マンション業界に精通した気鋭の住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、都内6区(江東区目黒区港区、新宿区、千代田区中央区)の有名タワーマンションについて、徹底分析します。今回は東京都新宿区のタワーマンション3物件の資産価値を独自の視点で解説します。
 

新宿区のタワーマンション・不動産購入・売却
(写真はイメージです。本文の内容とは関係がありません。)
 
 

Tomihisa Cross(富久クロス)

 
売主/野村不動産他JV 東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑前」駅から徒歩5分
全1,093戸(非分譲住戸含む) 2015年9月竣工 地上55階・地下2階建
 
 

バブル期の地上げ虫食い跡を見事に復活

 

このエリアは、平成バブル期に激しい地上げが行われていたそうです。2013年頃の「西富久地区第一種市街地再開発事業」のオフィシャルサイトには、以下のような記述がありました。
 
「バブル崩壊後、西富久地区の人口は地上げ前の約半数に減ってしまい、地区の約3割は駐車場、建物の約半数は空家となりました。この状況に、住民自ら『自分達の手で街を再生させよう』と、全国で第一号なる住民主導の『西富久街づくり組合』を結成し、はや10年以上が経過いたしました」
 
 
地元の人々がこの勉強会を作ったのは1990年。早稲田大学の支援を得て「西富久街づくり組合」が結成されたのが1997年。1999年からURが低未利用地の取得を開始。
 
「準備組合」が作られたのが2001年だそうです。都市計画の決定は2008年、本組合の設立認可が2009年の11月。それからでも、着工までは3年ほどかかっていたことになります。地元の方々は、本当に粘り強く話し合いを重ねてこられたのですね。心から敬意を表したいと思います。
 
 
さて、時間がかかっただけあって、計画自体は壮大なものでした。地下に駐車場。人工地盤の上に商業施設や、ペントハウスと呼ばれる戸建て住宅が作られました。それは、もちろん元の地権者用。
 
羨ましいですね。数年、仮住まいをしなければならなかったのでしょうが、おそらく費用ゼロで大きくて新しい家に住み替えられたのですから。地権者さんにとっては本当によかったことだと思います。
 
スーパーとクリニックモールの広さは「1,000坪」と物件オフィシャルサイトに表示されていました。これも相当な規模です。単純なスクエアとしても58m×58mの空間になります。食品の他にも品揃えが充実していることでしょう。

 
他には認定こども園に、800㎡の広場もありますので子育てには最適ですね。また、このタワーだけで1,093戸の規模ですから、共用施設もまずまず充実していますね。ただ、ゲストルームやパーティラウンジは、それなりに需要があると思いますがベーカリーショップなんていうのは、そのうち持て余すでしょう。
 
ただ、新築販売時のオフィシャルサイトでは「イゴゴチ…」みたいな仕掛けで初期の頃は何やらワケの分からないプロモーションを展開しており、残念でした。
 
 
タレントも最初は原田泰造に小泉今日子、マツコ・デラックスが出ていました。中盤以降は小泉今日子だけになりました。その当時はNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」が好評で、彼女の好感度も上昇中。
 
どこかの湾岸タワーは、一度も勝てない若手プロゴルファーを起用して販売が思うようにいかずに苦労していた時期です。でも、こちらは小泉今日子の好イメージに乗って、販売もスイスイと進んだようです。
 
 
2014年初め頃のオフィシャルサイトで、「概要」に気になることがありました。
 
まず、タワー1,093戸のうち「非分譲」住戸が何戸なのかの表示がありませんでした。そんなこと、すでに分かっていることだから表示すべきですね。戸数を出していないのは、売主(特に野村不動産)が戸数が多いとデメリットになると考えていたからかもしれません。200戸や300戸もあると「そんなに多いのか」と、ちょっと引いてしまう方がいるかもしれませんから。
 
 
2つ目は施工会社。「戸田建設・五洋建設共同企業体」と表示されています。いずれも悪い企業ではないのですが、何かのしがらみを感じます。このクラスの建物なら、多少コストがかかってもスーパーゼネコンに任せるべきではなかったでしょうか。

 
 

さて、最後に価格と資産価値について考えます。
 
ここは大規模な一体開発とはいえ、新宿区の富久です。「新宿の中心地に近い」というのが最大の取り柄です。あとは「新宿御苑前駅へ徒歩5分」であること。したがって、10年後に中古マンションとして売却する場合の宣伝文句は普通に「新宿御苑前駅から徒歩5分のタワーマンション」となります。
 
 
私は2013年の春の時点で、野村不動産が強気に走って、平均坪単価を350万円くらいで出してくるかと予想しました。しかし、外れました。実際は坪単価330万円で、ちょっと驚きましたね。
 
結果的に、新築販売時には飛ぶように売れました。
 
山手線内で地下鉄の駅から徒歩5分です。しかも複合開発エリア。ハッキリ言ってしまうと、竣工時に即売却すれば買値より高く売れました。今でももちろん、中古価格は新築販売時を超えています。
 
