マンションに限らず中古の住宅やビル、土地などあらゆる不動産取引の成約状況がレインズさえ見れば分かる、ということになる(一般人は見ることができないので、見たいときは知り合いの業者に頼むとよい)。しかし、不動産の仲介業者がレインズを利用して成約に至っても、その成約金額までも真面目に登録しているケースは少ないのが実態だ。

 

たとえば、2018年に首都圏では20万件以上の中古マンションが登録されたが、成約情報は約3.7万件にとどまっている。残りの16万件余りは売れなかったのか、ということになるが、もしそうだったら、中古マンション市場は昨年のうちに崩壊しているはずだ。

 

あるケースを見てみよう。数年前、今の局地バブルが盛り上がる寸前、城南エリアにある山手線の某駅から徒歩1分と徒歩2分の立地で2棟の新築タワーマンションが売り出された。当時としては目を剥くような価格設定。平均坪単価は600万円であった。

 

それがあっという間に完売してしまった。このツインタワーが完成したのが2017年。その前後から中古市場には大量の売り物件が出てきた。値上がり目的で購入した人が利益確定のために売り出したのである。売り出し価格は新築販売時の15~20%増し。私がレインズでそれを確認したのは、竣工の数か月後の時点だった。売り出し物件数は30を超えていた記憶がある。それがすべて売れたのかどうかは分からない。

 

今(2019年7月30日)、改めてレインズを見てみた。売り物件は11。価格はほとんどが坪単価700万円台。中には800万円台、900万円台もチラホラ見かける。一方、過去1年の成約件数は23物件。成約額の坪単価はほぼ600万円台。4物件が700万円台。800万円台も1件あるが500万円台が3物件もある。

 

買い手は値引きするまで動かない

 

この落差をどう考えればいいのだろう。ここ2年ほど中古マンションの流通市場を見ていて感じることだが、言ってみれば売り手と買い手が大きな溝をはさんでにらみ合っているような状態ではないか。その中で、価格的に妥協した売り手の物件から売買が成立していっている。つまり、買い手は我慢強く売り手が値引きするのを待っているのだ。

 

ただ、スーモやホームズなどのポータルサイトには、売り手側の売却希望価格しか表示されない。だから一般人の立場からすると、中古マンションの価格は表面的には値上がりしているように見える。しかし、レインズに成約が登録されている取引だけでも、明らかに落差がある。

 

前述の理由から推測すると、レインズに成約が登録される取引は全体の数分の1程度だろう。しかも、売り出し価格から大きく値引きした成約は、仲介業者が故意にレインズへ登録していないのではないか。その理由は、「市場を無駄に混乱させる」ことを避けるためだ。レインズに成約の登録をすると、仲介業者名も分かってしまうシステムでもある。

 

実は私自身も、中古マンションの売却にコミットする機会が多い。提携している仲介業者さんと連絡を取り合いながら成約までをフォローするのだ。ここ2年くらいのケースを見ていると、売り出し価格で成約することはまずない。売主さんはだいたいが強気で価格を設定したがる。物件によっては「このマンションを何が何でも欲しい」という買い手が現れ、言い値でも成約するので、「ではその価格で売り出しましょう」となる。しかし、たいていは値引き交渉が入ってくる。売主さんも当初は強気だが、そのうち「まあ多少なら」という感じで折り合おうとなさる。それで交渉がまとまれば無事に成約だ。

 

消費増税後、景気悪化で買い手不足は必至

 

市場の実態は以上のようになっている。今年の10月1日から消費税が10%に引き上げられることになっている。過去のケースで考えると、消費増税後は必ず個人消費が落ち込んで景気後退となる。

 

ただ一度、2014年に5%から8%になった直近の増税では、景気後退がごく短期間で済んだ。その年の10月31日に日本銀行の黒田東彦総裁が、後に「バズーカ2」と呼ばれる異次元金融緩和の第2弾を発表したからだ。これはまさに異次元な内容。世の中に出回るお金の量を数倍に増やすほか、基準金利はゼロに。さらに日銀が指数連動型上場投資信託(ETF)を通して株式まで購入するという、当時としては度肝を抜く内容だった。実際には、その直後から不動産市場に大量の資金が流入して、今の局地バブルを生じさせたのだ。

 

では、今回の10%への消費税引き上げについても、また同様の金融緩和が行われるのか。日本銀行はことあるごとにリップサービスで「さらなる金融緩和」を行うと唱えているが、それは不可能だ。金利はマイナスに深掘りするしかなく、マネタリーベースは膨らみ過ぎて資金需要はない。すでに日銀は日本の主要企業の上位株主になっている。

 

分かりやすく言うと、日本銀行には撃つべきバズーガの弾が残されていないのだ。だから、今回の10%への消費増税の後にやってくる個人消費の減退とそれに伴う景気後退に対しては、有効な金融政策は打てない。景気の自律回復を待つしかないのだ。

 

景気が後退すると、当然不動産の取引も少なくなる。中古マンション市場でいえば、買い手が一気にいなくなってしまう。景気が悪くなるとサラリーマンは給料が上がらず、ボーナスは減額される。そんな状態で新たにローンを組んでマンションを買おうという人が減るのは当然だ。

 

そうなるとこの2年少しの間、何とか保ってきた中古マンション市場の売り買いの均衡が崩れるのではないか。もし、将来売却する予定の物件を保有しているのなら、急ぐべきだろう。囲い込みをしない業者に依頼してレインズに登録してもらい、価格交渉にも柔軟に対応して早めに成約してしまうのが良いと思う。

 

今の均衡状態の危うさを見ていると、崩れたときに一波乱くらいありそうだ。

 

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昭和、平成時代を経て日本のマンションは大きな転換期を迎えています。人生のうちで大きな買い物となるマンション選びにおいては、常に最善の選択をしたいものですが、そのためには変化に即して考え方や行動を変えていかなければなりません。長年にわたりマンションを取り巻くさまざまな業界の最前線をウオッチしてきた住宅ジャーナリスト、榊淳司氏がこれまでの常識はどの時点からどのように変わってきたのか、そしてこれからどう変わっていくのか、マンション購入を考えているみなさまにとって有益かつ目からウロコのお話満載で語っていきます。

 

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榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『限界のタワーマンション』(集英社新書)、『すべてのマンションは廃墟になる』『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

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