3月の21日に平成28年の公示地価が発表された。
全般的には上昇基調である。そこに驚きはない。実際に、首都圏では土地の価格は上がっている。近畿圏、中京圏、仙台市、福岡市でも値上がり傾向は鮮明だ。札幌でさえ一部では値上がりしている。ところが、そういった主要都市以外では相変わらず下落傾向にある。

 
東京遠景
(写真はイメージです。本文の内容とは関係がありません。)
 
なぜ、こういったまだらな現象が起こるのか。
 

成長続くインバウンド需要が不動産高騰・下落のカギ

 
理由はいくつか考えられる。
基本的に、土地の価格はその利用価値によって決まる。現在の日本における最も成長力のある分野はインバウンド関連だ。海外からの旅行者はまさに「高度成長」的に増加している。あと2、3年で年間3千万人の大台に達するだろう。
 
そこからでも増加は続く。多くの日本人は気付いていないが、日本は観光資源に恵まれた国だ。自然も、文化財も、全国各地にある。何よりも日本人が提供するサービスのきめ細かさ、あるいは治安的な安心感は、世界のどこにもないものだ。食事のバラエティも豊富で価格もリーズナブル。今までそういったことを海外に知られていなかったのが不思議なくらいだ。

 
世界一のインバウンド大国であるフランスは、年間約8,500万人もの外国からの観光客を受け入れている。フランスの人口は約6,600万人。単純に人口比で見れば日本へやってくるインバウンドは1億数千万になってもおかしくない。日本には、約13億の人口を擁する中国が隣国として控えている。親日国であるインドの人口は中国に迫る12.6億人。彼らの多くは日本に来たがっている。
 
都心では、事業用地をホテル業者とマンションデベが取り合っている。私が見たところ、損益分岐点が飛躍的に向上したホテル業者の方が圧倒的に強い。ただし、ホテル用地には大きな制約がある。まず、そこそこ便利な場所でなければならない。ある程度の広さも必要だ。マンション開発なら30戸でも事業は成立するが、ホテルは最低でも50室は欲しいところだろう。
 
駅から少し離れると、ホテル用地には向かなくなる。そういった場所で土地が売り出されると、マンションデベロッパーが争奪戦を繰り広げる。そういったことが土地価格の高騰につながっている。
 
公示地価が下落している地方は、大半がインバウンド需要を見込めないところだ。つまりは利用価値が下がっているから地価も下がる。
 

不動産価格「だけ」が上昇している、2つの理由

 
しかし、もう少しマクロに考えたい。日本経済を眺めると、土地やマンションなどの不動産以外の価格は、ほとんど上がっていない。みなさんの給料もさほど上がっていないはずだ。であるのに、3年前に消費税は上がった。光熱費や運賃などの公共料金、年金や健康保険、介護保険の負担額も微妙に上がっている。つまり、実質所得は下がっていると見なせる状況にある。それなのに、なぜ不動産価格は上がるのか。
 
ここには大きな理由が2つある。
 
まず金利である。最近やや上昇の気配はあるが、金利は未だに史上最低レベルである。
今や都心の不動産の最終的な買い手は、額の大きなものならリート、区分所有のマンションなら個人。どちらも銀行からの融資を利用する。その金利が史上最低なのだ。つまり、歴史上、今が最も買いやすい環境になっている。だから、多くのリートや個人が高くなった不動産を買っている。
 
なぜ金利が低いのか?それは、黒田日銀総裁が採用した異次元金融緩和の影響だ。市場に出回るマネタリーベースを就任以前の約4倍に増やした上に、金利を一部マイナスにまで誘導した。
 
2つ目の理由は、需要と供給のアンバランス。
 
管理通貨制度の元では、中央銀行がその気になればお金はいくらでも増やせる。その禁じ手をためらうことなく使っているのが今。お金には限りがない。
はたまた、スーパーで買えるような食品や工業製品はいくらでも増産できる。自動車や電器製品も供給過剰。
 
しかし、不動産には限りがある。限りないマネーに対して、有限なのが不動産。こればかりは増やせない。だから、今の日本では不動産価格だけが上昇しているのだ。
 

不健全な公示地価

 
しかし、厳密な意味で日本の土地の利用価値は、公示地価ほどには上がっていないと考えるべきだ。
 
なぜなら、今のところ日本国内ではインバウンド関連以外に際立った成長産業が認められない。さらに言えば、都市部の不動産の基本である住宅は余っている。平成25年の調査で、日本には約800万戸の空き家があることが確認されている。
 
もう1つ、重要なポイントがある。日本では毎年約30万人の人口が減っている。不動産を利用する人間が減っているのである。つまりは不動産需要そのものが、マクロ的には減少していると考えていい。だから空き家が増えているのだ。
 
本来、この余剰感が市場価格に反映されれば、たとえインバウンドの需要が多少増えたとしても、住宅をはじめとした不動産価格は下落していいはずだ。現に、異次元金融緩和が日本経済に浸透するまでは下落傾向にあった。
 
つまり、公示地価に見られるような「不動産価格の上昇」は、本来あるべき需要と供給の関係を反映した健全なものではなく、一部マイナスにまでなっている異様な低金利と、4年前の4倍にまで膨らんだマネタリーベースの肥大化による異次元な金融政策に支えられた、不健全な値上がりなのである。
 

日本人と「マンション」のこれからを思う

 
日本人は、「不動産の購入」をすることに対して必要以上に精神を高揚させる遺伝的体質を持っている。基本が農耕民族であるからであろうか。「一生懸命」という言葉は、もとは「一所懸命」であった。我らの祖先たちは、土地を所有し、守り抜くことに何よりの価値を見出していたのだ。
 
ところが、今や多くの人は都会に住んでいる。一般的な都市居住者にとって、土地を所有することはほぼ不可能だ。そこに登場したのが、何十年もの間住み続けられるマンションという集合住宅。木造一戸建てに比べて劣化が遅く、品質や状態を確認しやすい。
今やマンションは都市居住者にとっては主流の住宅様式になっている。
 
しかし、日本人はこのマンションに住み始めて、高々60年にしかならない。マンションに生まれて、マンションに育ち、マンションに暮らし続けて、マンションで天寿を全うした人など、ほとんどいないはずだ。つまり、日本人はマンションについて未だによく分かっていないにもかかわらず、それが当たり前だと思いながら暮らしている。
 
このたび、私は「マンションは日本人を幸せにするか」という著作を集英社新書として刊行した。多くの日本人が当たり前だと思っているマンションの様々なことについて、私なりの「そもそも論」で考えてみた。
 
お金が借りやすくなったことを背景に、局地バブルで高騰したマンションを平気で購入している多くの日本人たち。彼らはなぜに不自然なまでに値上がりしたマンションを目の前にして、冷静な判断ができないのか。その空気感が、今回の公示地価の不自然な上昇にも反映されている。
 
そして、マンション居住の50年先にはどのような未来が待っているのか。
はたまた、マンションという居住形態そのものは日本人を幸せに導くのか。拙著では、そういったマンションの原点を探ってみた。ご興味のある方はぜひご一読いただきたい。
 

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