首都圏における新築マンションの販売が大きく減少し、在庫を抱えるデベロッパーも増えています。販売不振が続くとデベロッパーの経営が苦しくなって値下がりしそうなものですが、新築マンションの価格は高止まっており、下がる気配は見えません。ただ国内の経済環境の変化によっては、まもなく価格は下がるという意見もあります。それを期待して待っているほうがいいのか、とりわけ東京五輪の選手村跡地に建設される話題のマンション群「HARUMI FLAG」に手を出してもいいのか。それとも値が張る新築はあきらめて金利が低いうちに中古マンションを買ってしまった方がいいのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏に語っていただきました。

 

(上)より続く

 

(取材・構成 不動産のリアル編集部)

 

オリンピック村

(写真はイメージです)

 

プロには見えてきた、値崩れの兆候とは

 

――これからどんなほころびが

 

牧野 まず、金融環境です。金融環境は、マンション業界や不動産業界の思惑だけでは動いてくれません。地政学的なリスク、政治のリスク、世界貿易のリスクが交錯したところでガンガン動きます。これに対して多くの企業が無力です。これで金利が上がったり、10月に消費増税になって消費が落ち込むと環境は変わります。

 

さらに、消費が落ち込むと物を売っている会社の業績が悪くなり、業績悪化が進むとリストラが始まる。人員よりも先にリストラされるのはオフィス面積です。これはいちばん負担の大きい固定費ですから。賃料を下げるか面積を縮めるかという行動は、いっせいに始まっちゃうんです。リーマンショックのように世の中全体がダウンサイジングトレンドに入ると、オフィス業界は景気の波にものすごく翻弄されます。そういった意味ではオフィスは下がるときは大きく下がります。オフィスの儲けで補ってきたデベロッパーでも業績が苦しくなると、我慢比べの様相は変わってくるでしょう。

 

――何か変化を感じていますか

 

牧野 定点観測をしていますが、もうオフィスマーケットはピークアウトしてますね。徐々に徐々に空室が増えています。とても低いレベルで、まだ絶好調という表現でいいと思いますが。私は東京中のビルをほとんど知っていますが、この2、3カ月でみると「あの物件が出てきたのか」と驚くことがあります。けっこう大きな有名ビルのワンフロア300坪とか400坪とか、今年の秋くらいに契約開始のフロアがポーンと出てきていますので、「ああ、始まったかな」と。

 

その理由は、一部で言われているような供給過剰もあります。今、ビルの建て替えがどんどん進んでいます。既存の建物を壊すと、既存テナントが出て行くことになり、別のビルの空いているフロアに入らざるをえない。すると空室率ってどんどん低くなります。新しいビルが完成すればテナントは元のビルに戻ってきます。今はこれがどんどん繰り返されている。

 

コワーキングはデベのタコ足食い

 

牧野 もうひとつが働き方の変化です。「WeWork」のようなコワーキングが大きな需要として登場しています。それによってオフィスマーケットはものすごく大変になりますよ。あるデベロッパーの役員が新聞で「コワーキングに代表されるようなサテライトオフィスが新しいテナント需要として登場したんだ」と言っていましたが、僕はそれはちょっと違うなと思っています。

 

WeWorkでも、三井がやっている「ワークスタイリング」でも、会員の9割が大企業です。大企業の多くは社内に一人ひとつの机が与えられているのではなく、フリーアドレスを採用しています。小さなスペースで席を奪い合い、その他はもう全部外に出て、コワーキングを利用している。今日は大手町には出ないで自宅近辺の船橋のコワーキングで働きパソコンで報告だけして終わる、という働き方を採用する企業がすごい勢いで増えています。

 

そうなればなるほど、大手町の本社はヘッドクォーターだけでいい。営業は全部コワーキングで、必要な時だけコーキングで会議をするなり、あるいはパソコンで仕事をしなさいっていうことになると、実はWeWorkに代表されるコワーキングは、デベロッパーにとっては完全なタコ足食いとなります。

 

社内の広いスペースが不要となれば、確実にこれからオフィス需要は縮小に向かい、これに合わせて東京オリンピック前に来るであろう景気の低下が始まると、縮小トレンドは一気に加速します。すでにオフィスが遊んでいる企業も多く、空いたところにバランスボールなんかがあるくつろぎスペースを設置して社員にごますってますけども、景気が悪くなったら絶対すぐに取り外しますよ。 僕も小さい会社の社長をやってますけど当然の発想で、世のため人のためといって膨大な固定費をかける民間の企業はないです。

 

ただ外部環境が厳しい状況に今のところなっていないので、これでなんとなくいい時代ですよね、オフィスは、ということです。 ただ、この状況がオリンピック後も続いているかっていうと疑問ですね。

