番組タイトルは「タダでもらえる家だけ不動産」。なんだこれは? この衝撃的なタイトルに引かれ、筆者も7月17日に放映されたテレビ東京の「タダでもらえる家だけ不動産 0円ハウス」を視聴しました。

 

そもそも不動産は高額で大事な財産です。大金をつぎこんで購入し、もしくは先祖から引き継いだその土地と建物を赤の他人に無料で譲り渡すとはどういうことなのでしょう。

 

お笑い芸人のウド鈴木さんを社長役に、架空の不動産会社「0円ハウス」を舞台に紹介された日本各地の「タダでもらえる家」は、深刻な社会問題である「空き家問題」を背景にしたものでした。どうして売主は、大事な資産をタダで手放さざるを得ないのか。そして需要はあるのか。番組が提示した社会への疑問を、現役の不動産専門家の目線で振り返ります。

 

(写真はイメージです)

 

タダでも売りたい売主が出現する理由

 

首都圏が五輪需要と投機に沸き返る反面、地方では空き家問題が深刻化しています。核家族化や居住者の高齢化、それにともなう過疎化から、誰も住まない家が増えているのです。国土交通省によると2013年時点で全国の空き家の数は約820万戸(全体の13.5%)ですが、野村総合研究所は2033年には約2170万戸(30.4%)に倍増するとの未来予測をしています。

 

誰も住まない家、つまりは所有者にとって利用価値のなくなった不動産は、お金を生まないだけでなく、維持するだけでも費用と労力を要します。固定資産税や都市計画税などの固定費に加え、庭の草刈りや建物維持のための補修、さらには風通しや掃除も定期的に行わないと、朽ち果てていくだけの厄介物となってしまうのです。このほか、老朽化による倒壊や景観の悪化、放火による火災など、近隣住民の迷惑になってしまいます。

 

そこで所有者は家を売却し、維持するための手間と費用から解放されたいと考えます。ところが過疎化の進む地方都市では、不動産の需要は減る一方です。こうした理由から、地方の不動産市場には買い手のつかない物件があふれ、売れない土地建物が数多く並ぶことになるのです。しかし、「並べているだけでいつまでたっても売れないのなら、もうタダでもよい」と考える売主が現れるようになったのです。

 

タダでも売りたいという物件にはこうした裏事情がありますので、番組ではどう紹介されるのか、興味深く視聴を進めました。

 

紹介されたのは基本的に売れなかった家

 

番組では冒頭に、日本各地のタダで売りに出されている不動産が紹介されました。青森県や和歌山県、そして秋田県と北海道の0円ハウスが、所有者や関係団体などの立ち合いで、建物の外観から内装状況まで詳細に案内されたのです。

 

しかし、どの物件も築後40年以上と古く、相当の手直しを行わないと住める状態ではありません。物件によっては「リフォームを行った」とセールスしていましたが、私から見れば床や壁などの単なる化粧直しにとどまり、費用のかさむキッチンや浴室などの水回りは手付かずの状態でした。

 

こういう物件は0円で購入したはいいのですが、住める状態にするには何百万円もかかります。これでは、お金を出して格安住宅を購入するのと変わりません。地方都市には100万円以下で買える物件がゴロゴロしているのですから、いくら無料であっても、リフォーム代金をかけないと住めないのであれば、0円のメリットはほとんど感じられません。視聴者の方も「これでは誰もほしがらないわ」と思った方がほとんどではないでしょうか。

 

結局、買う人は1組も現れなかった

 

続いて番組では、東京都や愛知県の大都市圏で0円ハウスに興味のある人を募ります。そして、タダなら見学してみたいと名乗り出た数組を、0円ハウスの所在する現地に実際に案内しました。

 

1組目は東京都在住の今井さん。ウクレレを専門とする音楽家で、都内で教室も開いているとのことでした。向かったのは長野県阿南町。長野県は湿気が少ないことからウクレレの鳴りがよいと今井さんのお気に入りの土地で、教室や合宿場にちょうどよいとの思惑からの選択でした。

 

案内されたのは山あいの古屋で、田畑と蔵も付けて無料、築75年、空き家歴7年、間取り5Kです。阿南町には公民館やウクレレの発表会に最適な多目的ホールもあり、付属の蔵もスタジオに改装すれば有効活用できそうです。

 

