先日、ある方が新築マンションの購入相談に来られた。
その方の悩みは、今住んでいる所のご近所で、近々販売が始まる某新築マンションを買うべきか、否かということだった。

 

その物件は、私から見ると平凡な新築マンション。近郊のターミナル駅から徒歩10分、立地や近隣環境は普通。可もなく、不可もない物件だった。

 

ただ、やたらと価格が高い。5年前の軽く1.5倍程度だ。同時期の近隣物件よりも1~2割は高く売られようとしていた。その価格水準は、現在山手線の内側で販売されている新築マンションでも、半分くらいは予算内に入りそうな額だった。それはもう、私の眼から見ると、やや無謀な高値挑戦に思えた。

 

それでいて、引き渡しは1年半も先の話。売主は他業種大手の不動産子会社、しかし業績はそれなりにあり素人集団とも呼べない会社だ。ただ、どうもそのプロジェクトに関しては、土地を高く買ってしまったようだ。施工や販売、管理会社の面子を見ていると、いかにも高値買いしたんだな、とピンときてしまう。

 

マンション購入

(写真はイメージです。)

 

ところが、相談に来られた方はそのマンションを買う気満々。私のところへ来たのは、背中を押してほしいような感じに受け取れた。こういう状態を、私は「買いたい病」と呼んでいる。その物件以外に目が行かなくなってしまい、熱に浮かされたように「買いたい」という思いを募らせるのである。

 

マンションを買う、というのは、結婚によく似ていると言われる。選びすぎると時期を逃す。どこかで「エイ、ヤー」という決断をしなければならない。しかし、それでもって決めた結果、後悔するケースが多々ある。だから、パッションのみで決めるのは良くないと思う。

 

自分が求める全ての条件を満たす物件など、この世には存在しないと考えた方がいい。しかし、だからといってアレもコレもと妥協する必要もない。そこは一つひとつの条件を冷静に判断すればいい。

 

その方が、その平凡な物件を買いたいと考えるのには、きちんと理由があった。もうすぐ小学生になる男の子が2人いて、「通学路が心配」というのだ。元気がいいので、車の走っているところに飛び出さないか心配なのだという。

 

だから、通学路では歩道と車道がきっちりと分かれていることが最低条件。通学途中で大きな幹線道路を渡る必要がない、というのも譲れない条件だという。その点、検討中のマンションは小学校に隣接していて、そういった心配が一切ない。

 

さらに言えば、その小学校は公立ながら越境入学を希望する率がそこそこ高いという。親としては、そのマンションを購入してその小学校に通わせれば、いろいろな面で安心この上ないだろう。

 

だからといって、この明らかに割高なマンションを買うべきだろうか? そこは各人の価値観の問題である。その方にとって、そのマンションには1割や2割の割高感を払しょくするほどの価値があるのかもしれない。そう思えば買えば良いだろう。

 

私の仕事は、市場にあるマンションの資産価値を判断できる材料を提供すること、だと自任している。だから、資産価値の面からだけ意見を申し上げた。

 

まず、そのマンションは今の価格では竣工までに売り切れないはずだ。そうなれば値引き販売となる。その時点で、定価で買っていた住戸の資産価値は減じたことになる。

 

つまり、完成1年半前に契約するというのは資産価値が下がるリスクを背負うことでもある。買うとしても、竣工前後までは待つべきであろう。そうすれば、うまく値引きを引き出せるかもしれない。私ならそうする。

 

竣工1年半前に契約し、資産価値が契約時よりも上がっている、という未来も理論的にはあり得る。実際ここ数年、そういう現象は都心で供給された新築マンションで起こっている。しかし、今のマンション市場はどこを見ても天井感に満ちている。都心の超一等地でもない限り、業界内でこれ以上マンション価格が上がると考えている人はほとんどいないはずだ。

 

さらに、その方は全額キャッシュでのご購入を考えておられた。これは不動産を販売する側から見ると、通常はかなり好条件な買い手となる。ただし新築マンションに限っては、全額キャッシュであろうと住宅ローンを利用しようと、さして変わらない。

 

ローン利用者も、融資が確実に下りる属性であればキャッシュでの購入者と比べて何の遜色もない。逆に、キャッシュで購入する方は何かと要求が多いので、人気物件では敬遠されることもある。新築マンションの販売業者は、なるべくクレームを付けない客に売りたいのだ。

 

全額キャッシュの場合、中古市場だと購入の選択肢がかなり広がる。わざわざ引渡しが1年半も先の物件にしなくとも、都心の人気立地でヴィンテージクラスの中古物件が選択肢に入ってくる。もちろん、新築マンションもある。わざわざ、ターミナルとはいえ近郊の「駅徒歩10分」に注ぎ込むには惜しいほどの金額なのだ。

 

さらに言えば、全額キャッシュなら文字通りの「即決」ができる。中古マンションの取引で「明日、現金で払う」という条件を出せば、1か月後の決済で購入するよりも2割安く買えるケースなど、ザラにあるのだ。そのあたりは、また別の機会に詳しく述べたい。

 

つまり、同じ額を投ずるのなら、そのような資産価値の不安定な物件を購入するよりも、もっと資産評価の高い物件がありますよ、ということ。そのことも素直に申し上げた。

 

相談者がその「小学校まで安全に通学できる」「1年半先に引渡し」の新築マンション購入を諦めたかどうかは分からない。私としては、「様々なリスクを背負ってでも、2人の子が安全に通学できる条件の方が大切だ」という価値判断があってもしかるべきだと思う。それは個人の価値観の問題だ。

 

ただ、探しさえすれば、都心近郊のエリアで「小学校まで安全に通学できる」マンションなんて、世の中にはたくさんある。山手線の内側にある名門の公立小学校に限定しても、選択肢は何十と出てくるだろう。ましてや、それだけの金額が予算なのだ。

 

マンション選びでは、あまり既成観念にとらわれると、数年後に後悔する未来が待っている可能性が高い。視野を十分に広げながら探した方が、より条件に適う物件が見つかるはずだ。

 

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

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