東京のマンション市場がすっかり冷え込んでしまっている。今の状況は、明らかに局地バブルの「終わりの始まり」と見て取ることができる。4月から新年度入りするが、データと肌感覚からうかがえる2017年度のマンション市場動向について述べていこう。

'2017年度の都内マンション市場動向・購入・売却
(写真はイメージです。本文の内容とは関係がありません。)
 
 

目に見えて売れていない新築マンション

 
新築マンション市場では、統計数字にその動きの一端が表れている。不動産経済研究所が毎月発表する市場動向によると、2017年の1月と2月の合計は前年同期間比で供給戸数が微減。初月契約率も好不調の目安とされる「70%」を割っている。
 
しかし、そういった表面上の数字よりも、実際の市場の空気はさらに悪い。例えば、人気の高い世田谷区や杉並区で現在発売されている新築マンションの半分以上が完成在庫だ。人気の新築マンションだと完成前に完売するのが普通。なのに完成するまで売り切れていないという状況は、2016年の後半からずっと続いている。
 
私は、東京23区のうち20区や川崎市の一部で販売されている新築マンションについてエンドユーザー向けに独自の見解を示す「資産価値レポート」を有料で販売している。現地調査は3か月に1度のペースで行っており、竣工してなお販売している物件も確認している。もちろん、それらの販売物件のオフィシャルサイトも漏れなくチェックする。
 
そういった活動をしていると、市場の大きな流れを否が応でも目にすることになる。最近の傾向は、「完成在庫の値引き販売が増えてきた」ということだ。
 
2008年に起こったリーマンショックから、その後2年にわたったマンション業界の「敗戦処理」の風景が、今また再現されようとしているのかもしれない。当時、在庫に苦しむマンションデベロッパーがなりふり構わず値引き販売を行った。果たして、2017年は再びあのようなマンション値引きの年になるのだろうか?
 
私が「局地バブル」と呼んでいるマンション価格高騰のエリアは、首都圏では東京の都心と城南、湾岸エリア、そして川崎市や横浜市の一部だ。それ以外のエリアでは、概ね建築コストの上昇分が値上がりしただけにとどまっている。しかも、販売の足は鈍い。
 
都心から離れた郊外では建築コスト上昇分を価格に転嫁することすらできていない。土地を安く仕入れるか、デベロッパーが利益を削って価格を下げているが、それでも販売が芳しいとは言い難い。
 
これほどマンションが売れなくなった理由はハッキリしている。リーマンショック後の不況期に比べて景気は多少良くなった。失業者も減った。しかし、肝心の個人所得が伸びていないからだ。分かりやすく言えば、住宅を買いたい人々の給料は増えていないのに、マンションの価格だけが上昇してしまったのだ。それでは売れないのも当たり前だ。
 
今後、ほとんどのマンションデベロッパーが郊外での開発を諦めざるを得ないだろう。新築販売の主戦場は都心やその近郊に限られてくる。
 
では、局地バブルエリアでの市場動向はどうなるだろうか。
 
新築マンションについては当面、今のような停滞が続くと考えられる。デベロッパーはハナから安くは出せないが、出して売れなければ値引きをするしかない。住友不動産やゴールドクレストのように「絶対値引きをしない」という方針をかたくなに崩さない一部のデベロッパー以外は、大手でも完成在庫は軒並み値引きに走るはずだ。

 
中には、野村不動産のように竣工前でも思い切った営業政策をとるデベロッパーも出てくるかもしれない。
 
 

健全なはずの中古マンション市場にも陰りが

 
では、中古マンション市場はどうなるのか?
 
新築と違い、中古マンション市場は需要と供給の関係が働きやすいため、本来、より健全な市場価格が形成されやすい。売買価格をいくらにするのかはそれぞれの取引を行う個人の事情によって決まるからだ。分かりやすく言えば、「早く売りたい」と考える売り手は、多少価格を安くしてでも取引の成立を急ぐ。逆に「早く買いたい」と考える買い手は、売り手の言い値でも買おうとする。
 
ただし、市場の透明性には大きな問題があると言えそうだ。どのマンションの、どこの住戸が、いくらで売買されたのか、ということが一般人には分かりにくい。仲介業者ならレインズ(不動産流通標準情報システム、業者間で売買データを共有できる)で多少の情報が得られるが、一般の消費者はこのシステムには建前上、アクセスができない。
 
しかし、業者を介してならデータは得られるので、私が1.5か月に1回程度、提携している仲介業者さんの会議室で無料開催している「売却相談会」では、その場ですぐにレインズのデータを確認し、相場観をお伝えして、出力した資料も全部差し上げている。また、どうすれば高く売れるかも助言させていただく。
 
その売却相談会を開催していて思うのは「不動産の仲介システムをご存じないエンドユーザーが多すぎる」ということ。中にはセミプロ級もいらっしゃるが、大半の方は仲介業者の言いなりになってきたか、これから言いなりになりそうな方々と見受けられる。
 
中古マンション市場では、この仲介業者の与える影響が大きい。彼らは手数料商売で、売買が成立しなければ1円にもならない。だから、なんとか売買契約を成立させようと動く。例えば、売り手には「市場環境が悪いのでもう少し安くしないと」と説得し、買い手には「売主さんは強気だから、値引きはこれくらいしか難しいですよ」と囁く。
 
最近、そういった仲介業者さんたちと接していると、中古マンション市場は「バブル崩壊前夜」ではないかと思えてくる。というのは、値上がり期待で購入されたマンションや、自宅の値上がりを確定させようとする「売却物件」の数は多いのだが、「実際に大きく値引きをしてまで売ってしまおう」という動きはほとんど見られない。であるのに、気配値だけがジリジリと下がっている感じだ。
 
特に大きな思惑が渦巻いているのが、江東区の湾岸エリア。中でも、話題の新市場に近いスカイズとベイズという2つのタワーマンションは、値上がり期待で買われた住戸が多いようだ。それぞれ、建物が完成する少し前から売り住戸が目立っていた。今でも、売り出し住戸が多いことで有名なのがこの2つのタワーだ。
 
こういう市場環境だと、何かのキッカケで一気に下落の動きが顕著になることがある。特にこの2物件は豊洲新市場の移転問題というアキレス腱を持ってしまった。仮に移転が中止になったら、どういう事態を招くのかが危ぶまれる。
 
 

景気回復よりマンションバブル崩壊が先か

 
新築、中古とも2017年度のマンション市場は下落基調が続きそうだ。さらにアメリカの利上げも不気味な要素だ。さらに、日本を取り巻く韓国や北朝鮮、中国などの地政学的な環境も、今後日本経済に安定に寄与するとは思えない。
 
多少期待できるのは、アメリカの景気がトランプ政権の政策でよくなりそうな気配があること。ただ、それが日本の景気に結びつき、マンション市場にフォローの風を吹かせるまでには時間がかかりそうだ。どうやらその前に、一般人にも分かるカタチで「バブル崩壊」が起きそうな予感がする。
 
 
榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。
 

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