筆者は、マンション購入に関する無料・有料の相談を行っている。初回のメール相談は無料、面談は有料だ。そこで様々な方々のマンション相談の悩みを聞くので、どんな属性の方が、どのようなマンション購入で悩んでいるのかがよく分かる。

 

実のところ、マンションの購入というのは、ある一面で分かりやすい。インターネットなどで誰でも表面的な市場価格を調べることができるからだ。「SUUMO(スーモ)」や「HOME’S(ホームズ)」といった便利なポータルサイトもある。買いたいマンションの名前を検索窓に打ち込めば、それこそたちどころにネット上の市場価格が分かってしまう。

 

しかし、自分が保有しているマンションを売却しようとすると、事はさほどカンタンではない。

 

ネット上で大まかな市場価格は分かるだろう。「一括査定サイト」などという便利そうなページもすぐに見つかる。そういうところを利用して、アプローチしてきた業者に「専任媒介」で売却の仲介を依頼するのも簡単。だが、彼らの提示した価格では、そう簡単には売れないのが現実だ。なぜだろう?

 

マンション

(写真はイメージです。)

 

実は、中古マンションの流通(中古)市場には、広くて深い闇が存在している。その闇は、大手の業者から中小・零細にいたるまで、業界に蔓延している。これほど情報の開放が進んだ現在でも、その闇は消える気配がないのだ。これについてご説明しよう。

 

まず、不動産の仲介業は「手数料ビジネス」である。売買が成立して、初めて仲介手数料が得られる。成立しなければ売上はゼロだ。だから、彼らは基本的に売買を成立させるようとする。これは当然だろう。

 

次に、彼らはできるだけ手間暇かけずに多くの手数料を得ようとする。そのために、顧客に損失を被らせることを躊躇しない。

 

中古マンションの売買を仲介すると、売り手側と買い手側に「売買額の3%+6万円と消費税」という手数料が生じる。売り手側と買い手側の不動産業者がそれぞれから手数料をもらうという取引は、ごく当たり前のように思える。

 

ただ、同じ業者が売り手と買い手の双方から、仲介手数料をもらえる取引もある。売却を依頼された仲介業者自身が、買い手を見つけた場合だ。この場合、その業者は双方から手数料がもらえるから、売買代金の6%+12万円+消費税が売上となる。

 

自分で買い手を見つけても、他の業者が買い手を見つけても、仲介業務にかかる手間暇はほとんど同じだ。であれば、自ら買い手を見つけた方が効率はいい。

 

この、自分が売却を依頼された物件で、自分が買い手を見つけて双方から手数料を得る取引を、業界用語で「両手」と呼ぶ。逆に、売り側か買い側の一方からしか手数料が得られない取引は「片手」。仲介業者としては、「両手」の方が断然「美味しい」。

 

そこで、多くの仲介業者は基本的に「両手」を目指すことになる。そのためには、売却依頼を受けて専任媒介契約を結んだ物件の情報を、他の業者に知られないようにしたい。こうやって売却依頼物件を自分だけのものにする行為を「囲い込み」と呼ぶ。しかし、これは法律上禁止されている。

 

不動産仲介業者は、専任媒介で売却を依頼された物件について、契約日から7日以内にレインズと呼ばれる指定流通機構に登録しなければいけないことになっている。レインズに登録すれば、全国の仲介業者がその物件の買い手を見つけることができる。この制度がうまく機能していれば「囲い込み」は不可能だ。

 

ところが、財閥系の大手不動産仲介会社でも「囲い込み」を行っているのが現実だ。どういうことなのか?

