マンション業界に精通した気鋭の住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、都内6区(江東区目黒区港区新宿区、千代田区、中央区)の有名タワーマンションについて、徹底分析します。今回は東京都千代田区で10年以内に供給されたタワーマンション3棟を独自の視点で解説。今回は希少性の高い物件が含まれます。
 

 
千代田区というのは、文字通り「千代田のお城」があったところです。街としての実用面積が小さいだけに新築マンションの開発は少ないようにも思えますが、実際はいくつかはあります。
 
今回は、その中でここ10年以内に供給された注目のタワーマンションを3棟、紹介します。
 
千代田区のタワーマンション・不動産購入・売却
(写真はイメージです。本文の内容とは関係がありません。)
 
 

【物件1】パークコート千代田富士見ザ タワー

 
売主/三井不動産レジデンシャル JR中央・総武線 ・東京メトロ・都営大江戸線「飯田橋」駅 徒歩3分
全505戸(事業協力者戸数80戸含む) 2014年3月完成 地上40階建て
 
 

新築時の売れ行き通り、資産価値に高い評価

 
このマンションは、後述するお茶の水の「ワテラス」と比較されそうな位置づけにあるはずです。しかし、立地のイメージがあちらとは少し異なり、こちらの方が街としての賑わいがあります。地下鉄も4路線通っているので、利便性は高いかもしれません。
 
ここが開発される数年前、すぐ近くで野村不動産の「プラウドタワー千代田富士見」という物件が分譲されました。ちょうどミニバブルの絶頂期(2007年頃)に売り抜けられた物件です。あちらは駅から徒歩2分。こちらよりも条件はいいでしょう。
 
当時の平均坪単価は470万円前後とされています。それで306戸が即日完売ですから、まさにミニバブル現象でした。しかし、竣工・引渡し時にはバブル崩壊とリーマンショックで相当キャンセルが出た、という噂が伝わってきていました。
 
このマンションが新築として販売されていたのは、リーマンショック後の不況感がまだ濃厚に漂っていた2012年から2013年です。「プラウドタワー千代田富士見」の坪単価470万を下回って販売されても当然だったのですが・・・。
 
また、当時こちらより新築で一足先に完売していた、ワテラスの平均坪単価は440万円だったとのこと。私はあの時、それよりも価格は安くなっていいはずだと思いました。
 
ところが、ふたを開けてみると第1期255戸の坪単価は476万円でした。やはり「プラウドタワー千代田富士見」を下回ることはなかったですね。
 
しかし、このマンションの新築販売時点で、すでに中古になっていたプラウドも新築時の価格をやや上回って取引されていました。今に至る局地バブルの萌芽が、2012年の終わりころにはすでに現れていたのです。
 
建物が完成したのは2014年の3月。その後、中古としての取引価格は上がり続けます。ピークは2016年の年央。一時的に坪単価は700万円が目安になっていましたが、現時点(2017年3月)では600万円を少し上回るくらいでしょうか。
 
新築販売当時から、富裕層の思惑買いが多かった物件でもあり、「今のうちに売っておこう」という動きも多そうです。
 

ソフトサービスの充実がウリ

 
東京女子医大と提携した「プレミアムメディカルサービス」では初回利用料15,000円、2回目以降10,000円が必要らしいのですが特別な医療サービスが受けられるそうです。
 
また、「見守り&お知らせサービスmimamo(ミマモ)」というのは、住戸内での生活リズムを見守り、異常が発生したと思われる時に家族や防災センターのガードマンが確認してくれるものだそうです。
 
いずれもシルバー需要を狙っているようです。その割には、「大型住戸」が多いようです。間取りを見てみると、かなり余裕たっぷりで、45タイプすべてがワイドフロンテージだそうです。タワーマンションにありがちな柱型が住戸内に入り込んでいる造りも少なそうです。
 
一般にヴィンテージマンションとは築後数十年たっても高い価値を保ち続けているマンションを指しますが、この物件がその資格を備えているのは紛れもない事実だと思います。
 
近くにその後新たなプラウドタワーも分譲されましたが、立地面でも独自サービス面でも部屋の造りの面でも希少性が強いためです。
 
現行価格はちょっと高めではないかとも思いますが、今後急激に資産価値が下落することもなさそう。あと5年もすればヴィンテージの地位も確立できるのではないでしょうか。
 
 
 

