地価が上昇し、マンション価格も庶民にとっては「高嶺の花」になるほど高くなってしまった2018年の住宅マーケット。2020年東京五輪をいよいよ翌年に控え、元号も平成から新しく変わる2019年はどんな1年になるのでしょうか。本稿を読まれるみなさまの関心の多くは「2019年に家を買うべきか、買わないほうがいいのか」かもしれません。そのあたりの疑問も含め、不動産にまつわる2019年からの展望について、不動産事業プロデューサーで1月10日には最新著書『街間格差ーオリンピック後に輝く街、くすむ街』(中央公論新社)を出版される牧野知弘氏に語っていただきました。

 

牧野知弘氏

牧野知弘氏

 

消費増税の前に駆け込み需要は起こらない

 

――明けましておめでとうございます。今年2019年は不動産マーケットにとって、どんな1年になるのでしょうか。まずは、10月に予定されている消費税率10%への引き上げについて、どんな影響がありそうでしょうか?

 

牧野 明けましておめでとうございます。私は、消費増税の影響はあまり起こらないと思っています。2014年に5%から8%に引き上げられた際は、増税前の駆け込み需要でマンションの売れ行きは確かに絶好調でした。増税後は予想どおり反動で供給戸数が落ち込みましたが、すっかり冷え込んだ市場は思うように回復しませんでした。そういう意味で前回の消費増税は大きく影響したといえるでしょう。

 

しかし、今回はほとんど影響ないのではないかと考えます。というのも、「税率が2%上がる前に買っておこう」といういわゆる「駆け込み需要」の動きが、マーケットをいろいろウオッチしていてもほとんどないのです。やはりマンション価格が高くなりすぎたために、マンションを実需ベースで買う層がかなり縮小してしまったことが大きいでしょう。それに加えて、これはあまりいいことではないですが、高くなってしまった価格に2%が上乗せされることに、もはや「あきらめ」に近いものがあるのではないでしょうか。

 

――2018年12月にとりまとめられた税制改正大綱では、消費税率引き上げに伴う反動減対策として住宅の減税措置を拡充し、2019年10月から2020年末までに契約して引き渡された住宅やマンションを対象に住宅ローン減税の適用期間をこれまでの「10年」から「13年」に3年間延長することになりました。10年目まではローン残高の1%、11年目以降は建物価格の2%分を所得税などから差し引くというものですが、こういうことだと、今よりも増税後の方が有利になるから、駆け込み需要どころか、買い控えにつながるのではないかという懸念があります。

 

牧野 そうですね。そうした政策の影響もあって、「別にあわてなくても大丈夫」という動きがあるように思います。

 

――お客様のそういう敏感なところを私どもは今、実感しております。「今、買うよりもこれから買うほうが得じゃないか」というものです。「この先、不動産価格が高くなる見込みもないし、今買うよりも消費税が上がってから考えよう」という動きがあるように感じます。

 

牧野 今、様子見に入っているんですね。東京五輪もだいぶ近づいてきました。オリンピックの後に経済はダメになるという論評はそこら中にあふれていますので、買うんだったら価格が下がった頃にしたほうがいいのではないかという「警戒と期待」があるように思います。

 

選手村跡地の大量物件は値下がり必至

 

――2020年以降の話になってしまいますが、オリンピックの選手村として使われる物件が、開催後には分譲・賃貸物件になるようです。この影響についてはどう考えますか?

 

牧野 2018年にようやく開場した豊洲市場から一歩都心寄りにある晴海地区に東京五輪の選手村が設置されます。その跡地は土地建物ごとデベロッパーに売却され、デベロッパーは住宅をスケルトン状態に戻して再整備します。「ハルミフラッグ」という名称で、約18ヘクタールのエリアに分譲・賃貸の24棟5632戸が供給され、そこに1万2000人が住む超巨大な街ができるという触れ込みです。

 

これには裏話があります。前都知事の舛添要一さんに、当時こう聞かれました。「晴海の選手村ですが、大手デベロッパーがみんな及び腰なんですけど、どうしてなんでしょう」と。私は即座に「当たり前ですよ。今、首都圏でマンションは1年に何戸が供給されているか知っていますか? 約3万5000戸ですよ。そこに晴海が6000戸を出すそうですが、それは全体の6分の1の数ですよね。それだけのものを何年かけて売るつもりなんですかね」とお答えしました。

 

首都圏のマンション供給戸数は2016年に3万5772戸。対前年比で10%以上下落しています。2000年代初めには8万~9万戸が供給されていましたから、マンションマーケットは大幅に縮小しているんです。東京23区に限っていえば、2016年は1万4764戸、対前年比で20%以上の下落ですよ。

 