私は、このマンションについては再開発組合で長年苦労してこられた方々に非常な敬意を表したいと考えています。
ただ、残念ながらヴィンテージタイプではないと思っています。
 
確かに、資産性は今後もそこそこ安定するでしょう。しかし、建築後10年、20年たっても多くの人々が「あそこに住みたい」と熱望し「中古物件が出てくるとすぐに売れてしまう」という物件にはならないはずです。
 

この物件の基本は
 

  1. 新宿御苑前駅から徒歩5分
  2. 1,093戸と大規模であること、そして共用施設の充実ぶり
  3. 商業施設との一体開発

 
ただし、
 

  1. 立地のブランド性が薄い
  2. 地権者住戸の数を不開示(管理組合を支配している可能性)
  3. 長期的には2014年当時の「ローレルコート新宿タワー」のように坪300万円を切る

 
以上のような視点で眺めてみてはいかがでしょう。
 
それにしても、新築時の坪330万円という価格は、かなり魅力的でした。このレベルだと、中期的にも大幅な資産劣化はなさそうです。
 
 
 

ザ・パークハウス 西新宿タワー60

 
売主/ 三菱地所レジデンス他 東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩9分
全954戸(事業協力者住戸を含む) 2017年7月完成予定 地上60階・地下2階建
 
 

最大のネックは駅への遠さ

 

そもそも、タワーマンションというものは土地を有効活用できることにその存在意義があります。
 
限られた敷地の中でより多くの床面積を生み出すことで、多くの人がその場所に住める、というところがタワーのミソ。
そのためには、より多くの人が「住みたがる」場所でなければタワーマンションを作る意味はないのです。
 
さて、果たしてここはどうでしょうか?
 
確かに、人が多く集まる西新宿エリアです。ちょっと東側にはニョキニョキと高いビルが建っています。「新宿副都心」などという言い方が一時期流行りました。都庁が移転してきたので、本物の都心になってしまいました。
 
しかし、格式のあるビジネス街といえるのは、大手町だけです。西新宿は、あくまでも新興のオフィス街です。
そこで、このマンションの最大のネックはどの駅へも遠いことです。
 
東京メトロ丸ノ内線西新宿駅徒歩9分、
都営大江戸線都庁前駅徒歩8分、
都営大江戸線西新宿五丁目駅徒歩7分。
 
私としては、タワーマンションはできる限り駅に近い場所にあるべきだと考えています。せいぜい徒歩5分以内が許容範囲かと。この計画は、いちばん近くて駅徒歩7分。しかも大江戸線なので注意が必要です。
 
駅からの距離というものは通常の場合、駅の出入り口からマンションの敷地までを地図上で測ります。したがって、実際に改札を経由してホームに到着するまでは、所要時間の中にはカウントされていません。
 
大江戸線は東京メトロよりも地下深くを走っています。しかも、多くで下りのエスカレーターがなく、階段を歩かないといけません。きっと、プラス3分じゃきかないでしょう。プラス5分くらいですか。だから「7分」というのは実際の10分以上はかかるということを知っておかなければなりません。
 
丸ノ内線はさほど潜らなくてもホームに辿り着けます。だけど、徒歩9分です。タワーマンションの立地としては、少し離れすぎていますね。実際、駅からの距離は資産価値と連動しているので、考慮に入れなければならないのです。
 
 
入居後10年後、中古で売却するとします。スペックは「丸ノ内線・西新宿駅徒歩9分 築10年のタワー」。
中古タワー物件なら、ほかにもっと条件のよいものが山のように流通しているはずです。
 
そういった中で、買主にとってこのマンションのアピールポイントになるのは何でしょう?
当然、「価格が安ければ買おうか」ということになります。つまり、資産価値が至って脆弱なのです。
 
いかにも「新築の罠」にはまりそうな物件です。
 
ただ、若干の救いはあります。それは、このマンションが60階建てで、208.97メートルと都内最高層ということ。
タワーマンションの魅力の第一は眺望であり、開放感です。
 
幸いにして、このマンションの西側には眺望を阻害する建物が少なめ。うまくいけば富士山の見える住戸も多いはずです。高層階に限った話ですが、中古で売りに出す時の最大の魅力はそこでしょうね。
 
 
さらに、再開発エリアであるということ。10年後には街の風景がガラリと変わって、みんなが知っているスポットになっている可能性もあります。そうなれば、資産価値にも好影響。しかし、あくまで可能性ですので、そうならないこともあるかもしれません。
 
新築販売時に注目されたのは価格でした。2014年の春に販売が終了した富久クロスは、坪単価330万円と値ごろだったので、嵐のように完売しました。
 
あちらは丸ノ内線新宿御苑駅徒歩5分で山手線内側。一方こちらは丸ノ内線西新宿駅徒歩9分のうえ山手線外側。
常識的に考えて、当然、富久クロスよりも安くて良かったはず。
 
