住宅をめぐっては、さまざまな論議がなされている。「マンションVS戸建て」や「賃貸VS購入」、「新築VS中古」といったものである。その多くは水掛け論と言ってもよいもので、いくらやっても決定的な結論は出ない。なぜなら、その答えは個人の価値観や生き方に帰せられることが多いからだ。

 

しかし、一般消費者がこれらの論議をすることには、それなりの意味がある。何よりも、「自分はどういう住宅を求めているのか?」「自分が住宅を求める理由は何か?」といった住まい選びの原点を見つめ直すことができるからだ。

 

マンション管理

(写真はイメージです)

 

さて、今回はマンションにおける議論「新築 VS 中古」について、一つの視点を提供したい。分譲マンションには欠かせない「管理」という視点だ。

 

分譲マンションは小さな自治体

 

分譲マンションは通常1戸1戸の所有者が異なり、各住戸の持ち主を「区分所有者」と呼ぶ。全ての分譲マンションでは、区分所有者全員によって管理組合が組成されている。これは区分所有法という法律で決まっていることで、管理組合の存在しない分譲マンションは法的にあり得ない。(管理組合が機能していない分譲マンションはあるが、これについては別の機会に詳しく述べたい)

 

分譲マンションはいわば小さな自治体だ。管理組合はその行政をつかさどる役所であり、理事会は議会、理事長は首長だとご理解いただくと分かりやすいだろう。管理組合に払っている管理費や修繕積立金は税金だ。

 

自治体なら、自分で立候補して当選しないと議員にはなれないが、管理組合の場合はよほど大規模なマンションでない限り、何年かに1度は必ず理事の当番が回ってくる。他の区分所有者の代理として管理組合の運営に携わらなければいけない。

 

管理組合の主な仕事は、管理業務を委託している管理会社の「管理」、つまり彼らへの対価にふさわしい仕事を行っているかのチェックだ。しかしダメな管理組合は、この関係が逆になっている。管理会社が管理組合のお仕事を「サポート」などの名目で「管理」している状態にある。いわば、出入り業者の言いなりになっているダメな自治体と同じだ。

 

分譲マンション大規模修繕工事の落とし穴

 

管理組合にとっての最重要イベントは、十数年に1度の大規模修繕工事。これをどういう風にやるかを決めて年に1度の総会で可決するのが大仕事だ。通常なら2~3年の準備期間を要する。なぜ重要かというと、巨額のお金が動くからだ。目安としては1住戸あたり100万円、100戸のマンションなら1億円ということになる。

 

この大規模修繕工事を、日頃から管理業務を委託している管理会社に請け負わせるというケースが多い。しかし、大規模修繕工事を管理会社に発注しているような管理組合は、相当に管理会社に「管理」されているダメ組合である。

 

そもそも、社内に工事部門を抱えているような管理会社はない。大規模修繕工事を請け負っても、百パーセント外注となる場合がほとんど。そこで3割から4割の利ザヤを稼ぐという。逆に言えば、管理組合がしっかりしていれば4割も安く大規模修繕工事ができたということだ。

 

分譲マンションの大規模修繕工事は、発注側がほぼ素人なので、請負側が大きく利ザヤを獲れるケースが多い。これをビジネスフィールドにしているコンサルタントや専門業者も多い。そして残念ながら良質な人々ばかりではなく、むしろ「隙あらば、うまくだまして大もうけ」をたくらむ輩がうごめいている。

 

発注側である管理組合にも、うまく立ち回って裏でリベートをせしめるようなお方も出てくる。つまりは、政治家が賄賂をもらって特定業者の便宜を図るのと同じ構図だ。

 

マンション管理という利権構造が生み出す腐敗

 

このように、マンション管理という世界は立派な利権構造を構成している。利権の基になっているのは、各区分所有者から徴収される管理費と修繕積立金、その他。そのお金をどう使うのか、というところから利権が発生している。

 

管理組合の運営がうまくいっているマンションは、管理費や修繕積立金の負担が抑制されている。自治体で言えば「税金が安いのに、行政機能が行き届いている」のと同じ。逆にうまく機能していない管理組合は、高いお金を徴収される割に応分のサービスが提供されていない。これは管理組合が手を抜いているか、組合のどこかが腐敗している。

 

少し前に、ある管理組合の理事長を11年間務めていた人が修繕積立金を7億円横領していた、という事件が発覚して話題になった。管理組合が利権構造である以上、そういうことは起こり得る。

 

資産価値に反映するマンション管理の良し悪し

 

マンション管理というものは、このように人間の組織が持つ弱点を過不足なく備えている。
管理の良し悪しは、資産価値に反映される。つまり、管理がダメなマンションは資産価値が他物件よりも大きく下落していく。逆に、管理面で優れたマンションは資産価値を向上させていく。

 

今、都心のマンション市場は新築から中古へと主役が交代している。中古の方が新築よりも売買成約数が多くなっているのだ。

 

新築の場合、物件を管理面で判断することはできない。多くの新築マンションは建物が完成する前に販売されるからだ。さらに、完成後1年数カ月先に開催されることが多い管理組合の第1回総会の前には完売してしまうケースがほとんどである。

 

一方、中古物件は管理組合の運営能力を事前にある程度確認してから、購入の可否を決めることができる。もちろん管理組合だけでなく建物の状態をも確認できる。

 

さらには、工事精度まで推測することさえできる。例えば、築10年もたっていないのに雨漏りが発生しているようなマンションがたまにあるが、明らかに施工不良だ。そんなマンションは以後何十年も雨漏りや水漏れに悩まされ続けるだろう。絶対に買うべきではない。

 

では中古マンションの管理機能面や建築施工の状態は、どうすれば分かるのか? カンタンである。そのマンションの管理組合が年に1度開く、総会の議事録を過去数年分、取り寄せて熟読すればいいのだ。

 

例えば決算報告に「雨漏り対策工事費」とあれば、すなわち雨漏りがあったということ。理事の選任などでもめている場合は、人間関係のこじれが生じている。こういった中古マンションの内部事情をかなり正確に読み取れるのが、総会議事録なのだ。

 

そして総会議事録は、前出の区分所有法によって、利害関係者から閲覧の要求があった場合には開示しなければならない、と定められている。だから購入を検討しているマンションがあれば、仲介業者を通じて総会議事録の閲覧を要求すればよい。数千円の手数料を請求される場合もあるが、数千万円以上の買い物をするわけだから、その程度の費用を惜しむべきではない。

 

たいていはPDFで送られてくるが、中には「過去1年分を冊子で閲覧するのみ」といった条件を出す物件もある。そういうマンションも買うべきではない。見せたくない事情を抱えている、ということだからだ。私が知る限り「過去1年分を冊子で閲覧のみ」というマンションは、過去に大規模修繕工事の見積もりを大手施工会社数社に辞退されていた、という事情があった。

 

新築マンションの購入は、ある意味「ババ抜き」のようなものである。施工不良の可能性もあれば、管理組合が悪意の人間に支配され続けていることもあり得る。「負け」は少ないかもしれないが、ギャンブル的な要素があるのだ。

 

中古マンションはどうかというと、「後出しジャンケン」に近い優位性がある。少なくとも現状については、自らの目で確認できるからだ。「どうなっているのか」「どうなるのか」がわからないものに大金を投ずるわけではない。

 

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々にわかりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

 

この記事に関連する「マンションの売却で考慮すべき「新築プレミアム」とは」もぜひご覧ください。

 

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