 

私はマンション購入の相談の他に「売却相談会」も行っている。マンションその他不動産の売却に関して、様々な悩みをお伺いして私なりの解決策をご提案しているのだ。

 

ある方が、マンション売却のお悩みを相談に来られた。すでに名の知れた大手業者に売却を依頼しているが、なかなか売れないという。レインズで調べてみると、きちんと登録されている。理論的には、全国の業者がその売却物件の買い手を探しているはず。しかし、案内さえ入らないというのだ。

 

そこで、私と提携関係にある不動産仲介の業者に、相談者が依頼している大手仲介に電話をかけてもらう。「レインズに出ている○○○○という物件ですが、案内が入りそうなのですが、まだございますでしょうか?」業者間ではよくある、物件がまだ存在するかどうかの打診だ。

 

そこで「大丈夫です。いつでもご案内できます」という返答が返ってくれば、その業者は「囲い込み」をしていない。よくあるのは「その物件はただ今商談中ですので、案内はちょっと待ってください」という返答。こう言っておけば、ともかく他業者からの案内を防げる。

 

中には「囲い込み」が露骨な応対もある。「その物件は、両手をやりたいので案内できません」これは完全に宅地建物業法違反だ。しかし、こんなことを平気で言う業者も現に存在する。この業界の底辺に蠢く、業者の遵法精神の欠如には驚くばかりだ。

 

大手仲介がよく使う手は「担当者が不在なので今は分かりません」という応対。それで「では担当者が戻られましたら連絡いただけますか」と依頼しても、まず連絡はない。これはもう「囲い込み」以外の何物でもないだろう。

 

仲介の依頼を受けた業者が、市場価格よりも高めの売り出し価格を提案している場合も多い。ネット上の一括査定などを利用すると、専任媒介での契約が欲しい業者が、無理目の高値査定額を提案することはよくある。それを信じて「そんな高値で売れるなら」と、専任契約を結んだ売り手が騙されているケースだ。

 

売り出しをかけて何か月もたつのに一向に売れそうな気配がない。案内もほとんど入らない。売却を依頼した側は、いつまでたっても買い手が現れないのでイライラするだろう。そのうち、その業者が値下げを提案してくる。これを業界用語で「値こなし」という。

 

ただ「値こなし」の後に買い手を見つけてくるなら、まだ良心的だ。悪質なのは、当初査定額の7割くらいの価格を提示して「この額ならすぐに契約したいという業者がいます」という提案だ。売り手が焦っていると、こういう提案を受けてしまったりする。そうなると、専任媒介を結んでいる業者は大儲けできるわけだ。

 

まず、そもそも高い査定額を提示して専任媒介の仲介契約を結んでいる業者は、最初からまともに売却の仲介をするつもりはなかったと考えていい。

 

高い査定額を示して専任の契約を取り、その後「囲い込み」で物件を隠してしまう。当然、買い手は現れない。数か月囲い込んで売り手を焦らせ、程良いところで、あらかじめ握っている買い取り業者に買わせる。ここで売り手と買い手の双方から「両手」の仲介料を得る……という流れだ。

 

さらに、これでは終わらない。仲介業者は、その買い取り業者が買った物件を市場で売り出す際にも、専任の仲介契約を結ぶ。そのことも、買い取らせる段階で握っているのだ。そして、今度こそ本当の買い手を見つけるために活動する。

 

もしうまく買い手が見つかれば、最初に専任媒介を結んでいた仲介業者は、1つの物件で「両手」を2回行ったことになる。普通に買い手を見つける仲介と比べると、約4倍の手数料収入だ。

 

この流れで、最も損失を被ったのは、その物件の最初の売主である。だいたい、本当に市場で売却できる価格の8割程度で売らざるを得ない状況に追い込まれることが多い。

 

このように、何も知らない売主を騙して「囲い込み」「値こなし」をした上で、自分の息のかかった業者に買い取らせるような行為は、日常的に行われている。誰もが知っている財閥系の大手でも、こういう取引を堂々と行われているのが、不動産仲介の世界なのだ。この悪弊は、なかなか改まらない。

 

何も知らずにネット上で一括査定などを依頼すると、知らない間に、この流れにはめこまれてしまうことになる。だから、中古マンションは買うよりも売るのが難しいのだ。

 

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

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