首都圏における新築マンションの販売が大きく減少し、在庫を抱えるデベロッパーも増えています。販売不振が続くとデベロッパーの経営が苦しくなって値下がりしそうなものですが、新築マンションの価格は高止まっており、下がる気配は見えません。ただ国内の経済環境の変化によっては、まもなく価格は下がるという意見もあります。それを期待して待っているほうがいいのか、とりわけ東京五輪の選手村跡地に建設される話題のマンション群「HARUMI FLAG」に手を出してもいいのか。それとも値が張る新築はあきらめて金利が低いうちに中古マンションを買ってしまった方がいいのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏に語っていただきました。

 

(中)より続く

 

(取材・構成 不動産のリアル編集部)

 

晴海埠頭 選手村工事

(写真はイメージです)

 

もう整ってしまった住環境。今後は家に困らない時代が来る

 

――人口が少なくなって、実需は減ってきました

 

牧野 メディアは「空き家だらけになって、家が余っている時代」って言いますけども、たしかに、家ってもう整っちゃったんです。整っちゃったからこそ、僕はこれから中古流通マーケットの大チャンスだと思ってます。日本の不動産マーケットはこれまで、新築が85%で残りが中古でした。でも実需が減って「新築はもういらない」となったら、新築の供給能力は小さくなってきます。そうすると今度は、既存住宅の中の良いものがどんどん流通していきます。団塊の世代がどんどん退場して相続が発生していくと、団塊の世代より上の世代が持っていた都心部の優良な立地の住宅がほとんど出てきます。そうすると、なにも新築を買う必要はない。住宅はいくらでもあるんだから、これから20代30代の方々は、家という意味ではあまり困らずに済むのではないかなと思っています。

 

――社会保障の面では厳しくなるばかりの若い世代にも、住宅面ではそういう恩恵があると

 

牧野 これまでフラット35とかで定年まで住宅ローンを組んで、さらに退職金まであてて、なんて資金計画が普通でしたが、あと15年くらいたったら「なにやってたの?」と言われる時代がくると思います。団塊の世代以上の方は、借金して買っても時間がたつほど価値が高まり高く売れるので、ものすごい得だった。僕の親類が持っている横浜の駅近くのマンションは、昭和44年築で当時800万円くらいで買ったそうですが、今のマーケットだと3000万円くらいにはなります。賃貸に出してもちゃんと借り手がつきます。これを買った親類は、投資ではなくて住むために買ったものですが、子孫にいいものを残してますよね。

 

HARUMI FLAGは美田にならない

 

牧野 今、HARUMI FLAGなど高値のマンションを買った人が子孫に美田を残せるかというと、相当厳しいでしょうね。それに人生の給料のほとんどをつぎ込んで、何千万円も投資をして、それで20年後に本当にいい資産が残っているかというと、疑問ですよね。23区のいい場所に団塊の世代以上の方が残された家はマーケットでもいい評価を受けています。ニュータウンに住まなくても、都心部の優良な中古住宅を借りる環境が整っています。住宅に悩まなくていいので、これからの人は幸せだと思います。

 

――マンションを買うにしても、中古を買い換えていくと

 

牧野 そのとおりです。僕はお客様にはマンションを10年で買い換えていくよう言っています。マンションは長く持つものではありません。便利だし、いろんな所に住めるというメリットを最大限に生かすべきです。人生かけて住むための新築を買っちゃうなんてもったいない。もっと柔軟に考えてほしいですね。

 

――30代の人で「どうしても新築を買いたい」という人がいたら、どのようなアドバイスをしますか

 

牧野 まず、なぜ新築に住みたいかを確認したらいいと思います。新築はきれいですし設備も最新なので、住みたいというお気持ちをうかがった上で、新築マンションには開発者の利益がどっかり乗っていることを説明して差し上げて、経済的に考えるとあんまり意味はないことをお伝えするのです。また、新築マンションというのは住んでみないと隣人が誰かも分からなければ、コミュニティが本当にうまく行くか分からないことを教えてあげるとよいでしょう。中古だったら調べれば建物の不具合や住民コミュニティの様子も全部分かるということもお伝えし、その上で判断してもらうということにするほうが、良心的と言えるでしょう。

 

僕の見解では、新築をあえて買うっていう発想は、日本人でもだんだん希薄になっていくのではないでしょうか。今シェアオフィスやシェアハウスなどが流行し、定着してきました。車だってシェアリングが増えていて「ピカピカの新車じゃなければ嫌だ」という人は少数派になってきています。新築マンションを買う効用や満足度っていうのは世の中ではそんなに評価されなくなるでしょう。時代のトレンドでしょうね。

 