ところが、新築時の平均坪単価は350万円前後かと推測できました。高いのは700万円なんていうのもあったようですね。
 
2014年10月末に日本銀行の黒田総裁が金融緩和の第2弾をぶち上げた頃が販売のピークでした。世間では「黒田バズーガ2」と呼ばれています。これによって都心の不動産市場ではしぼみかけていたバブルが、再び膨らみ始めるというちょっと異様な状態でした。
 
 
このマンションも、その余波を完全に受けて完売に至りました。ただ、それに伴い、異変も起こりました。
 
つまり、外国人と相続税対策の富裕層という実需ではない購入が増えたのです。
 
当時、モデルルームでは「中国語ばかりが聞こえてきた」と知らせてくださった方もいました。三菱地所レジデンスは「外国人比率を2割に抑える」という社内規定を設けたという未確認情報も聞こえました。
 
入居は2017年の秋ごろからだそうです。
 
 
 

THE CENTER TOKYO(ザ・センター東京)

 
売主/野村不動産他 都営新宿線「曙橋」駅から徒歩5分
全426戸 平成19年11月竣工 地上38階・地下2階建
 
 

やや地味な印象がある築10年のタワーマンション

 

マンションデベロッパーは、開発分譲する物件のネーミングに凝る傾向があります。マンションの名前で売れたり、売れなかったりすると真剣に思い込んでいるからです。ただ、あまりに凝りすぎるせいか、時々ものすごくおかしな名前のマンションが登場します。
 

中央区晴海で現在も販売が続いている「ドゥ・トゥール」はその典型。音だけ聞いているとまるでコーヒーのチェーン店みたいですね。フランス語だそうです。英語にすると「two towers」だとか。一般人には意味不明なので、普通に「シティタワーズ晴海」と名付けた方が、よほど分かりやすく、また使いやすいはずね。
 
この「ザ・センター東京」も、おかしいといえばおかしなネーミング。確かに、東京の真ん中付近ではありますが、なぜこの名前なのでしょう。アドレスは「東京都新宿区市谷本村町」です。最寄り駅は都営新宿線の曙橋駅、もしくは大江戸線牛込柳町駅。両方とも、かなり地味で、比較的新しい駅でもあります。
 
だからかどうか「曙橋」や「市ヶ谷」はもちろん、「新宿」でもなく、ましてや「牛込柳町」でもない「東京」になってしまったのでしょう。
 
デベロッパーの気持ちは分からないでもないですが、この場所で「東京」となっているところに違和感が生じるタワーマンションです。せめて「新宿」とか「市ヶ谷」にしてほしかったですね。
 
このマンションの敷地には、もともと厚生労働省の統計部があったと、古い地図には出ています。ということは、国有地の払い下げでしょうか。売主は野村不動産や三井不動産、三菱地所などの大手JV。いかにも元国有地という感じの立地ですね。
 
防衛省庁舎や警視庁の機動隊とは敷地が隣接している模様。防衛省の施設は、どこかからミサイルが飛んできても自衛隊の最新兵器で防御されるはずですから、そういう意味では安心かもしれません。
 
このマンションは2007年の完成。今からちょうど10年前です。販売はおそらく2006年頃がピークだったはず。リーマンショックで崩壊した前回の「ミニバブル」が盛り上がっていた頃。したがって、このマンションの新築時販売価格は決して安くはなかったようです。
 
ネットなどでは坪単価298万円から593万円というデータを見つけました。現時点で売り出されている住戸の坪単価を調べると、37階が465万円、26階が353万円。新築時とあまり変わっていない感じがします。
 
やはり、マンションというものはできるだけ安い時期に買うものです。高い時に買ってしまうと、ずっと値下がりしたままになってしまいますから。
 
物件としては悪くありません。
 
建築費が高騰する前に発注されたようで、階高が3.3メートルと余裕があります。共用施設も、水を使うハイリスクかつハイコストなものはほとんどありません。
 
周辺エリアは下町っぽい感じがしますが、生活利便性は高そうです。タワーマンションの一番のメリットである、眺望や開放感もまずまず。しかも、今後この辺りにニョキニョキとタワーマンションが増えそうな気配もうかがえません。
 
つまりは、地味ながらそれなりの資産価値を保ち続けそうな物件といえるでしょう。
 
一方、あえてデメリットを見出すとすれば、その「地味さ」そのものでしょう。
 
タワーマンションは、一般に派手好きの人が好む住居形態です。「階数ヒエラルキー」なるものが云々されるのも、住んでいる人が意識しているからこそ。はっきり言って「見栄っ張り」なお方たちが需要層となることを考えれば、この「地味さ」は一種のデメリットですね。
 
しかし、それを抜きにすると、それなりに高く評価できる物件ではあります。
 
多少、名前負けしている感じはしますが。
 
 
榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。
 

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