【物件2】ワテラス タワーレジデンス

 
売主/安田不動産他 東京メトロ千代田線 「新御茶ノ水」駅 徒歩3分
全333戸(地権者住戸80戸) 2013年3月完成 地上41階地下3階
 
 

めったに出ない立地だった

 
千代田区というのは、皇居が広く、商業地が多いので居住用の有効面積はかなり狭め。そんな中で、これくらいの規模の開発は今後とも「まずめったにない」といっていいでしょう。そういった意味ではすごく希少性があります。
 
ただ、その希少性は居住性と比例しているか、というと、疑問は残ります。どちらかと言えば、オフィス街でキャンパスシティです。ここに住めば、どこへ行くにもかなり便利なことは確かで、JRや地下鉄の駅へもかなり至近。ただ、住むにはあまり優しい環境とは思えません。
 
目の前は車がビュンビュン走っている幹線道路ですし、近くにこれといったスーパーもありません。もっとも、開発エリア内にはスーパーマーケットやコンビニができたようですが、どの程度「使える」お店なのでしょうか?
 
「ちょっとお散歩でも」といえるようなスポットもありません。湯島聖堂やニコライ堂ばかり訪ねるわけにもいかないでしょうし。となると、「東京の真ん中にある千代田区アドレスのタワー」ということが最大のウリと言えるでしょう。
 
新築販売時の平均坪単価は450万円とされています。今から考えれば、この場所で坪450万円はかなり割安に思えます。ただ、販売が行われていたのは東日本大震災の直後で、坪単価450万円でも、新築時の販売はそれなりに苦労したようです。
 
当時は、坪単価450万円という水準であれば、もっと暮らしやすい港区や渋谷区の物件を選ぶこともできました。代官山や目黒周辺の人気エリアでも選択肢があったはずです。
 
建物が完成したのが2013年の3月。ちょうどアベノミクスのファンファーレがなりました。中古価格はどんどん上昇して、2015年の末には坪単価の相場観が700万円を超えました。
 
しかし、2016年に入ってからは失速が鮮明になり、現時点(2017年3月)では坪単価630万円近辺まで下がってきています。
 
このマンションもヴィンテージマンションの資格は十分といえます。今後、このマンションの交通・立地スペックに勝る物件が出てくるとは思えないからです。
 
そう考えると、資産価値には相当底堅いものがあると思います。新築時の450万円が当面の底値かもしれません。
 
 

「地権者住戸80戸」の意味を考える

 

このマンションは、複合再開発型の物件です。元は大きな工場があって地主は1社、というわけではありません。いろいろな権利者がいて、彼らはその権利と引き換えに住戸を得るのです。そういう方のために80戸分の地権者住戸が用意されているのです。
 
これは、全戸数333戸の24%です。マンションの管理で大切なことは、全体の4分の3が賛成しないと決められません。この場合、全区分所有者のほかに2戸が加わって反対すれば、管理組合は重要な決定ができません。もし、管理規約に著しく地権者に有利な条項があったとしても、それを覆すのはほぼ不可能と思われます。
 
たとえば、今販売中のあるタワーマンションは、地権者の管理費を事実上ゼロにする管理規約が定められています。売主は三井不動産レジデンシャル。大手だからといって変なことはしない、と考えるのは甘いかもしれません。マンションの管理規約はできたら隅から隅まで熟読されることをお勧めします。
 
 
 

【物件3】ウェリスタワー千代田岩本町

 
売主/エヌ・ティ・ティ都市開発他
東京メトロ日比谷線「小伝馬町」駅徒歩2 分/「秋葉原」駅徒歩8 分、銀座線・半蔵門線「三越前」駅徒歩8 分、都営新宿線「岩本町」駅徒歩5 分、東京メトロ銀座線「神田」駅徒歩9 分、都営浅草線・東京メトロ日比谷線「人形町」駅徒歩10 分、JR 総武快速線「新日本橋」駅徒歩5 分、JR 山手線・京浜東北線・中央線「神田」駅徒歩8 分/「秋葉原」駅徒歩10 分
全120 戸 2013 年5 月完成 地上23階建て
 
 

