分譲マンションというのは、バカにならない維持費がかかる。その主なものは管理費と修繕積立金だ。加えて固定資産税や都市計画税。このうち、ここ2年ほどで目に見えて上昇傾向にあるのが管理費だ。

 

マンション前打ち合わせ

(写真はイメージです)

 

管理人も最近は人手不足

 

管理費は、マンションでの安全で快適な日常生活を維持するためさまざまな用途で使われる費用のこと。ほとんどのマンションでは日常の管理業務のすべてを管理会社に業務委託している。平たく言えば、区分所有者が支払っている管理費のほとんどは、管理会社に支払われているのだ。

 

管理会社が請け負っている管理業務にはどんなものがあるのか?

 

まず、何よりも管理スタッフの派遣である。100戸程度までのマンションなら1名で足りるが、200戸以上になると複数の管理スタッフを必要とする。600戸クラスになると10名程度が常駐しているケースもある。

 

近年、人手不足はマンション管理業界にも及んでいる。マンションの管理員といえば、だいたいが60歳以上のイメージだ。会社を定年退職した後で、再就職しているのが定番のケース。それで70歳くらいまでを管理員として就業する。ただ、最近では管理会社側の募集に対してなかなか人が集まらない。あまりに人手不足に陥ったので、定年を75歳まで延ばして「元気な人はどうぞ働いてください」という会社も多くなった。

 

また、管理員が集まらないので新たな業務委託契約を受けられない管理会社も出てきている。人員不足を逆手にとって、トラブルの多い管理組合とは期間満了の際に「契約期間は延長しません」と通告するケースも珍しくなくなった。

 

管理費・修繕積立金がここ数年でインフレ

 

こうした人手不足は当然コストに跳ね返ってくる。まず、管理員の賃金が上昇する。従来、管理員の給料は、ほぼ最低賃金水準だった。しかし、最近は募集を行っても思うように集まらないので、ジワジワと上昇している。募集費用や面接などの業務負担も管理会社の経営を圧迫し始めた。当然、それらのコストアップは管理組合から得られる業務委託報酬の値上げへとつながっていく。

 

もっとも、管理組合との間で結ばれる業務受託契約の改定は、双方の同意が必要。報酬は思うようには上げられない場合も多い。そこで管理会社は、困難を伴う既存契約先との値上げ交渉と並行しながら、新築マンションの管理業務料金値上げを目論んだようだ。利益をしっかり確保するために、以前よりも高水準な料金の設定を求めるようになったのだ。

 

多くの管理会社はマンションデベロッパーの子会社である。親会社にとってマンション管理の子会社は、不況期でも変わらない利益を稼いでくれる存在。だから、子会社の経営が行き詰るような料金の設定はできない。その結果、新築マンションの管理費や修繕積立金はここ2年ほどで目に見えて値上がりしているのだ。

 

4年ほど前まで、新築マンションの管理費は㎡単価200円、修繕積立金は100円でスタートすることが多かった。修繕積立金はこの水準では将来不足することが明々白々なので、築5年目あたりから値上がりを始めて、築15年あたりで当初の2.5倍まで引き上げる長期修繕計画が策定されるのが、平均的な手法だった。

 

ところが、最近の新築マンションは当初から管理費の㎡単価を250円、修繕積立金を150円の計400円前後になっているケースがほとんどになってきた。それでも、修繕積立金は将来にわたって値上げされる計画だ。

 

少し前まで東京の湾岸埋立地エリアでは、プールや大浴場などを備えた豪華施設がウリの新築タワーマンションが売り出されるのをよく見かけた。そういった豪華施設系のタワマンでは管理費と修繕積立金の合計が、㎡単価600円超というのも当たり前に思えたものだ。

 

今は都心の好立地に開発された、プールも大浴場もない普通のタワーマンションの管理費と修繕積立金の合計が、㎡単価550円前後だったりする。つまり、ここ2~3年で管理費や修繕積立金は2割以上のインフレになっているのだ。その原因は、おそらく人手不足であろう。管理費は管理スタッフの人件費高騰。修繕積立金は建築現場の人手不足による工事費の値上がりが響いているはずだ。

 

人手不足の原因は、少子高齢化と人口減。それを今は外国人労働者の投入で補おうとしているが、十分ではなさそうだ。また管理スタッフなどは日本語のコミュニケーション能力も求められるので、そうカンタンに外国人には代替できない。
ということは、この管理費や修繕積立金の値上がりは今後も続くということだ。つまり、区分所有者の所有コスト負担増へとつながる。

 

所有コスト月6万はかなりの家計負担

 

マンションを所有し続けるためには、管理費等の他に租税負担がある。東京の場合だったら固定資産税と都市計画税のダブルであることがほとんど。これは物件によって差が出るが、山手線内の新築マンションだったら月額換算で㎡単価300円前後ではなかろうか。これに管理費や修繕積立金の㎡単価600円、さらに自転車置場使用料とかの雑費系が加わると、維持所有するために月額コストは㎡あたり1,000円を超えている可能性もある。
新築当初を低額設定でスタートする修繕積立金は5~7年先に値上げとなる。その第1回の値上がり後に、㎡あたり1,000円を超えてしまうケースなら多々ありそうだ。

 

㎡単価1,000円となると、60㎡の住戸で月額6万円。近くにある木造アパートの月額賃料と同レベルになるのだろうか。10年、20年前なら管理費や修繕積立金の支払いは「月3万円以内」という感覚だった。今もこれからも、まったく無視できないレベル。家計負担にも重くのしかかる。

 

ところが、そういった負担増は周辺エリアの賃貸マンションの相場には、あまり影響を与えない。なぜなら賃貸専用のマンションの経営は、そういった管理スタッフの人手不足などにはほとんど影響されない。決まった管理スタッフが常駐しているケースもほとんどない。ゴミ出しや清掃といった業務は、賃貸オーナーがそれぞれ専門業者に直接依頼している。つまり、賃貸専用のマンションは分譲ほど細やかに管理サービスを提供していないのだ。そういう負担をできるだけ少なくして、賃料を抑え気味に設定すると入居率も高くなる。だから、賃料相場は人手不足にはさほど影響されない。

 

ここに来て、分譲マンションという住形態のハイコスト化が鮮明になってきた。60㎡の新築マンションを購入して、年間72万円の維持コストを35年払い続けると、それだけで2,520万円だ。しかも、住宅ローンを完済しても月に6万円の支出は継続する。そういった現実を目の当たりにすると、一般消費者は35年ローンを組んで新築分譲マンションを購入することに、疑問を抱き始めるのではないか。

 

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昭和、平成時代を経て日本のマンションは大きな転換期を迎えています。人生のうちで大きな買い物となるマンション選びにおいては、常に最善の選択をしたいものですが、そのためには変化に即して考え方や行動を変えていかなければなりません。長年にわたりマンションを取り巻くさまざまな業界の最前線をウオッチしてきた住宅ジャーナリスト、榊淳司氏がこれまでの常識はどの時点からどのように変わってきたのか、そしてこれからどう変わっていくのか、マンション購入を考えているみなさまにとって有益かつ目からウロコのお話満載で語っていきます。

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榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『すべてのマンションは廃墟になる』『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

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