新卒の就職戦線は売り手市場だという。買い手市場よりもいいことだと思う。

 

日本は2000年前後、信じられないほどの就職難だった。あの時代に就職活動を経験した人々を俗に「ロスジェネ世代」と呼ぶ。実際、正社員として採用された人は多くなかったはずだ。年代別の所得水準を表す統計数字上でも、今の40代前半は極端に低いようだ。先日、政府もこれに対する救済策を検討する、という方針を決めたようだ。

 

そういう時代に比べると、就活生の選択肢が広がっている今はいい時代ではないか。しかし、こういう時代だからこそ困る業種もある。他ならぬ不動産業界だ。

 

住宅を内見するシニア夫婦と不動産会社のビジネスウーマン

(写真はイメージです)

 

好転しない不動産業界へのイメージ

 

大学生の就職先人気ランキングを見ると、上位には不動産業の会社はまず入っていない。やっと30位以内に三菱地所や三井不動産が顔を出しているのをたまに見かける程度。つまり、不動産関係というのは大学生には人気がない業種である。

 

なぜか? 何よりもイメージが悪いのだろう。「どちらにお勤めですか?」と聞かれて「●●不動産です」と答えるのを、少しためらう人も多いはずだ。聞いた方も、そう言われると内心(この人、不動産屋か・・)と思うだろう。

 

不動産屋には「口がうまいけど誠意がない」、あるいは「油断するとだまされる」というイメージを抱く人が多いのも事実。特に一般の方々が接する仲介業者は、たとえ大手財閥系であっても「囲い込み」や「両手仲介」など「嘘つき」だと思われても仕方がない日常業務を行っている。

 

しかも、ちょっと調べると分かる程度の嘘やだまし方であるから、それに気づく人も多い。結果「不動産屋は概して不誠実だ」と考えるようになる。そういった感覚が社会に浸透してしまっているから、不動産業のイメージはいつまでも好転しない。

 

仲介業での接客こそ仕事の醍醐味のはずなのに

 

私は昭和の時代から30年以上も新築マンションの広告を作ってきた。その間、強烈に感じていたことは「不動産業界は人材が薄い」ということだ。特に、エンドさんと呼ぶ一般のお客と接する販売現場や仲介業では常に人材が不足しているという印象を持っている。不足というのは人の数ではなく、その質だ。

 

彼らが相手をするエンドさんはピンキリだ。深く考えずに何千万円もの物件を買う人もいれば、何十物件も見て回った末に、結局、決められないという人もいる。一方で、契約内容や管理面、あるいは建築施工の技術面や設計について玄人はだしの知識を有する人もいる。特にマンションというカテゴリーは、どういうわけか日本人の心を惑わす何かがあるようだ。それこそ私などの知識を凌駕するようなオタク的な愛好家が多い。

 

エンドに接するというのは、時にはそういう方を相手に営業を行うということでもある。スムーズに契約できることもあれば、さんざん手間ひまかけても成約に結びつかないケースもある。だから、大手不動産会社になればなるほどエリート社員は現場から離れる。財閥系の不動産会社だと、エンドに対する接客は入社2、3年までに研修で経験する程度だろう。不動産業界では、エンド相手の接客は「汚れ仕事」のように扱われている。自然、そこに質の高い社員は集まらないのだ。

 

しかし、私はエンド相手の接客にこそ、不動産業界で働く醍醐味があると思う。

 

その理由は、相手がさまざまな属性を持った人間だからである。世の中で最も面白いことは生身の人間と接して、それぞれの人間模様や人生観、生き方などに触れられることではないだろうか。そして、不動産の売買というのはほとんどの人間にとって人生の大きなイベントになっているはずだ。エンドさんにとっての大きなイベントにかかわり、導き、丁寧に仕上げてあげる・・・こういう仕事が面白くないはずがない、と私は考えている。

 

