2017年は、マンション市場停滞の年であった。

 

新築マンション市場

 

新築市場は価格高騰が響いて販売不振物件が続出、多くの物件が完成在庫となってしまった。また、「値引きはしない」ということで知られる住友不動産が、販売が長引く完成在庫で大胆な値引きを行っていることが判明し、マンション業界関係者を驚かせた年でもあった。

 

マンション市場

(写真はイメージです。)

 

マンション業界の奇観

 

ただ、別の「値引きはしない」ことで知られるゴールドクレストは、いまだに方針を変えていない。同社の開発物件では、すでに竣工後10年を迎えるにもかかわらず「新築未入居」の販売が続いている。これはマンション業界の奇観だ。

 

現状、新築マンションを供給するデベロッパーは事業用地の仕入れに四苦八苦している。都心の開発事業に適した土地は高くなりすぎて買えないのだ。今の価格で土地を購入してマンションを開発しても、価格が高すぎて販売不振に陥るのは必定。かといって、今買わなければ1年先に売るものがなくなってしまう、というジレンマに陥っている。

 

こうした現状から新築マンション市場の2018年を予測すると、前半は2016年以前に仕込んだ事業用地などがあるので前年比の供給戸数は小幅な減少にとどまるはずだ。しかし、後半は供給戸数が急激に落ち込みそうな予感がする。どのデベロッパーも思うように事業用地が買えていないからだ。

 

主要デベロッパーはマンション開発事業を縮小

 

さらに言えば、大手を中心とする主要なデベロッパーは中長期的にマンション開発事業の大幅な縮小を織り込み始めている。商社などは撤退の可能性すらある。

 

人手不足が続く限り、建築費が以前のような水準に戻るとは思えない。事業用地の仕入れでは、インバウンド需要が旺盛なホテル業界と競合する。ホテル業界の損益分岐点は、稼働率の上昇により大幅に下がっている。つまり、マンション業者よりも高く土地を買っても十分に採算が取れる状態なのだ。

 

仮に高値で仕込んだ土地に、高止まりした建築費を投じて新築マンションを開発したとする。その販売価格は、周辺エリアの築浅中古マンションの3割増し以上の水準に達することさえ考えられる。今はまさにマンションデベロッパー受難の時代。この傾向は当面変わらないと考えて良さそうだ。

 

中古マンション市場

 

一方、中古マンション市場はどうなるのか?

 

この国は全体として、人口減少によって住宅の余剰感を深めている。実のところ、都心エリアでも中古マンションの空き家率が大幅に高まっているのではないかと私は推測している。その理由は、2017年いっぱいを通して市場に売り出される中古マンションの物件数が徐々に増えてきているからだ。

 

さまざまな指標があるが、もっとも分かりやすいのはレインズへの登録件数であろう。これがジワジワと増え続けている。ところが、成約件数が追い付いていない、というのが今の状況。「売り出してはいるけれど何カ月も成約できない」という物件が増えているのだ。

 

需要と供給の関係から考えれば、都心の中古マンションは、いつ鮮明な下落傾向に転じてもおかしくない。今は売り手が価格を下げずにガマンしている状態と考えられる。北朝鮮情勢など地政学的局面や、金利上昇などのキッカケがあれば、都心の中古マンション市場はハッキリとした下落のカーブを描き出す可能性がある。

 

空き家率は現状維持の可能性も

 

一方、現状維持できる可能性も相当ある。地政学的局面や金利上昇がない場合、都心の中古マンション市場では大きなマイナス材料が見出せないのだ。さらに多くの人々は「不動産価格は五輪開催までは上がり続ける」という根拠不明の都市伝説に捉われている。こういった心理的側面は市場にそれなりの影響を与える。

 

企業業績は絶好調だ。2018年3月期には過去最高益を更新する企業が続出すると予想されている。それを織り込み始めた株価もここ数カ月上がり続けた結果、平成バブル崩壊以来の水準に達している。

 

一般に、景気のいい時に不動産価格は下がらない。2018年いっぱい好景気感が続くとすれば、都心の中古マンション市場だけが下落基調になるとは考えにくい。売り手もガマンを続けて売り出し価格を切り下げるようなことはしないはずだ。

 

東京都心のマンション価格は実力以上

 

ただし、今の東京都心のマンション価格が実力以上の水準にあることも確かだ。その理由は、投資利回り。都心の人気エリアだと、中古マンションを購入して賃貸に回した場合、NOI(経営純利回り)が4%前後となっている。

 

中古マンションへの投資は、さまざまなリスクが伴う。資産価値が減少するリスクや融資金利の上昇リスク、事故物件になってしまうリスク、管理組合でトラブルが起こるリスク、災害のリスク……数え上げればキリがない。それにもかかわらず、利回りが4%というのは小さすぎる。いずれかのリスクが顕在化すれば投資はたちまち大損失となる。

 

私は、不動産投資というのは最低でも5%の利回りがなければ意味がないと考えている。リスクが最も低くて5%だ。リスクの高い物件であれば10%を超える利回りでも、何ら不思議ではない。

 

したがって、利回り水準が4%前後になっている都心の中古マンション市場は、やや不健全な状態だ。バブルと言い換えてもいい。物件にもよるが、最低でも利回りで1%分はバブルなのだ。

 

現状で利回り4%の中古マンションが5%になるには、物件価格が2割下がらなければならない。最低で2割だ。物件によっては3~5割となる場合もあるはずだ。その下落余地部分がバブル分と見なせる。

 

2018年のマンション市場の見通し

 

2018年のマンション市場は、キッカケがあると、このバブル分を調整しようとする下落が起きる。何事もなく今の好景気感が続くようだと下落は始まらない。逆に株価の上昇度合いによっては再び上昇基調に転じる可能性すらある。しかし、上昇したとしてもバブル分を膨らませるだけ、いつか下落はやってくる。

 

前回の選挙で、2019年10月の消費税増税は「予定通り」ということが確認された。本当だろうか。それを決めるのは2018年の後半。このまま何もなく株価が上がり続ければ、三度増税延長とする理由はなくなる。

 

仮に消費税が予定通り増税されると、それは確実にキッカケとなる。その時点で今の金融緩和が続いていれば、日銀に打てる手はほとんどない。消費増税による不景気が確実にやってくる。当然、不動産価格も下落基調となり、バブル分の調整が行われるだろう。あるいは、相場というのは往々に行き過ぎるので、バブル分以上の下落が起こるかもしれない。

 

バブルというのは早めに潰しておくに越したことはない。2019年でも遅すぎるくらいだ。

 

 

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

 

この記事に関連する「なぜ不動産バブルが繰り返されるのか? 敏腕不動産鑑定士が徹底解析」もぜひご覧ください。

 

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