首都圏で毎年、増え続ける分譲マンション。しかし、その資産価値を長く保つことができるものは限られるのではないでしょうか。不動産の価格は、利用価値で決まるといわれます。

 

その不動産を利用する人間の数が減っていく近未来、利用価値は低くなるため、価格は下がっていきます。住宅ジャーナリスト、榊淳司氏は近著『2025年 東京不動産大暴落』でこう警鐘を鳴らしました。

 

各メディアで健筆をふるう榊氏は不動産への愛ゆえの辛口で知られますが、そんな榊氏にも資産性や流動性からその価値に脱帽したマンションがあります。マンションの具体名を挙げて、なぜ優れているのかを紹介していきます。

 

台東区街並み

(写真はイメージです)

 

浅草タワー

 

売主・三菱地所他 山手線 「上野」駅 徒歩16分 (入谷口)
全693戸 2012年2月完成 37階建て

 

アクセスできる駅はいっぱいあるけど、やや中途半端なロケーションか

 

新築時の広告で、このマンションの「交通」には7つの最寄り駅が示されていました。

 

 ・JR山手線「上野」駅(入谷口)より徒歩16分
 ・東京メトロ銀座線「田原町」駅(1番出口)より徒歩9分
 ・東京メトロ日比谷線「入谷」駅(1番出口)より徒歩9分
 ・つくばエクスプレス「浅草」駅(B出口)より徒歩3分
 ・都営浅草線「浅草」駅(A4出口)より徒歩13分
 ・東武伊勢崎線「浅草」駅(松屋浅草)より徒歩12分
 ・東京メトロ銀座線「浅草」駅(1番出口)より徒歩13分

 

うーん、「上野駅徒歩16分」といって、果たして上野まで16分かけて歩く住民はいるのでしょうか? 2番目は「銀座線田原町徒歩9分」ということですが、私が実際に歩いてみたところ、9分よりもかなり遠く感じました。

 

つくばエクスプレスは秋葉原にしか行かないし、料金も200円と割高。まあ、実際に使うのは日比谷線の「入谷」か銀座線の「田原町」でしょうね。現地の環境も、何だかタワーには似つかわしくない感じ。住宅と小さな工場や事業所が交じり合ったようなロケーション。用途地域も「商業地域」です。

 

「なんでこんなところにタワーを作る必要があるのだろう?」というのが、現地を見た正直な感想でした。

 

この場所で全693戸、94タイプという大胆さがすごい

 

事業者の立場で考えれば、これはかなり「大胆なプロジェクト」だといえます。なぜなら、浅草とはいえ駅徒歩9分の場所に、700戸近いタワーマンションを供給して全戸売り切れるというのは、今より市場環境が悪かった当時は相当のことだからです。まあ、それでも全戸を売り切って、今は値上がりしているので結果オーライでしょうか。

 

タイプ数が多いと、それだけ間取り設計者の負担が増えます。そのせいかどうか、このマンションの場合はあまり工夫のあとが見られません。かなり使いにくそうな間取りもいくつかありました。

 

また、この規模であの時期に供給された物件であるわりには、プールや大浴場など将来にむかって禍根を残すような共用施設はみられません。シアター・カラオケルームなんてものもありますが、強いて言えば一部の人の溜まり場になるだけなのでべつにいらないのではないでしょうか。その他、スタディルームやゲストルームがありますが、大まかにはあってもよいものだと思います。

 

新築時の平均坪単価は260万円台の後半。現在の市場価格は330万から340万円。約25%程度の値上がりでしょうか。ノムコムによると、2018年10月10日時点での参考相場価格は2,952万~2億1,174万円、参考相場単価は㎡あたりが76万~143万、坪あたりが251万~472万円とありました。

 

お持ちの方、今は売り時です。このマンション、市場の下落期にはやや弱いものがありそうです。このため、短期間で新築時の水準に戻ることも予想できます。賃貸も楽そうではありませんね。

 

浅草花やしきや浅草寺といった観光地まで気軽に足を伸ばせるこのエリアが好きな方にとっては、楽しみながら住むには非常に満足度が高い物件と言えるでしょう。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。