平成の後半、日本の長期金利は底を這っていた。ここ数年はゼロ、あるいはマイナス。住宅ローンを変動で借りれば0.5%未満というケースさえある。フラット35でも1.5%前後。少なくとも史上最低水準である。

 

最近、このフラット35を投資用物件を買うために利用していたケースが指摘された。業界内では昔から知られていた裏ワザだが、今後は使いにくくなりそうだ。

 

元号が令和に変わったが、長期金利はゼロのまま動きそうにない。しかし、いつまでもゼロのまま続くわけがない。いずれは上がるはずだ。

 

計算機・考える女性

(写真はイメージです)

 

深く考えずに組まれる35年ローン

 

ところが、もう20年以上も低金利状態が続いているので、多くの日本人はこれが当たり前だと考えている。さらに、ここ数年のゼロ金利政策に慣れているので「この状態が35年続くのだろう」と漠然と思っている。

 

平成の時代は、人々が深く考えずに返済期間35年の住宅ローンを組んだ。払い終える年齢の上限は、だいたいが75歳になっている。つまり40歳までは普通に35年のローンが組める。だから、当たり前のようにそういう住宅ローンが日々設定されている。

 

私はあまのじゃくだから、そういう話を聞くとこう考えてしまう。「65歳で定年になったとして、その後10年はどうやってローンを払うのか?」

 

返済途中で寿命が終わってしまえばカンタンである。残りは団体信用生命保険で支払われるので、遺族に負担はかからない。問題は元気で生きている場合である。40歳の時の収入で設定した返済額を、収入が途絶えてからも払い続けないといけない。これからますます減額されるであろう年金収入で払えるのだろうか?

 

さらに、金利が上がって返済額が増えてしまう、というリスクもある。何といっても金利は今が史上最低水準。今後は日本銀行が無謀なマイナス金利政策を深掘りでもしない限り、今よりも金利が下がるということはあり得ない。

 

現状でさえ、黒田東彦日銀総裁は自らが主導しているこの金融緩和に「異次元」というワードを冠している。異次元なのだから、いずれは正常化される。つまり、金利を上昇させるということである。

 

金利は急激に上がることはない。金融政策が日本よりもドラスティックなアメリカでも、1年かけて1%上げるのがせいぜいであった。これからの日本だったら1年で0.5%がやっとであろう。それも、黒田氏が日銀の総裁である限り、あり得ないと思われる。

 

しかし、彼の任期も後4年。4年後の景気がどうなっているかどうかは分からない。しかし、今程度の景況感なら次期日銀総裁は正常化に踏み出すと考えるのが順当だ。

 

金利上昇で家と命を手放す人たち

 

それで、仮に2年かけて1%の利上げを行ったと考えてみる。住宅ローンの金利も1.2%ほど上がるのではないか。8,000万円の残債がある人なら、1.2%は96万円に相当する。単純に考えると、年間の返済額が約96万円も上がってしまうのだ。

 

そうなると、全員ではないにしろ、払いきれない人が一定数は出てくるはずだ。彼らはどうするのか? たとえば銀行に頼んで返済期間を延ばしてもらう。あるいは数年間は返済額を抑える設定で組み直す。そういうことは理論的に可能だ。あの平成大バブルが崩壊した後、そういうケースは多々見られた。リーマンショック後も、そういう事例は多発した。それで切り抜けられた人はいい。任意売却や競売に追い込まれた人も多い。それで残債が処理できない場合は、最終的には自己破産に追い込まれる。また、そういう時期は自殺者も増える。

 

ここ数年、新築マンションはやけに高くなった。都心もしくは人気エリアの駅近なら、ファミリータイプのちょっとした物件は8,000万円になってしまう。本来なら年収が1,500万円くらいの方が購入層の中心になるはず。そういう物件を、世帯収入が1,400万円ほどの若いカップルが購入している。名義を分けて、夫婦それぞれ35年の住宅ローンを組む。業界では「ペアローン」と呼んでいる。それで8,000万円の新築マンションが購入可能となる。

 

しかし、私から言わせると信じられないレベルでデンジャラスだ。このペアローンを平和裏に終了するには、以下のような条件が必要だ。

 

(1) 離婚しない(統計上の離婚確率は3分の1)
(2) 夫婦ともども35年間、購入時と同等かそれ以上の収入が継続する
(3) もちろん、二人とも健康で働き続ける(あるいは突然に亡くなる)

 

今の時代、だれが35年もの安定した職業人生と収入を確信できるのだろうか。実際のところ、公務員くらいであろう。また、35年もの間ずっと健康でいられる保証はどこにあるのだろう。
あるいは、不動産市況が好調であり続けて、ローンの残債以上の価格で売却できるのであれば、リスクは解消できる。しかし、少子高齢化と人口減少、そして住宅の余剰が顕在化するであろうこの国の未来を、楽観的な予測で描かない方がいい。

 

ここのところ、ペアローンで高額マンションを購入したが、別居や離婚になってしまった・・・という方から続けざまに相談を受けた。今ならそれなりの価格で売却できる可能性がある。希望価格に近いところで売れれば、ローン残債の問題は何とか片付く。しかし、この先も今のような市場の高値安定期が続くとは限らない。

 

中国やヨーロッパからは景気後退の足音が聞こえてきている。日本国内の景気も決していいとは言えない。個人消費や企業の設備投資はマイナスになっている。

 

五輪後、安倍政権終焉が金利上昇のタイミングか

 

2020年には東京五輪が始まって終わる。その後、東京の街には目立ったイベントが予定されていない。その1年後の2021年の9月で安倍晋三氏の自民党総裁任期が終わる。予定通りなら、そこで安倍政権は終了。ただ、自民党の規定を改めて「4選可能」にすれば話は別だが。

 

おそらく、安倍政権が終われば黒田氏も日銀総裁を退任するのではなかろうか。「消費者物価2%上昇」という公約を現時点で約6年間も達成できていない。異常な低金利によって、金融機関の経営はかなり圧迫されている。遅くとも、そのあたりが金利上昇の節目になるのではないかと予測する。

 

金利ゼロで始まった令和の時代、ゼロからの脱却がヒタヒタと迫ってきている。

 

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昭和、平成時代を経て日本のマンションは大きな転換期を迎えています。人生のうちで大きな買い物となるマンション選びにおいては、常に最善の選択をしたいものですが、そのためには変化に即して考え方や行動を変えていかなければなりません。長年にわたりマンションを取り巻くさまざまな業界の最前線をウオッチしてきた住宅ジャーナリスト、榊淳司氏がこれまでの常識はどの時点からどのように変わってきたのか、そしてこれからどう変わっていくのか、マンション購入を考えているみなさまにとって有益かつ目からウロコのお話満載で語っていきます。

 

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榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『すべてのマンションは廃墟になる』『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

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