「マンション下駄履き論」で幸せな人生を

 

――「新築マンションを買いたい」と不動産会社にくる人には、きちんとデメリットを説明してさしあげる方が良心的だと

 

牧野 デベロッパーが夢を売っているだけですから。よく「マンションポエム」なんて言いますけど、あのポエムにいつまで引っかかってるんだろうって思います。

 

――現場では新築志向の根強さを感じます。旦那様が迷っていても、奥様が「やっぱり新築はいいわよ」 というと、そこで5000万から6000万円の物件を35年のローンを組むという決断が出てしまっています

 

牧野 不動産は借金をして買うわけですから、普通の買い物と違うんです。いかに大変なことであるかっていうのをあまり考えないことは深刻な問題ですよ。

 

しかも、今の自分の境遇がずっと続くと思っている人がほとんどです。30年後はだれも見通せないのに、ファイナンスを組んで投資をしているわけですよ。それでもいいんですが、きちんとリスクを考えないといけません。ところが見通せない30年間のリスクを無視して、今の現状が30年間続くという仮定のもとで買うということは、賢明な決断といえるでしょうか。

 

――新築を買わせるために、売る側もさまざまな宣伝文句を用意していることもあると思います。「減税になる」とか「金利が低いので金額が高いほどメリット」とか

 

牧野 たしかに減税はあるけども、もうかるわけではないですよね。そこも「まやかし」なんです。そもそも買わなかったら税金も金利も払わなくてすむでしょう。

 

――「資産価値が落ちず、ずっと値上がりしていくものを選べば新築がいい」というのもあります

 

牧野 マンションで資産性が唯一あるのはブランド立地のマンションだけです。たとえば表参道にあるマンションは古くなると「ヴィンテージ」って言ってくれます。千葉とか埼玉にあれば単なるボロアパートですが、表参道にあるからヴィンテージと呼ばれる。民間初の分譲マンションと言われ、1956(昭和31)年に完成した「四谷コーポラス」も築60年超になりますが、当時の購入者が転売することなく住民の良好な人間関係と管理組合活動が維持されていてヴィンテージと呼ばれました。2017年に建て替えが始まり、この8月に完成しますが、ああいう立地のマンションなら資産性を語っていいと思います。

 

――とにかくマンションに資産性をあまり考えない方がいいということでしょうか

 

牧野 マンションは「生活の下駄」だと思っています。下駄は緒が切れたり足がすり減ったりしたら取り替えますよね。あれと同じ感覚で考えてほしい。下駄を1000円で買うのか、それとも1万円で買うのかと言うことです。古くなったら下駄はどんどん履き替えていけばいいというのが僕の考え。なけなしのお金で買う場合、1000円の方がいいでしょう。下駄を履き替えるようにどんどん中古を買い換えていけばいいじゃないですか。それぞれの人生のステージに応じて履く下駄の大きさや機能って違うはずなんですよね。

 

最初に買った下駄を大事にボロボロになるまで履くのもいいですよ。ただ、その下駄は他人に売れるかっていったら売れにくい。それだったら「自分の好きな下駄を好きな時に好きなデザイン、大きさのものにそれぞれの人生の考え方や個性に応じて気軽に履き替えてください」というのが「マンション下駄履き論」です。

 

HARUMI FLAGも武蔵小杉も結局ニュータウンと同じ運命

 

牧野 HARUMI FLAGの話に戻りますが、関係者に聞いたら、販売する人は武蔵小杉のケースを比較研究しているらしいですね。僕に言わせればどっちもどっちですけど、武蔵小杉の方がまだましですよ。塩害は晴海より少ないだろうし、何といってもちゃんと鉄道がある。でも人の行動はみんな一緒ですから、売りに出るとなるとどこでもいっせいに売りに出ます。そうなると希少性は出ないので、高値はつきませんよ。結局はどっちもニュータウンと同じ運命をたどると思います。

 

――あえてHARUMI FLAGのメリットを挙げるとすれば

 

牧野 リタイアして、海風を感じながら過ごしたいというリタイア組にはいいかもしれませんね。食事や美術館などに行く用事で都心にすぐ出られるのもいいでしょう。でも管理費が高いですね。駐車場まで入れると7、8万円です。車なしではちょっと怖そうですね。それなのに駐車場が6割しかない。 これはちょっときついなと思います。

 

――結局デメリットが多いということですね(笑)。ありがとうございました。

 

=(完)

 

 

牧野知弘氏(オラガ総研株式会社 代表取締役)
東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年、三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。2009年、株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年にオラガ総研株式会社を設立、代表取締役に就任する。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(ともに文春新書)、『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(中公新書ラクレ)などがある。

 

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