首都圏で毎年、増え続ける分譲マンション。しかし、その資産価値を長く保つことができるものは限られるのではないでしょうか。不動産の価格は、利用価値で決まるといわれます。

 

その不動産を利用する人間の数が減っていく近未来、利用価値は低くなるため、価格は下がっていきます。住宅ジャーナリスト、榊淳司氏は近著『2025年 東京不動産大暴落』でこう警鐘を鳴らしました。

 

各メディアで健筆をふるう榊氏は不動産への愛ゆえの辛口で知られますが、そんな榊氏にも資産性や流動性からその価値に脱帽したマンションがあります。マンションの具体名を挙げて、なぜ優れているのかを紹介していきます。

 

マンション

(写真はイメージです)

 

ヴェレーナ王子

 

売主・日本綜合地所 東京メトロ南北線 「王子神谷」駅 徒歩15分
全351戸 2012年5月完成

 

まさかこんなところに・・・という場所

 

そもそも、「王子神谷」という駅のまわりには、これといった商業施設がほとんどありません。その駅から歩くこと15分。その道のりも、シャッター商店街であったり、車1台やっと通れる細道だったり・・・。歩いているだけで気分が滅入ってきます。新築時に現地調査をしたとき、「長谷工さん、本気かよ?」と考えながら、とぼとぼと歩き続けました。

 

このマンション、2009年に会社更生法を申請した日本綜合地所が売主でした。今は「大和地所レジデンス」という社名に変わっています。しかし、設計施工が長谷工コーポレーションですから、「長谷工プロジェクト」でしょう。計画の内容も、長谷工の「工業製品型」に日本綜合の「ヨーロッパ風」の衣を着せたものといえます。

 

徒歩15分をかけてやっとたどり着いた現地には「巴里の園プロジェクト」などと書かれた看板が掲げられていて、泣きたくなったことを覚えています。更生法を申請する前に土地は買ってしまっていたと推測しますが、なぜわざわざ建築費を使って事業化する必要があったのでしょうか? そのまま土地を処分してしまった方がよかったのではないかと思います。

 

ただ、上には上があるもので、ここからさらに先に進んで隅田川を越えたところにも250戸のマンションが建設されていました。物件名は「オーベルグランディオ ハートアイランド」。なんと、そちらも長谷工が設計施工。あの当時、それを眺めて「もう勘弁してくれー」と叫びたくなっていました。今どき駅から徒歩10分を超えるマンションはなかなか選ばれませんから。

 

新築販売時の平均坪単価は、推定で175万円。その当時、東京都内で販売されている20階以上のマンションの中では最低クラスでした。現在の流通価格も新築時とさほど変わっていません。ノムコムによると(2018年9月21日時点)、参考相場価格は3,081万~5,941万円。参考相場単価は㎡あたりが43万~71万円、坪あたりは142万~234万円です。

 

ただ、完全な実需型マンションなので、あまり売り出し住戸もありません。これから多くなるのかもしれません。「家族でずっと住む」ということなら検討できるマンションです。しかし「人生のどこかで売却」ということなら、慎重になるべきかもしれません。

 

 

榊淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年生まれ、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上、携わってきた。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『2025年東京不動産大暴落』(イースト新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)など。