首都圏で毎年、増え続ける分譲マンション。しかし、その資産価値を長く保つことができるものは限られるのではないでしょうか。不動産の価格は、利用価値で決まるといわれます。

 

その不動産を利用する人間の数が減っていく近未来、利用価値は低くなるため、価格は下がっていきます。住宅ジャーナリスト、榊淳司氏は近著『2025年 東京不動産大暴落』でこう警鐘を鳴らしました。

 

各メディアで健筆をふるう榊氏は不動産への愛ゆえの辛口で知られますが、そんな榊氏にも資産性や流動性からその価値に脱帽したマンションがあります。マンションの具体名を挙げて、なぜ優れているのかを紹介していきます。

 

江東区マンション

(写真はイメージです)

 

ソライエ・プレミアムテラス

 

売主・名鉄不動産、東武鉄道 東武亀戸線「小村井」駅徒歩8分
全336戸 2014年2月完成 7階建て

 

新築時のキャッチコピーは「Scoop」でした

 

思い出しても、本当にワケが分かりませんでしたね。2013年1月、このマンションのオフィシャルページには「Tokyo scoop」という文字が、デカデカと踊っていました。何を言いたかったのでしょうか? 仕方がないから、辞書でscoopの意味を調べてみました。

 

名詞だと「勝利をさらうこと」「すくい取る道具」。 動詞だと「すくい取る 」「勝利をさらう」。

 

この場合「Tokyo」という名詞の後ですから、名詞でも動詞でも成立します。名詞だと「東京の勝利」「東京のすくい取る道具」、動詞だと「東京が勝利をさらう」「東京がすくい取る」と直訳できます。このマンションは、オリンピックの東京招致を応援していたのでしょうか? たとえそうだとしても、ちょっと分かりにくすぎですね。こういう「ワケの分からない」広告を行っているマンションは要注意だと思いましたね。

 

そして2013年5月に別のレポートでこの物件を確認したとき、オフィシャルページをのぞいて見ると、なんとコンセプトどころか物件の名称まで変わっていました。いかにもこの販売会社がやりそうな「子供だまし」の手法です。

 

新築時は「価格で勝負」の長谷工プロジェクト

 

ファミリーマンションとしては場所がちょっと中途半端です。最寄りはマイナーな東武亀戸線の「小村井」駅で、徒歩8分です。小学校と中学校はほぼ「お隣」状態なのですが、幼稚園と保育園が難しそうですね。徒歩3分の私立保育園に入れないと、ちょっと面倒そうです。また、日常のお買い物が何とも不便そうな感じがします。

 

ただ、現地自体はリバーサイドの静かな住宅地。いかにも子供を伸びやかに育てられそうなところです。しかし、こういう場所に大規模なファミリーマンションを作ろうというのはいかにも「20年前の発想」だと私は思いました。

 

計画の中身は純然たる長谷工プロジェクト。売主は「長谷工と愉快な仲間たち」のレギュラーメンバーである名鉄不動産と、最近ではその仲間に加わることが多くなった東武鉄道。地元の強みを活かそうと仲間になってもらったのでしょうか?

 

さて、配棟計画をみると長谷工得意の単純かつ低コスト狙い。容積率を最大限に消化して、余ったところは駐車場にするというセオリーどおりです。このマンションは4棟構成で、「変則ロの字型」みたいな配棟。これではガーデン棟の下層階住戸は、冬至前後には日照が得られないかもしれませんね。

 

あと、駐車場は210台分が用意されていますが、機械式です。しかも露天ですから、使い始めて15年ほどで設備の更新が必要になります。月額使用料はしっかりと設定されているので、それでまかなえるでしょうか。管理費と修繕積立金はかなり低レベルに設定されていました。管理会社は長谷工コミュニティですから、それなりの料金は取るはずです。特に修繕積立金は、今の額では足りなくなるのが必定です。将来的に必ず値上げが予定されているはずですから、しっかり確認してください。

 

このマンション、新築時は平均坪単価が165万円前後で販売されていました。当時としても23区内では最低水準だったと記憶しています。現在、1割程度値上がりしたようにも見えますが、成約は多くありません。ノムコムによると、2018年10月10日の時点で売り出し中の物件は2件、7階の2LDK(62.38㎡)で3,500万円、2階の3LDK(68.77㎡)で3,680万円でした。

 

永住目的に購入されるには悪くないし、価格もお手頃。ただ、いざという時には換金しにくい物件であることはご理解ください。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。