こんな状況で、晴海という立地で一気に6000戸もの供給を任せられるのはデベロッパーにとって大変なことですよ。安い金額で払い下げを受けられたとしても、選手村の住宅をスケルトンにして分譲仕様に仕立て直したりタワーマンションを新しく建てたりしたら、昨今の建設費の高騰で、分譲価格は相当の高値にしないと採算が合わないことになります。しかし、それだけ大量のものが出ることになると、とれだけ苦労して調整していったとしても、結局は下げて売らざるをえないのではないでしょうか。そうなると、マンション全体の価格への影響も避けられないでしょう。

 

しかも、晴海はもとより交通アクセスがよろしくありません。環状二号線道路にはBRT(Bus Rapid Transit)という燃料電池で走るバスの専用レーンを設けることになっていましたが、道幅がそれほど広くないことが判明し、専用レーンにできないそうです。しかもバスがいつでも2~3分おきに出るのだったらいいですけど、そんなことはできないですよね。飲んだ人が夜中にバスで帰るというのは不便ですね。しかも、周りに何もないところですから。僕がマンション会社だったらこれはちょっと痛いなと思います。

 

金利は来年、反転上昇する

 

――もうひとつ、住宅マーケットに影響しそうなものに「金利」があります。日銀のマイナス金利政策で、現在、日本では空前の低金利です。この金利の行方はどう予想されますか?

 

牧野 住宅ローンは個人にとって、最も額の多いローンになりますので、金利は非常に重要です。金利は今、「これ以上は下がらない」ところまできていますので、早ければ来年、どこかで反転するでしょう。先進国の中で日本だけが低金利でいることなどできませんから。

 

マンションの価格は土地よりも建築費の部分が大きく反映されます。建築費は今もとても高騰していて、その傾向は今後も変わらず、原価はどんどん上がっていくでしょう。原価が上がる中で金利も上がってしまうと、ダブルパンチになります。今の低金利のうちに固定金利で買うのがいいですね。金利の優遇があるせいか、変動金利を選ぶ人が多いのですが、僕は今買うなら絶対に固定金利にします。「上がってもせいぜい1%くらいじゃないか」とみんな思うでしょうが、上がるときはもっと上がります。そうなると変動金利は辛いですよね。

 

金利はおそらく、来年から上がるでしょう。「いつまでも続くと思うな低金利」っていう標語でもつくりたいくらいです。香港やシンガポールでは金利が高いせいで不動産がちょっと厳しくなっていますが、世界の主要都市はみんなつながっているんです。世界金融で考えて、香港や台北で起きたことは、東京でも必ず起こります。

 

都内で戦中世代の相続物件が大量に出る

 

――そのほか、住宅市場を変えるようなことはありますか?

 

牧野 来年に限った話ではないですけど、これから都内では相続が大量に起こります。そうなると、不動産の供給圧力が強くなります。というのも、都心部に住んでいる人ほど後期高齢者が多いんです。東京都のデータでは、75歳以上の後期高齢者の数の方が、65~74歳の前期高齢者より人数が多い。それは何を物語っているかというと、戦中世代以前の人たちは都内に家を持ち、団塊の世代以下の人は都内が高くて買えないからみんな郊外に買ったということですね。

 

東京に買った世代がこの世を去るとき、彼らが建てた太田、世田谷、杉並、練馬など大量の住宅が相続対象となります。で、戸建てが多いですね。これは今後5,6年の未来予測ですが、住人がいなくなった住宅は、貸すばかりではなく、売りに出すでしょう。

 

そういう事態は私の身近でもすでに起こっています。賃貸マンションに住んでいた知り合いが引っ越すというので「マンション買うの?」って聞いたら、「いえ、同じエリアで賃貸の戸建てに引っ越します」というんです。120㎡の相続物件で、相続人が住まないので、売却せず賃貸にしたのを見つけたそうです。「子供が小さいし、広くてよかった。賃料もそんなに変わらない」と喜んでいましたが、こんな選択肢も最近は出てきたんだと感じました。

 

――ありがとうございました。2019年もお客様の購入・売却活動に役立つよう、不動産に関する知見や最新情報を教えてくださりますよう、どうぞよろしくお願いします。

 

(聞き手・インタビュー構成 不動産のリアル編集部)

 

 

■牧野知弘氏 オラガ総研株式会社 代表取締役
東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し、ホテルリノベーション、経営企画、収益分析、コスト削減、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT(不動産投資信託)市場に上場。2009年株式会社オフィス・牧野設立およびオラガHSC株式会社を設立、代表取締役に就任。2015年オラガ総研株式会社設立、代表取締役に就任する。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(ともに文春新書)などがある。テレビ、新聞などメディア出演多数

 

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