 

HARUMI FLAGはヤバすぎる、これだけの理由

 

――新築マンションといえば、東京五輪の選手村跡地につくられる「HARUMI FLAG」が話題となっています

 

牧野 最近HARUMI FLAGの取材が多くなってきたので、改めてメリットとデメリットを整理してみました。ちゃんと考えてみてよい点、懸念される点をまとめましたが、よい点がほとんどないんです。

 

――アドレスは中央区なのに場所が悪く、主要な足がバスだと

 

牧野 連結バスに乗れば都心まで10分で着きますけど、連結バスって定員が130人ぐらいで電車の1両分もないですよ。それで5000戸もあったら通勤時は大変なことになります。何割かの人は駅まで歩くんでしょうが、どう見たってマンション住戸から駅まで20分以上かかりますよ。

 

――一般の物件よりも少し割安というメリットに引かれる人もいるのでは?

 

牧野 「2割くらい安い」という説もあります。しかし、これがいけません。何と比較して安いのか。まず、比較している物件は「駅徒歩20分」の物件ですか?ということ。月島や晴海の駅近くにある新築物件を持ってきてそれより2割安だと、立地が悪いのだから割安なのは当たり前ですよ。デベロッパーがどうしても売らなければならないという気持ちはとてもよく理解できますが、それにやすやすと引っかかってはまずいですよね。

 

次に、最も肝心なことですが、HARUMI FLAGの物件の引き渡しは4年後になることです。4年間のリスクをどうするんですか? 住宅ローンを組むのも4年後になりますが、4年後の金利を知っている人はだれもいない。分かっているのは、今よりも大幅に下がることだけは絶対にないということです。さらに、4年後の自分の家庭のリスクも踏まえる必要があります。家族の人数が変わっているかもしれないし、あまり考えたくないことですが離婚しているかもしれません。4年後のリスクは大きいです。

 

大金持ちでいっぱい資産を持っているなら「ひょっとしたら上がるかもしれないから買っておくか」っていうのもアリでしょう。ただ、4年間も塩漬けになってしまうような投資商品は普通の投資家は買いません。ということは投資需要ではなく、実需でやらなければならない。実需で買いにやってくる「羊さん」たちはこうしたリスクに耐えられませんよ。

 

不動産は右肩上がりという悪しきDNA

 

――「羊さん」たちがそんな大きなリスクを乗り越えてくる動機とは?

 

牧野 昔は不動産と言えば一方的に右肩上がりするだけだったので、早く手に入れた人の勝ちという成功体験がありました。今の世代の考え方はもう絶対に違っていると僕は信じてるんですが、日本人にはDNAとして残っていると思われますね。だから未だにワンルームマンションやシェアハウスで詐欺のような事件に相変わらず引っかかってしまう。

 

日常の買い物にはあれだけ慎重になるのに、住宅になるとちょっと目がくらんだり、高額すぎて頭が真っ白になってしまうのはとても不思議ですね。やはりDNAが残っているんでしょう。人生のステージで住宅って必要なときはありますから、買うなとは言いません。でも絶対にもうかるとは考えない方がいいです。

 

そんなに住宅不足の時代ではないんで、買う側がもうちょっと大人になって、余裕を持ったほうがいいでしょう。余裕を持てば持つほど、さっきの「我慢比べ」の理論になるんです。デベロッパーは価格を高止まりさせる我慢比べをしているのですが、いずれデベロッパー側が我慢しきれなくなります。この理屈は不動産に限らずあらゆる商売に共通しています。スーパーで生鮮食品が閉店間際に安売りするのと同じです。

 

(下)に続く

 

 

牧野知弘氏(オラガ総研株式会社 代表取締役)
東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年、三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年、日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。2009年、株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年にオラガ総研株式会社を設立、代表取締役に就任する。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(ともに文春新書)、『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』(中公新書ラクレ)などがある。

 

●ご存じですか? 不動産売買の仲介手数料はすべて割引!さらには無料になることを

東証一部上場企業グループの不動産流通システム(REDS)は、不動産売買の仲介手数料をすべて割引、さらには最大無料としつつも、お客様からの満足度の高いサービスを実現しています。

広告宣伝費などのコストを徹底的にカットしつつ、資質と経験を兼ね備えたベテランスタッフの運営でサービスの質は高め、お客様に利益を還元しています。

業界の常識を覆すREDSの新たなビジネスモデルは、「ワールドビジネスサテライト」「とくダネ!」などのテレビ番組をはじめ、各メディアでも紹介されています。

平日・土日祝日も営業中(10:00-19:00)です。お気軽にお問い合わせください。フリーコールはこちら0800-100-6633


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る