「マンションは買うよりも売る方が難しい」という話を前回書かせていただいた。今回は、売るのを難しくしている原因である「仲介業者の囲い込み」について、もう少し詳しく突っ込みたい。

 

前回も書いた通り、囲い込み自体は法律で禁止されている。しかし実際には、大手から中小、零細に至るまで、あからさまに囲い込みは行われている。いわば業界にとって「公然の秘密」みたいなものだ。

 

この事実に気付いた多くの人は呆然とする。「そんなことが本当に行われているのか?」それはそうだろう。明らかに売主を騙している。本来1億円で売れる物件を8千万円で売却することに納得させてしまうのが囲い込みであり、買い取り再販への誘導だ。売主に平気で数千万円の損をさせるのが、不動産仲介の闇なのだ。

 

囲い込み

(写真はイメージです。)

 

ここで私が最も罪深いと感じるのは、仲介業者たち一人ひとりは、そうやって顧客の利益を剥がし取って自分たちのものにしている悪辣な商行為に対して、何の罪悪感も持っていないということだ。

 

最初に売主の物件を専任で預かった後、囲い込みから、再販業者への安値売却を誘導する違法行為。さらに、物件を買い取った再販業者が市場で売却するにあたって自らが専任媒介に入ることをあらかじめ握っておく行為。これら全て物的証拠によって立証すれば、宅地建物取引法違反は当然として、刑法の詐欺罪や背任罪にも問えるのではないか。

 

不動産の仲介業者が日々行っている、前述のような「売主の得べかりし利益」を毀損する行為は、立派な犯罪だ。要は、仲介業者たちはバレても責任を問われないからやっているだけ。暴かれて法的責任を追及されれば、懲役刑を課される可能性もある。

 

これはよく聞く話だが、大学を卒業して不動産仲介の業界で社会人をスタートさせた初々しい新人たちも、最初は自分たちの悪弊に思い悩むという。しかし、業界でキャリアを積むには中途半端な正義感は邪魔でしかない。そうやって日々過ごすうちに、いつかは心が摩耗してしまう。気が付けば自分も当たり前のように顧客に嘘がつける「一人前」の不動産仲介業者に成長してしまうのだ。

 

そういった悪弊に染まれない人間は、「この業界は自分に合わない」と去っていく。普通に考えれば、顧客に嘘をついて損をさせるという仕事を、心の負担に感じない方がおかしい。

 

例えば、証券会社の営業であれば、自分が売っている金融商品が「もしかして将来値下がりするかもしれない」と考えたとしても、それが本当に値下がりするのか、あるいは値上がりして顧客に利益をもたらすのか、未来のことは分からない。

 

ところが、1億円で売れるであろうマンションをわざと売らずに、息のかかった再販業者が8千万円で買えるように嘘をつき、自分たちだけはノーリスクで通常の4倍もの手数料をせしめる行為は、普通に考えれば「顧客に損失を与えている」と理解できるはずだ。

 

そんな心の負担を乗り越え、目の前で明らかに顧客が損失を被っているのを平気で眺めることができるメンタリティーがなければ、一人前の不動産仲介はできない。それって、どこかおかしくはないだろうか?

 

はっきり言って、「不動産屋」に対する世間の目は、冷たく、厳しい。彼らに対する、もっともありがちなイメージは「嘘つき」だろう。

 

私が知る限り、そのイメージに当てはまる業界人の割合は7割くらいであろうか。積極的には嘘をつかなくても、「顧客にとって利益になり自分にとって不利益になりそうな情報は伝えない」というタイプの不動産屋は、全体の9割を超えると思う。

 

そして一般のエンドユーザー側も、そういった不動産屋の実態というものに気付いている。だから、「不動産屋」という職業はいつまでたっても世間一般から尊敬されない。また、その業界にいるというだけで胡散臭く見られるのだ。

 

こういったイメージには、しっかりと原因があるから厄介だ。そして、その悪いイメージの半分以上は「囲い込み」などの違法行為を公然と行っている仲介業者が作り上げているのではなかろうか。

 

この「囲い込み」という違法行為を、止めさせることはできないのだろうか?基本的に違法なのだから、厳しく取り締まればなくなるのだろうか?

