2017年6月、拙著「2025年東京不動産大暴落」(イースト新書)が発売された。現在、3刷まで至っている。ほとんど広告らしい広告が行われなかったにも関わらず、何度も増刷がかかったことを嬉しく思うと同時に、世間が「暴落」ということに高い関心を示していることを改めて思い知った。

 
実は東日本大震災の直後、ある週刊誌の編集者や記者たちが何人も私のところにやってきた。「地震によって首都圏の不動産が大暴落する」という特集を組むので、私に企画上の協力をしてくれないか、という依頼だった。その時、私は最初にこう申し上げた。
 
「この地震で不動産が大暴落するなんてことはありません。そもそも不動産は暴落しにくいものです。特にエンドさん(一般消費者)が売買する中古マンションは暴落しません」
 
そう言ったものの、協力できる範囲ではいろいろと意見を述べたりコメントを提供したりした。他にも種々ネタは集まり、その企画は実現。ある程度の注目を集めたと記憶している。ただ、実際に暴落は起こらなかった。
 
湾岸エリアのタワーマンション
(写真はイメージです。本文の内容とは関係がありません。)
 
あの平成バブルが崩壊した時も、2008年のリーマンショックで不動産ミニバブルが萎んだ時も、公平に見て「暴落」と呼べるほどの現象は起きなかった。
 
ただ平成バブルの崩壊後、多くのエリアで、10年ほどかけて中古マンションの価格が半分以下に下落したことは事実である。しかし、1年に2割も下落したという記憶はない。せいぜい1割ちょっとで「暴落」と呼べるものではない。
 
リーマンショック後の不動産ミニバブル崩壊では、3~4年かけて2割下がったかどうか、という印象だ。もっともその後、今の局地バブルによって3割くらい上がってしまったが。
 
しかし、今回の局地バブルでは、今後起こるその崩壊過程で、「1年に2割」という下落があるかもしれない。これが2年続けば、崩壊前の64%の水準になるわけだから、「暴落」と呼んでも異議を唱える人は少ないはずだ。
 
ではなぜ今回の局地バブルは、崩壊の過程で、前2回とは違い暴落的な現象が起こると言えるのか。私が考える理由は大きく2つだ。
 
1 今回のバブルは地域限定で、実需を伴わない購買パワーによって形成された。
2 前2回のバブル時よりも金利との連動性が著しく、局地バブルエリアの中古マンションは金融商品化している。
 
カンタンに解説してみよう。
 
まず1の「地域限定」とは、東京都心と城南・湾岸エリア、川崎市、京都市などの一部でしかバブル的な値上がり現象と購買行動は見られなかった、ということ。他の大部分のエリアでは、むしろ値下がりが続いている。
 
また「実需を伴わない購買パワー」とは、2015年に日本を席巻した中国人の「爆買い」と、相続税対策のタワーマンション購入である。これは2016年には萎み、今はほぼ消えてしまった。
 
つまり、「実際に住む」ために買っていた人は少数派で、バカ高くなったマンションを買い支えたのは投機や節税を目的とした需要だった。こういう「買い」は、機を見るに敏である。風向きが変わると、即座に「売り」に転じやすい。
 
1991年頃に崩壊した平成大バブルの時は、需要の大きな部分は団塊世代のマイホーム購入だった。2006年頃に盛り上がった不動産ミニバブルの時には、団塊ジュニアたちが需要層の中心。つまりは、一定数以上の「実需」がバブルを支えていたわけだ。
 
「住むため」という実需でマンションを購入した人々は、風向きが変わったからといっておいそれとは売らない。自分の住む家が無くなってしまうのだから。
 
さらに、今回の局地バブルのもう1つの特徴は、2で挙げた「金利との連動性」だ。住宅ローン金利は1%を大きく切る水準にまで下がってしまった。そうなると、同じ年収でも住宅購入の予算は金利2%や3%の時代と比べて2~3割上げることも可能になる。
 
だが実のところ、この「低金利=不動産価格上昇」という現象は、エンドユーザーに支えられる住宅市場よりも、ビルやマンションを1棟ごと売買する不動産投資の世界で顕著に見られる。
 
例えば、都市部の不動産市場での最強の買い手は今やリート(不動産投資信託)だろう。彼らは0.2%程度で資金を調達できるので、実質利回りが4%程度の物件でも躊躇なく買えるし、実際に買っている。(そのリートを景気対策で購入してきた日銀にもこの不健全な局地バブル形成の責任はあるが、この話題は別の機会に)
 
また、リートのようなまとまった不動産の売買ではなく、中古マンションを1戸単位で運用するような個人投資家の目で見ても、今や市場価格は金利とかなり連動している。
 
都心部の中古マンションは、賃貸運用の利回りがだいたい4~5%台に収束されてきた。これは金利1.7%くらいで融資を受けて運用できるギリギリのラインだ。市場に出ているほとんどの住戸がこのレンジに収まっている。ということは、それだけ金融商品化している証拠とも言える。
 
今回の局地バブルが前2回のバブルと異なるこの2つの特徴は、下落期には一気にその動きを後押しし、「暴落」を招いてしまう可能性があることだ。すなわち、誰もが先行きの不安を感じたり、金利が明らかに上昇に転じたりした時に暴落現象が起こりえる。
 
そして、暴落が起こるとすれば、それはこの局地バブルで最も不健全に値上がりしたエリアからであろう。それはズバリ、江東区の湾岸エリアだ。
 
私は個人的に、移転問題で大騒ぎになった新市場のそばに建った2つのタワーマンションに注目している。1つは約3年前に、もう1つは約1年前に竣工した。
 
共に地下鉄「豊洲」駅からは徒歩11分以上。買い手が重視する「徒歩10分以内」には入らないばかりか、周辺にはコンビニひとつない。スケールにモノをいわせたプールや温浴施設などの豪華設備も、長い目で見ればお荷物でしかない。その資産性を冷静に眺めると、決して高くは評価できまい。
 
ところが、東京五輪の開催決定とその後の熱気によって、この2つのタワーマンションは、私から見ればあり得ない高値で完売してしまった。そして、その後も新築価格を上回る高値で売買されているように見える。しかし、実際はやや異なる。
 
レインズに登録されている、2017年に入ってからの半年で両マンションの成約数はそれぞれ7件と6件。各々1か月に1件しか成約していない。築1年の方は、竣工以来8件しか成約が登録されておらず、しかも新築時よりも目立って高い成約はほとんどない。世間で思われているほど「値上がり」はしていないのだ。
 
特に昨年の秋以降、ほぼ隣接していると言っていい新市場では、土壌汚染がたびたび報道された。普通に考えて、このマンションに住む人々の健康には何の影響もないはずなのだが、イメージはかなり悪化してしまった。区分所有者や住民には大変気の毒な話だ。
 
仮に今回の局地バブルが弾けて暴落的な価格の下落が起こるとすれば、五輪人気で実力以上に価格が高騰した江東区湾岸エリアが1つの発火点となるだろう。この2つのタワーマンションは要注目ではなかろうか。レインズの成約価格を見ると、なだらかな下落現象を感じずにはいられない。暴落への予兆と捉えることもできるはずだ。
 
榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

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