私は不動産屋ではない。ただ、月に1度くらいのペースでエンドさんを相手にした「売却相談会」というものを行っている。そこで不動産の売却に関するご相談を承り、場合によっては提携している不動産業者さんに仲介を依頼してもらって、売却活動に入る。私はその様子を見守っていることがほとんどだが、ごくたまに私が仲介業者のようにお客様を案内することもある。私はそういったことが嫌いではない。むしろ毎回楽しんでいる。

 

エンドさんからちょっとした広さの土地を売却していただいて、提携業者と開発案件を手掛けることもある。そういう場合は「私も接客に行きましょうか」というのだが、「榊さんは顔が知られているからよろしくないのでは」と、やんわり断られたりする。やや残念。

 

就活生の中には「営業をやりたい」と考えている人も多い。営業、というのは何かを売るのが仕事だ。そしてエンドさんを相手に最も高額な商品を売るのが不動産営業。どうしてその不動産営業に就活生が魅力を感じないかというと、大手財閥系でもエンドさんをだましている業界体質と、業界の体育会系の体質を持っていることが原因だ。つまり、業界の2つの体質がもつイメージが悪すぎるのだ。

 

日本独特の業界悪弊を法律で禁止せよ

 

アメリカでは「医者と弁護士と不動産屋は友達に持っておくべきだ」と言われるように、不動産業者の社会的地位は低くない。同じ種類の商品を扱っているのに、なぜ日本とアメリカではイメージがこれほど違うのか。

 

平成時代までに積み重なってきたこれまでの悪いイメージを脱却するためには、不動産業界はまず、仲介業における「囲い込み」や「両手仲介」という日本独特の悪弊を改めるべきだろう。業界の自浄努力はもはや期待できないから、法律で明解に禁止にすべきだ。

 

ただ、それだけだと仲介の業界を圧迫する一方なので、「手数料の自由化」と「物件案内の有料化」という規制緩和を同時に行えばいい。このことについて別の機会に詳しく論じたい。

 

誇り高く、知的で誠実な人材が集う業界を目指せ

 

毎年7月から12月にかけては不動産業者の国家資格である宅地建物取引士の試験シーズンである。7月は申し込みで10月が試験、発表は12月。はっきり言って、宅建は取りやすい国家資格のひとつである。財閥系大手の不動産会社に入社するような人は、出身学部を問わずほぼ1回で合格する。それが業界を底辺に向かって下るにつれて、あの程度の試験に四苦八苦している人間が多くなる。

 

先日、ネットを見ていたらある若手の不動産業界人が「自分は頭が悪いから不動産屋になったのだ。だから宅建に受からなくても当たり前ですよ」と開き直っていた。いろいろと考えさせられた。家賃が数万円の賃貸住宅を仲介するのならよいのだが、数千万円の物件を売買する場合には、そこまで居直る方には扱ってほしくない。私でなくてもこうした感覚を持つ人は多いはずだ。

 

また、リーマンショック直後の不況期には「不動産業界は日本社会のセーフティネットだ。どんな業界からやってきてもすぐに仕事が覚えられるし、やる気さえあれば結果も出せる」という意味の発言も見かけた。これにも素直には頷けない。

 

不動産業界はもう少し誇り高く、知的で、誠実さを基本とした人材が集うべきである。平成までは悪いイメージがつきすぎてしまったが、令和の時代には変わっていかないといけない。まず何よりも、今の仲介業の悪弊を断ち切るべきだ。

 

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昭和、平成時代を経て日本のマンションは大きな転換期を迎えています。人生のうちで大きな買い物となるマンション選びにおいては、常に最善の選択をしたいものですが、そのためには変化に即して考え方や行動を変えていかなければなりません。長年にわたりマンションを取り巻くさまざまな業界の最前線をウオッチしてきた住宅ジャーナリスト、榊淳司氏がこれまでの常識はどの時点からどのように変わってきたのか、そしてこれからどう変わっていくのか、マンション購入を考えているみなさまにとって有益かつ目からウロコのお話満載で語っていきます。

 

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榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『すべてのマンションは廃墟になる』『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

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