 

実は、仲介業者にも囲い込みをする言い分はある。少しだけ代弁してみよう。
・仲介手数料が安すぎる
・売り手と買い手のコミュニケーションを滑らかにするため

 

不動産取引の手数料は、その上限が、売買価格の3%+6万円(と消費税)である。売り手も買い手も、この額を仲介業者に払う。どちらか片方だけの仲介をすれば手数料は最大3%+6万円だけ。これを業界用語で「片手」という。売りと買いの両方を仲介すればこの倍。業界用語でいう「両手」となる。

 

彼らの多くは、「片手」の「売買価格の3%+6万円」では安すぎると考えているのだ。本当にそうだろうか?

 

私は、この「片手」を半額に値引いた上に「両手は一切やらない」という経営方針の仲介業者を身近に知っている。つまり彼らが1つの取引を仲介して得られる手数料は「両手」の4分の1。片手の「3%+6万円」ですら安いと考えている業者から見れば、破格の水準ではないか。

 

「そんなのでやっていけるの?」という声が聞こえそうだ。しかし、その会社の業績は好調である。要は、ビジネスの組み立て方次第ではないか。

 

仲介業というのは手数料ビジネスだ。中古マンションを探している1人の顧客に対して、何十物件と案内しても、売買が成立しなければ得られる手数料はゼロ。案内するための経費は全て仲介業者の負担となる。

 

1物件の売買を成立させるのに、何十物件も案内していれば「3%+6万円では安すぎる」ということになろう。逆に、最初に案内した物件で売買契約が成立すれば「3%+6万円」は、美味しい取り分ではないか。

 

この問題は、ビジネスのやり方を工夫することで何とかする手もあるが、今の制度を変えるという抜本的な解決法もある。要は「3%+6万円」という上限を取り払うのだ。

 

より丁寧な対応を求める顧客へは5%なり10%の手数料を請求できるようにする。逆に、自分が買いたい物件が既に見つかっていて、仲介業者には売買の取りまとめや契約業務を依頼するだけなら、2%に満たない手数料でも仲介業者は十分に採算が取れるはずだ。

 

また「売り手と買い手のコミュニケーションを滑らかにするために、囲い込みは必要」という、いかにも独りよがりな理由もよく聞く。

 

そういう面も少しはあるかもしれない。しかし、双方に不満が残る場合も多い。何よりも、本来は利害が対立している「売り」と「買い」の双方の側から、「お前はどっちの味方だ?」という疑念を抱かれる。

 

民法では、こういう利益相反の関係にある取引において、双方の代理を務めることは禁止している。しかし現在の宅建業法では、不動産の取引についてのみ例外的にこの「双方代理」を認めている。言うなれば「民法の精神に反している」のが現状。

 

実は、他の先進諸国でも不動産における両手仲介を法律で禁止している場合が多い。また世界的な潮流を見ると、今は禁止していない諸国でも今後は原則禁止となりそうである。

 

私は、日本も当然ながら、原則として両手仲介を禁止すべきだと思う。現実問題として、1億円で売れるマンションを囲い込まれて両手仲介に持ち込まれた上、8千万円で売らされている、という被害者が多く存在するからだ。

 

両手仲介を法律で禁止にすれば、仲介業者はこのケースのように再販業者を自分が紹介しても、買い側に別の仲介業者がつくか、買い側の手数料を放棄するしかなくなる。つまり、美味しさが半減する上で、「囲い込み」という違法行為のリスクを冒すことになる。

 

不動産屋は、たいていが利にさとい。儲からないことには手を出さない。そして複雑なスキームも嫌う。両手仲介が禁止になって美味しくなくなれば、自然と囲い込みも少なくなるだろう。
もちろん、今後は囲い込みという違法行為に対しても、今以上に厳罰で臨む姿勢が必要だ。

 

さて、去る10月22日に投開票された衆院総選挙では、またしても自民・公明両党の大勝となった。民進党は瓦解状態。そして、自民党は伝統的に不動産業界と仲がいい。不動産業界が嫌がる「両手仲介の禁止」や「囲い込みの厳罰化」といった政策は当面実現しそうにもない。

 

しかし、かつて自公政権が崩壊した2009年7月の総選挙において、当時の民主党が掲げたマニフェストの中には「一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止する」という一文が存在した。

 

あの日本中の希望を塞いでいた暗い民主党政権には戻ってほしくない。しかし自民党もいつかは、不動産業界の悪弊が国民全体に不利益をもたらしているという現実に目を向け、かつて民主党政権時代の幻に終わった「両手仲介の禁止」をぜひ実現させてほしい。

 

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

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