私は東京23区と川崎市で開発分譲される新築マンションの現地を、ほぼすべて見て回っている。多分、年間で500カ所程度は調査しているはずだ。およそ新築マンションが開発されるような場所というのは、さほど不便ではない。もちろん、都心方面への通勤が可能な場所だ。

 

そういった場所で、最近やたらと目につくのがシャッターを下ろした小規模店舗。それも閉店してから優に10年以上と思われる店舗が多い。中には20年以上と目されるものもある。そういう店舗は、概して2階が住宅として使われていたりする。外から眺めると、まだ人が住んでいるのかどうかおおよその見当が付く。場所にもよるが、半分以上は空き家だと見なせる。

 

シャッター街

(写真はイメージです)

 

平成期に壊滅状態に追いやられた小規模店舗

 

思えば、平成の世は小規模店舗にとって「暗く沈みゆく時代」だった。平成の前半は、新たに進出してきた大規模な流通店舗との厳しい戦いが強いられた。家電や家具、衣類は大型の専門店が郊外のロードサイドに次々と誕生。人々の足は商店街ではなくそちらに向かった。

 

後半は、ネット通販(イーコマース)という難敵が現れた。いずれも、小規模資本の個人商店が勝てる相手ではない。結果は、今のシャッター商店街となって残酷なまでに表れている。

 

そういったシャッター小規模店舗は、不動産としてどうなのだろうか? 残念ながら、よほど駅に近い場所でないと資産価値が評価できないはずだ。その理由は、何よりも土地の狭さであろう。

 

敷地が150坪以上あれば、何とかマンションが開発できる。現に、昭和時代には「○○ストア」といった具合にいくつもの個人商店をまとめていたような旧店舗は、マンションに建て替わっているケースがみられる。たとえば品川区の「武蔵小山」では、駅前の土地をまとめることができたので2本の巨大なタワーマンションに生まれ変わろうとしている。

 

しかし、1店舗で10坪前後、あるいは20坪までの敷地は、どうにも使いようがない。そういった小規模店舗は、そのほとんどが昭和時代に開店したものだろう。

 

相続してなお持て余される小規模店舗

 

かつて、そういった小規模店舗を営んできた人は、世代的にはほぼ60代以上ではないかと推定できる。私は現在57歳だが、同世代で親の商売を継いでいたのはごく少数だった。特に大学まで進学した連中は、卒業後にはほぼサラリーマンになっていた。昭和が終わろうとしている時期に学校を卒業した私の世代はすでに、何となく小規模店舗の未来は明るくないと感じとっていたのだ。

 

シャッターが下ろされたままのそういった小規模店舗の所有者は、現状で高齢化しているか、もしくは相続が発生しているのではなかろうか。相続するのは多分、ほとんどが私よりも若い世代だ。はっきり言って、20年も前に廃業した小さな店舗を相続しても使いようがない。家族で住むには狭すぎる。建て直すにはお金がかかる。建て直しても狭さはさして変わらない。

 

売却しようにも買い手を見つけるのは容易ではない。何といっても使い道がなさそうな不動産なのである。

 

その場所にまだ人通りがあるのなら、個人商店としての需要はあるだろう。今も飲食、美容・理容、医療系の分野なら個人商店でも生きる道はある。しかし、すでに店舗を開くには廃れすぎている場所も多い。ほとんどそうだと言ってもいいだろう。

 

そういった場所のシャッター小規模店舗はどうすればいいのか? その店舗には何の利用価値がなくとも、毎年固定資産税を払わなければならない。よくいうところの「負」動産である。相続した人はタダでも手放したいだろう。しかしタダでさえもらってくれる人は現れないケースがほとんどだ。

 

小規模店舗の残骸、再利用の秘策

 

敷地が狭小タイプの不動産は、隣近所と合わせてある程度のまとまりにするしか再利用の道はないと思う。私がかねがね提案しているのは、行政の部分参加である。

 

まず、再開発組合のような組織を作って、所有権をいったん無償でそこに移す。自治体は組合に対する固定資産税の支払いを猶予する。組合は隣近所に声をかけて順次、所有権を譲渡してもらう。何年もかかる息の長い事業だ。ある程度土地がまとまったら、マンションデベなどに売却する。

 

そこで得たお金で、猶予されていた固定資産税を支払う。さらに元の所有者に譲渡してもらった物件の固定資産税評価額に応じて分配を行い、組合は解散。

 

こういう仕組みなら、小規模空き店舗を再活用できるはずだ。行政も固定資産税を延滞されるよりもよいだろうから、応じてくれる可能性があると思う。問題は、その組合をだれが機能させるかだ。売却代金の中から組合の報酬を確保するにしても、売却できるまでは無報酬。そんなことを引き受けてくれる有徳のご仁はなかなか見つからない・・・。そう言われそうだが、そうとも限らないと思う。

 

私は地元で営業する不動産屋に引き受けてもらえばいいと考えている。「売却代金の20%を報酬とする」みたいな契約なら、やってくれる業者は現れるはずだ。

 

あまり知られていないが、どんな街にでも不動産屋は必ず存在する。日本にはコンビニの店舗が約5万5000軒あるのに対して、登録されている不動産業者は約12万社。ほとんどが地元密着の零細業者だ。

 

彼らは地元の街のことをよく知っている。地元密着だから、腰を据えて空き家店舗の所有者を説得できる。私は空き家になった小規模店舗の再活用は、こういう手法が最も有効ではないかと考えている。

 

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昭和、平成時代を経て日本のマンションは大きな転換期を迎えています。人生のうちで大きな買い物となるマンション選びにおいては、常に最善の選択をしたいものですが、そのためには変化に即して考え方や行動を変えていかなければなりません。長年にわたりマンションを取り巻くさまざまな業界の最前線をウオッチしてきた住宅ジャーナリスト、榊淳司氏がこれまでの常識はどの時点からどのように変わってきたのか、そしてこれからどう変わっていくのか、マンション購入を考えているみなさまにとって有益かつ目からウロコのお話満載で語っていきます。

 

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榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『すべてのマンションは廃墟になる』『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。