マンション業界に精通した気鋭の住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、都内6区(江東区目黒区、港区、新宿区千代田区中央区)の有名タワーマンションについて、徹底分析します。今回は東京都港区のタワーマンション3物件の資産価値を独自の視点で論じます。あの有名タワーマンションは、優良物件、それとも・・・?

 

港区のタワーマンション・購入・売却
(写真はイメージです。本文の内容とは関係がありません。)
 
 

「シティタワー麻布十番」

売主/住友不動産 都営大江戸線・東京メトロ南北線「麻布十番」駅から徒歩4分
全502戸(事業協力者住戸118戸) 平成21年5月完成 地上38階・地下2階建
 
 

黒光りの姿で仁王立ち

 

名前は麻布十番といっても、アドレスは三田1丁目。

お隣の三井不動産R分譲の「パークコート麻布十番」もそうですが、そもそもこの2つのマンションのネーミングに「麻布十番」がついていることに、やや疑問を感じます。

「麻布十番」といえば、下町の風情が残る商店街をイメージされる方も多いのではないでしょうか。

商店街の方々は、この2つのマンションに「麻布十番」という名称が使われることに違和感を持つ方もいらっしゃるのではないかと推測しています。

 

この2つの巨大なタワーマンションが立つ三田1丁目は
「昭和」を感じさせる、ちょっとレトロな街並みです。

近くにはお寺や神社などもあって、なかなかの風趣を感じます。

一方、このタワーマンションのフォルムは黒をベースとしたガラスウオールの外観。
街並みに全くと言っていいほど調和していません。

 

建物というものは、人間が作る物の中ではかなり大規模な「造形芸術」といえます。

つまり、その場所にふさわしい美しさを求めなければいけないものだと、私は考えています。

この頃の「シティタワー」シリーズには、街の雰囲気に自分たちを調和させようという意思は、全くと言っていいほど感じられません。

 

湾岸エリアに建っているのなら、まだ違和感は少ないのですが、この麻布十番、三田1丁目の街にデカデカと仁王立ちしている姿は、残念だといわざるをえません。

昔、リクルートがこれと似たようなオフィスビルを新幹線の駅前を選んで次々と建てていました。

色はグリーンとブルーが主体で、あの当時は何とか見られましたが、今では・・・。

 

お隣のパークコート麻布十番はアースカラーの、オーソドックスといえばオーソドックスな外観。

10年後、20年後、30年後にどう見えるでしょうか。

中古価格や、賃貸の人気度でも差が出てしまうのではないかと思っています。

 

ガラスウォールが間取りに影響

 

この黒のガラスウォールスタイルでは、躯体の柱は全て建物の内側に入り込むことになります。

そうなると、自然に居室部分にも柱が出っ張ってくるのです。

かなり間取りプランのデザインに影響し、非常にレイアウトがやりづらくなります。

結果、とても暮らしにくそうな間取りになってしまっていますね。

なぜに、間取りを悪くしてまでこのガラスウォールにこだわったのでしょうか。

 

また、いくらタワーとはいえ、バルコニーが狭すぎます。

外観のデザインにこだわりすぎて、本来の居住性をおろそかにしているのではないでしょうか?

10年、20年という歳月をそこで過ごす人の暮らしを大切に考えるなら、このようなことにはならないと思います。

 

内廊下だけれど、価格が…

 

住友不動産が分譲する「シティタワー」シリーズは、私の知る限り、基本的に内廊下スタイルを採用しています。

内廊下というのは、ホテルのように廊下が完全に建物の中にある方式です。

 

一方、普通のマンションは外廊下方式。この方式では廊下部分が床面積に参入されません。そのため、販売できる住戸の床面積が多く取れます。

逆に内廊下は住戸としては販売できない部分ですので、建築費分は各住戸の販売価格に割り振られることになります。

結果、新築時の販売価格が高くなります。

内廊下は、住んでいて高級感、上質感が得られますが価格自体は高くなるというデメリットもあるのです。

 

新築販売時はかなりの高値だった

 

だからというわけではないのでしょうが、このマンションは、新築販売時としてはちょっと高すぎました。

 

下記は2013年8月時点での価格表示。完売まであと数か月という時点です。

 

販売戸数 7戸
専有面積 94.76㎡~152.04㎡
販売価格 15,760万円~38,000万円
 
坪単価を計算してみました。なんと、549万円から826万円です。

それ以前の2 年間の表示とほとんど変わっていませんでした。

この価格は、都心でバブルが膨らんでいる今(2017年3月1日時点)から見ても、お高めですね。

 

要注意となる事業協力者住戸数

 

マンションの管理組合で重要な事項を決議する場合、たいていは区分所有者の4分の3の賛成が必要です。

例えば、規約改正や使わなくなった共用施設の用途変更などがこれに当たります。

 

このシティタワー麻布十番の場合、全戸数の23.5%が借地権者など土地権利者が土地と等価交換して得た事業協力者住戸。彼らは一般の入居者と考え方が異なることもあるため、結束すれば重要な決議が覆されることもあり得ます。

 

そういった意味で、この数字は将来に不安を残します。

 

隣接エリアで再開発計画が進行中

 

実は、このマンションのある辺りは、広い範囲で再開発が行われています。

このシティタワーと三井不動産Rのパークコートが先行していますが、西側の駅と高速道路に近い地区の着手はこれからです。

「(仮称)三田小山町西地区市街地再開発事業」ということで計画はまとまりかけてはいますが、まだ固まりきってはいません。これが完成すると、このマンションは眺望や資産価値に少なからぬ影響を受けそうです。
 
