新築マンションが売れていない。
 
私は東京23区のうち20区と、川崎市の一部やさいたま市浦和区などの新築マンション建設地をあまねく現地調査して、「資産価値レポート」というものを発行している。おそらく、首都圏のマンション市場をウオッチしている人間の中で、私ほど多くの新築物件の販売動向を見極めている者はいないはずだ。

 
2016年の夏ごろから、販売の陰りが鮮明になってきた。多くのエリアで新築マンションの竣工後も販売が続く、いわゆる「完成在庫」が目立つようになったのだ。特に、世田谷区などの実需エリアでその傾向が強い。
 

新築マンション
(写真はイメージです。本文の内容とは関係がありません。)
 

では、なぜ売れなくなったのか?

 
理由は明解。価格が高くなったのだ。その最大の原因は、土地価格と建築費の高騰に尽きる。
 
まず土地の高騰は、2013年3月の黒田東彦・日銀総裁の就任以降に行われた一連の「異次元」金融緩和によるものである。
 
世の中に出回るお金の量を4倍に増やした上に、金利は史上最低水準。長期金利の誘導目標はゼロ。かつてない金融緩和だから、「異次元」と呼ぶにふさわしい。これで国内に出回るお金は無制限といえるほどに膨らんだ。
 
ところが、日本の不動産には限りがある。特に土地の需要が集中する都心エリアの不動産はさらに限られてくる。有限の不動産に無限の貨幣が注がれたわけだから、バランスは崩れる。その結果、「局地バブル」と呼ばれる、地域限定の不動産価格高騰をもたらした。
 
一方、建築業界では10年以上も前から人手不足だ。それがますます深刻化して、建築コストを上昇させた。マンションの建築単価は20年前の2倍超まで跳ね上がっている。
 
土地を中心とした不動産価格の上昇と、人手不足による建築コストの高騰。この2つの要因が混ざり合って、今の都心バブルを生み出したといえる。
 
その都心の不動産価格高騰は、2013年に始まり、2015年から2016年前半にかけてピークを迎えた。今も一部の取引では、過去最高額となっている。
 
特に2015年には、富裕層による相続税対策と外国人による「爆買い」によって、都心と湾岸エリアの新築タワーマンションが飛ぶように売れた。その結果、マンションデベロッパーは強気に転じ、多少高い土地でも買いまくってマンション開発を進めた。
 
2016年の後半から現在にかけて売り出された新築マンションは、私が「あり得ない」と思えるほどの高値挑戦がいくつも見られた。しかし、それらの物件はデベロッパーの思惑通りには売れていない。
 
今、そういう物件が完成在庫となって、市場で「敗戦処理」的な販売が続けられている。売れない物件は、当然値引きとなる。売れない原因は価格にあるのだから、敗戦処理には値引きが伴う。
 
値引き物件は、オフィシャルサイトの「焦り度」を見れば分かる。トップページに「モデルルーム使用住戸につき新価格発表」や「今なら先着5名様に購入支援金500万円プレゼント」などと、ハデハデしくうたっている物件は、ほぼ百パーセントが値引きされている。
 
そうでない物件でも、建物が完成して1年以上経過していたら、ほとんどで値引きが行われていると考えるべきだ。
 
最近、業界内で話題になっているのは、従来は「値引きは一切しない」と見られてきた財閥系の大手デベロッパーが、竣工後1年以上経過している物件になると、積極的な値引きを行っているという事実だ。
 
例えば、オリンピックの選手村予定地に近い某タワーマンションでは、「ひと声500万円」というスタイルで値引きを行っているそうだ。
 
また、郊外で大々的に独自ブランドを展開している別の大手デベロッパーは、販売不振物件に1,000万円の値引きを行っているという。物件価格3,000万円台の郊外市場で1,000万円の値引きを行うというのは、かなりきつい敗戦処理のはず。それでも「在庫をなくす」ことを優先しているのだろう。
 

そもそも、今回の局地バブルは

 

  1. 異次元金融緩和
  2. 外国人の爆買い
  3. 控除縮小による相続税対策

 
という3つの要因で発生した。この3つのどこにも、「需要の増大」という健全な要素が含まれていない。つまり、実需を伴わない、著しくいびつな構造の価格高騰なのだ。
 
投機・投資の対象でもなく、外国人も関心を示さず、相続税の圧縮効果もない郊外の新築マンションが値上がりしても、収入が増えていない中堅所得者にはついていけない。そして販売不振に陥り、値引きでの在庫処理、という悪循環過程の終局段階が今なのだ。
 
郊外ではないが、基本的に実需エリアであるにもかかわらず、都心並みに価格が高騰した世田谷区や目黒区などの城南エリアや江東区の深川エリアでも、完成在庫の急増とその激しい値引き販売が顕在化している。
 
こういうタイミングで住宅を購入する場合、どういう行動をすべきなのだろうか。
 
まずは、慌てないことだ。値引きをしているからといって、その物件が割安になったとは限らない。市場価格よりも2割高く売り出された物件から1割の値引きを引き出しても、まだ1割は高いことになる。
 
そういう物件を買わないためには、そのエリアの相場観をよく調べてみることが重要だ。
 
中古マンション価格は、新築に連動して上下する。ただ、激しい動きが起こっても数ヶ月のタイムラグが生じることも多い。周りの市場をよく観察しながら、割高に思える物件には、ダメ元でも指値を入れてみるべきだろう。
 
焦る必要はない。今、首都圏のマンション市場は、新築も中古も下落期の入口に入ったところだ。時間は購入希望者にとって有利に働く。市場をよく観察し、物件をよく見極め、慎重に購買行動を決めることだ。
 
不安があれば、信頼できる専門家に相談すべきだろう。私もブログからの無料相談を承っているのでご希望の方はお問い合わせいただきたい。
 
榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

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