今回は2018年のマンション市場、特に東京の都心部がどうなるかという点を中心に論考を進めたい。

 

「出回り物件」からわかるバブル

 

まず、マンション業者とホテル業者による事業用地の奪い合いは、ここのところ一段落の様相を見せている。ホテル業者があまりにも高く買い過ぎた事業用地が「出回り物件」となっているのだ。出回り物件とは、「誰が買い手を探しても良い」という扱いで、何十、何百というブローカーがその資料を持ってあちらこちらを回っている。

 

時に、こうした出回り物件の資料が、私のような不動産業界の周縁で生きている者のところまで回ってくる。私の過去の経験からすると、こういう現象が起きるとバブルもそろそろ最終局面だ。

 

マンション

(写真はイメージです。)

 

実は不動産業界には2016年の年央から「そろそろバブルは終わりでは?」という空気が出始めていた。2008年9月のリーマンショックで弾かれた「不動産ミニバブル(あるいはファンドバブル)」の記憶は、業界の人々には鮮明に残っているはずだ。だから今回の局地バブルでは、マンションデベロッパーによる無茶な仕入れはあまり見られない。むしろホテル業者がイケイケで買い過ぎていた。

 

そして2017年に入ると、「バブル崩壊」への不動産業者たちのビクビク感はジワジワと強まっていた。しかし、何事もなく1年が過ぎようとしている。今では「悪い材料はないし、まだまだいけるのでは」という目先の安心感さえ広がっている。私の見方もそれに近く、2018年前半にかけての悪い材料はほとんどない。あるとすれば北朝鮮情勢など地政学的な危機だけ。それについては確実な見通しが立たない。

 

不動産業界の空気は以上の通りだ。少しビクつきながらも、まだまだ買い意欲を持っている。
では、エンドユーザーに大きく関係する、実際のマンション市場についてはどうなのだろうか。

 

2018年の新築マンション市場

 

まず新築マンション市場は、在庫の積み上がりがかなり危険な水準まできている。2018年の3月決算期に向けて新築マンション市場は一大バザールとなる可能性が高い。完成在庫は躊躇(ちゅうちょ)なく値引きでの処理が続けられるだろう。

 

とはいえ、資金繰りに困っているマンションデベロッパーはないだろうから、大幅な値引きは少なそうだ。せいぜい1割程度が主流か。ただし大規模物件で百戸単位の完成在庫を抱えていれば、1割を超える値引きもあり得る。現に郊外の実需向け物件ではそういう傾向にあるが、都心部とその近郊では大規模物件が少ないので、値引きはあまり目立たないと思われる。

 

2018年の中古マンション市場

 

一方、中古マンションは2017年の状況がそのまま続くと予測できる。依然として売出し物件は多いまま、成約数は伸びないはずだ。

 

東京都の住宅市場は慢性的な供給オーバー

 

現状の中古マンション市場で物件を探している人の大半は、自ら住むことが目的。東京都心の中古マンション市場には一定数の実需が常にあり、そこだけ見れば非常に安定しているといえる。しかし、常に供給が需要を上回っているという、実に危うい現実もその向こうに控えているのだ。さらに言えば、この中古マンション在庫は減少することがない。

 

東京都の世帯数は外国人も合わせて毎年10万前後しか増えていないにもかかわらず、年間14万戸前後の新築住宅(分譲・賃貸)が建設されている。これには建て替えも含まれるので、純粋にこの数字分だけ家が増えているとは限らない。ただ、新築住宅の供給が世帯数の増加を上回っていることは疑いようがない。東京都の空き家率も調査ごとに増えているのだ。

 

つまり東京都の住宅市場では、慢性的に供給が需要を大幅に上回っている状態。都心エリアに絞っても、その状況は大きく変わらないはずだ。レインズに登録されている売出し物件の分量を見ていると、そのことが実感できる。

 

モノの価格は「需要と供給の関係」で決まる。現状の東京都心のマンション市場の状態にこの法則を当てはめると、いつ暴落が起こってもおかしくないことになる。

 

見えない需要

 

しかし、現実には東京の都心では暴落は起こり得ない。なぜか? それは、「見えない需要」があるからだ。

 

例えば、(現実にはこういうケースはほとんどないが)仮に現在の市場価格より2割安い物件がレインズに登録されたとすると、瞬間的に誰かが購入してしまう。1割安でも数日とたたないはずだ。2割安なら不動産業者が自ら買うし、1割安なら買い手のエンドユーザー(一般消費者)を見つけてくるからだ。

 

ただ、そういう「買い」が追いつかない分量の安い売り物件が市場に出てくると、市場価格は一気に下がる。暴落と言ってよいだろう。

 

東京都心の中古マンション市場における供給過多の状態が続く限り、いつか鮮明な下落現象が起こるはずだ。しかし、2018年の前半にそれが起こるとは思えない。誰もかれもが自分の持ち物件を早急に売りたがる、というような事態が予測できないからだ。繰り返すが、あるとすれば地政学的な局面展開くらいである。

 

一方、前述の通り、現在の都心の中古マンション市場の買い手はほぼ実需だ。実需というのは、今のような実感できないほど緩やかな経済成長期において、短期間で大幅に増えるなどということはない。つまり、都心の中古マンション市場が再び上昇局面を迎えるということも考えにくい。

 

とすれば、2018年前半の東京都心の中古マンション市場は2017年の継続、つまりは全体的には非常になだらかな下落が続く、ということになる。

 

中古マンションを市場価格の高目で売りたい人は、今と同様に、買い手が現れるのを粘り強く待つことだ。逆に買いたい人も、豊富な選択肢の中からじっくりと自分の本当に欲しい物件を選べるはず。そして、価格交渉もやってみるべきだろう。価格を下げてくれる売主がいるかもしれない。

 

2018年以降の市場動向における2つの注意点

 

さて、来年以降の市場動向に関して注意点が2つほどある。

 

日本銀行総裁の任期満了

 

まずは2018年4月、日本銀行総裁の任期が満了する。現時点では黒田東彦現総裁の再任が有力視されており、再任なら今の金融政策が継続されるから問題ない。しかし再任ではなく、日銀出身者など金融引き締め論者が総裁に就任するとなると、かなり要注意だ。引き締めに転じて金利が上がると、不動産価格は確実に下落する。その場合、売り手は少し急いだ方がよい。買い手はあわてることはない。

 

海外の経済動向

 

もう1つは、海外の経済動向。今のところアメリカもヨーロッパも好景気だが、中国と韓国はいつもながらに何が起こるかわからない。「中国経済が危ない」というニュースだけで世界の株式市場がちょっとしたパニックになるほどだ。日本の不動産価格が今よりも高騰するとは考えにくいので、何か大きな事件が起きたら売り側は売り急ぐべきだろう。買い側は様子見で良いはずだ。

 

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々にわかりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

 

この記事に関連する「なぜ不動産バブルが繰り返されるのか? 敏腕不動産鑑定士が徹底解析」もぜひご覧ください。

 

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