今井さんもかなり気に入った様子で、案内役のペナルティ・ヒデさんの期待も膨らみます。ところが、物件を案内した売主の一言で、今井さんの決心は鈍りました。売主は先祖から引き継いだ土地だから、田畑での耕作を続け、変わらぬ状態が維持されることを望んでいたのです。つまり、受け継いだ土地の用途を変更してほしくないということです。

 

結局、今井さんは購入を断りました。先祖代々の土地・建物を部外者の自分が勝手に処分したり他の用途に使ったりすることは心苦しい、と話していました。「地方に仕事場がもうひとつ欲しい」とだけ考える人にとっては、制約が多かったということでしょうか。

 

続いて紹介された東京都在住の石黒さん夫妻は、違った理由から返答を一時保留としました。「南国の海辺で子育てがしたい」と地方移住を考える石黒さんでしたが、案内された宮崎県延岡市の物件(築51年、空き家歴10年、6SDK、1DK)が想像を超えていて、決断が及ばなかったといったところだったのでしょう。

 

愛知県から広島県尾道市の物件を見学に行った高木さんも、紹介された2件の0円ハウスを保留としました。1件目の因島の物件(築50年、空き家歴20年、7LDK)は、階段のためクルマの入らないアプローチが理由となって断りに近い保留。もう1件の尾道市内の物件(築58年、空き家歴4年、5LDK)は、高木さん自身は前向きでしたが、「家族と相談してみないとわからない」という理由での保留でした。

 

最後、茨城県大子町の築150年の古民家を見学した東京都の丸山夫妻は、自動車の免許を持たない妻が不便だからと、はっきりと断りを入れる結果でした。

 

結局、4件紹介された0円ハウスのうち、購入に至った物件はありませんでした。いくらタダであっても、車の入らない物件や、持ち主の思いや事情を引き継がなければならないというのでは、購入するには高いハードルとなったようです。

 

売れないから0円ハウスなのだ。そんな現実をまざまざと見せられたこの結果に、筆者も少なからず衝撃を受けました。都内や周辺の都市部では、再建築のできない物件や朽ち果てて今にも壊れそうな建物でも、売れない物件はありません。賃貸需要も旺盛ですから、格安であれば採算がとれるため、十分に投資対象となり得るからです。

 

しかし、地方にそうした需要はありません。番組が見せてくれた0円でも売れないという現実は、今後さらに深刻化するであろう、地域格差の一端を認識させるものであったといえそうです。

 

真剣に考える人には朗報。行政によるマッチングサービスや補助も増えている

 

とはいえ真剣に地方移住を考える人、数百万円のリフォーム代を捻出可能という人にとっては、こうした風潮は歓迎できるものでしょう。番組では売り買いの合意には至りませんでしたが、最後に実際に0円ハウスを購入し、リフォームを行って移住した人の例も紹介されました。

 

福島県三島町の古屋を購入した大橋さんは、外壁や水回りに手を入れ、総額530万円の費用をかけて居住しているそうです。古民家の魅力ともいえる囲炉裏(いろり)やかまどを廃止し、システムキッチンや最新のバスルームに改造した室内は、都会の生活となんら変わらぬ快適さをもたらしています。

 

やはり田舎暮らしに憧れはあっても、いざ移住となると都会の利便性を捨てるのは難しいのが現実なのでしょう。となれば大橋さんの例でもわかるように、530万円という大きな額の負担が移住にはのしかかります。しかし大橋さんは実際には、230万円ほどしか負担していないとのことでした。

 

実はこの福島県三島町に限らず、多くの市町村が移住者へのリフォーム代金などの補助を行っているのです。大橋さんは県と町からそれぞれ150万円の補助を受けたそうですが、今井さんが見学に行った長野県の阿南町でも、改修費用の50%、上限100万円までの補助があるそうです。

 

また、番組に登場した和歌山県橋本市では行政が空き家の紹介を行っているとのことでしたし、尾道市では民間団体が同様のサービスを展開しています。行政による改修費の補助とマッチング・サービスがあれば、移住は一気に現実のものへと近づきます。

 

田舎暮らしを真剣に考えるのであれば、物件探しと購入後の生活を行政が後押ししてくれる、魅力的な時代になったといえるでしょう。地方の空き家問題解決に、一歩でも近づけばと願っています。

 

伊東博史(宅地建物取引士)
大手不動産仲介会社で売買仲介に約10年間の勤務。のべ30年間以上にわたり、大手と中小、賃貸と売買と、多角的に不動産業務に携わる。現職では売買と賃貸仲介と管理、不動産投資や相続のアドバイスを行う。

 

 

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