千代田区は千代田区なのですが・・・

 

東京都千代田区は、言うまでもなく「千代田のお城」の周辺。その区域のおおよそは山手線の内側ですが、ほんの少しの例外がこのマンションのあたり。秋葉原と岩本町、神田和泉町の周辺は、千代田区が山手線から突き出ている例外的なエリアです。台東区と中央区の間に割り込むように入り込んでいます。
 
このマンションのできる岩本町近辺がどういう街かを一言で言うと「雑居ビルエリア」でしょうか。マンションもあるにはありますが、かなり少ないですね。少なくとも、ファミリーで住もうという気持ちは生まれにくいエリア。
ネーミングがただの「岩本町」ではなく、わざわざ「千代田岩本町」となっているのは、「千代田区」のブランドでカモフラージュするためでしょうか?
 
現地は、南側こそ多少開放されていますが、他3 方向は雑居ビルにぐるりと囲まれています。このあたりで中古マンションを探そうという人は少ないでしょう。こういう場所でマンション分譲事業を行おうという事業主の勇気に敬服してしまいます。リセールバリューには制限があるとお考えになっていいでしょう。
 
 

注目すべき交通利便性

 
先述したとおり、徒歩10 分以内で利用できるのは9 路線9 駅。こういう条件を備えた物件は、まず見当たりませんね。ただし、これだけで資産価値が保証されるというものではないと思います。やはり立地の「ザワザワ感」を凌駕するほどの材料ではないでしょう。
 
 

タワーマンションにしてはまあがんばっている間取り

 
住戸プランを検討してみましょう。
 
間取り 1LDK~3LDK
専有面積 31.72 ㎡~83.67 ㎡
 
柱型をなるべく避けて、空間の使いやすさを工夫しているのが読み取れます。ただ、一部に少し残念な間取りもありました。設備・仕様はふつうでした。
 
新築での販売価格は、2012年の9月時点で判断した限り、推定坪単価で320 万円前後。これは、当時のあのエリアの市場性から鑑みて「若干高いかな」といったところ。ただし、この物件は南以外を雑居ビルに囲まれています。
 
南面住戸以外の中層階までは前に建物があり、眺望は極めて悪いです。そのあたりを200 万円台の後半にして「買いやすさ」を演出していたようですが、いくら安くてもそういった住戸はお勧めしません。「買ってはいけない」と考えるべきです。
 
というのも、周辺の中高層の中古物件に比べても条件が悪いのでリセールバリューに難点が生じるからです。もし、ご購入になるのなら高層階の開放感のある住戸がベターです。そういった住戸なら、リセールバリューもある程度は期待できるからです。
 
建物は2013年の5月に完成。ちょうどアベノミクスで世の中が明るくなり始めた頃です。建物の完成と同時に、中古での取引価格はぐんぐんと上がり始めました。局地バブル感が極まった2015年の末には、坪単価は400万円に迫ります。
 
しかし、その後にバブルが縮みだして2017年の3月時点で350万円前後に落ちてしまいました。この立地は、わざわざ他所から移り住もうとは考えにくい場所。千代田区にあるということ以外にステイタス性はありません。そのあたりがやはり資産性を弱くしている原因かと思われます。
 
とはいえ、このマンションの強みは何と言って交通利便性が抜群であること。空室リスクは極めて低いと思われますので、安くなったところで、自身で住むのではなく、運用目当てに購入するのは「あり」かもしれません。現状でも、表面利回りは5%を超えていると思われます。
 
 
榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。
 

●ご存じですか? 不動産売買の仲介手数料は半額以下になることを

東証二部上場企業グループの不動産流通システム(REDS)は、不動産売買の仲介手数料を半額から最大無料としつつも、お客様からの満足度の高いサービスを実現しています。

広告宣伝費などのコストを徹底的にカットしつつ、資質と経験を兼ね備えたベテランスタッフの運営でサービスの質は高め、お客様に利益を還元しています。

業界の常識を覆すREDSの新たなビジネスモデルは、「ワールドビジネスサテライト」「とくダネ!」などのテレビ番組をはじめ、各メディアでも紹介されています。
 
 平日・土日祝日も営業中(9:00-19:00)です。お気軽にお問い合わせください。フリーダイヤルはこちら0800-100-6633

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る