 
 

「白金タワー」

 

売主/住友商事他 都営三田線・東京メトロ南北線「白金高輪」駅 徒歩1分
全581戸 2005年11月完成 地上42階・地下3階建
 
 

オードリー・ヘップバーンでデビュー

 

マンションが盛んに広告を出していたのは2004年頃。今から13年も前のことです。

その頃、マンション広告の世界ではインターネットはまだ主役ではありませんでした。スーモやヤフー不動産も黎明期だったような。

広告には大物タレントが起用されることが多く、黒木瞳や田村正和、仲代達也、海外からは、リチャード・ギアにマドンナが出ていました。

 

そういう時代にこのマンションも市場デビュー、広告のキャラクターにはオードリー・ヘップバーンが起用されました。

もちろん、過去の写真を利用した広告作りですが、かなり版権で揉めたと聞いています。

まあ、この手の「洋モノ」にはよくあるトラブルですね。

しかし当時、世間的には「オードリー・ヘップバーンのマンション」として、かなり強烈な印象を与えました。

 

やはり「駅徒歩1分」と「直結」は強い

 

新築でも中古でも、マンション市場において「駅徒歩1分」というのは別格です。

それだけで市場での絶対的な優位性が担保されています。

その中でも、さらに別格なのが「直結」です。

駅構内からそのままマンションの中に入れる、というのはものすごい強み。

この白金タワーは「直結」です。

 

そのほかのスペックとしてまず、1階に食品スーパーが入っています。その他、クリニックなどもテナントとして入っています。

いわゆる「複合開発」というスタイル。駅徒歩1分だからこそ成立します。

 

「白金高輪」駅の開業は比較的最近で2000年9月。

このマンションはその5年後に竣工したということになります。

この白金タワーは、いわばランドマークの役割を果たしています。

こういうマンションの資産性には安定感がありますね。

 

日本初、管理でのヴィンテージ化をめざす

 

私は個人的に、「マンション管理」というフィールドでは、このマンションが日本で一番だと思っています。

特に優れているのが適正さと効率性、健全性です。

 

2011年、管理会社を長谷工コミュニティから三井不動産レジデンシャルサービスにリプレースしています。

ちょっとした不祥事がキッカケだったと聞いています。

 

それを主導したのが今も理事長を続けているお方。

この方、理事長に就任するや、容赦なく改革を続けてこられました。

今や、このマンションの管理は適正で、住民たちの満足度はかなり高いのではないかと推察します。

 

一方、理事会の負担は限りなく軽減されました。「任せられるものは全て管理会社に任せる」という方針にして、理事の数も最小限に減らしました。毎回の理事会も短時間で終わります。よくありがちな管理組合の「利権化」は皆無。外部から招聘した監事が、きっちり監事としての役割を果たしています。

 

不祥事がキッカケで始まった改革でもあるのですが、マンション管理というフィールドで、これほど優れたシステムが導入され、適正に機能している管理組合を、私は他に知りません。
 
 
 

「THE ROPPONGI TOKYO」

 

売主/三井不動産レジデンシャル他 都営大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木」駅徒歩3分
全611戸 平成23年10月完成 地上39階・地下1階建
 
 

六本木の坂を下った「途中」に誕生

 

六本木周辺には坂が多いですね。六本木自体も、丘の上にあると言っていいでしょう。

西麻布方面へも麻布十番方面へも、また赤坂・虎ノ門方面へもなだらかな坂を下っていきます。

唯一、乃木坂・南青山方面に向かう外苑通りが少し上がっている感じです。

この「THE ROPPONGI TOKYO」も、六本木の交差点から赤坂・虎ノ門方面へ坂を下る途中に誕生しました。

 

六本木の駅からは「徒歩3分」の表示。まあ、それに偽りはなさそうです。

ただ、この六本木の場合は「近ければ良い」というものでもありません。

というのは、飲食街に近すぎることはデメリットも多いからです。

言わば「不夜城」の隣にあるようなもの。

繁華街としての六本木を大好きな方ならいざ知らず、普通の暮らしを求めるとすれば考え物です。

 

ホテルのようなサービスが最大のウリ

 

ただ、こんな場所にマンションができること自体、かなりレアなケースだといえます。

六本木ヒルズに世間を騒がせた住民がいたように、ここにも有名人がたくさん住んでいそうです。

そういう話題性もあってか、売り出し直後の販売はいたって好調の様子でした。

最上階の高額住戸はことごとく早期に完売したと言われています。

 

このマンションは場所以外にこれといった特徴がありません。

唯一、ウリといえるのが「クラブレジデンスの発想」というもの。一流ホテル並みのサービスを提供することで、マンションのワクを超えた住まいを目指しているようです。

もちろん、お金もかかります。管理費は、普通のファミリーマンションの約4倍の水準です。

これを「高い」と感じるか「当たり前」と思うかは、個人の価値観の問題です。

 

「クラブレジデンス」というからには、目指しているのは、イギリスの貴族たちが集う社交「クラブ」のようなものでしょうか。

日本には、なかなかああいうシステムが根付きませんでした。日本発の実業家社交クラブとして知られる慶應義塾の交詢社や、海軍の水交社、陸軍の偕行社くらいでしょうか。

 

ただ、日本の紳士諸兄はそういった場所で知的刺激に満ちた社交を楽しむより、銀座の高級「クラブ」の雰囲気を楽しむ方が多いようです。そういった意味で、本当の「クラブ」になれるのかどうかは疑問ですね。

 

坪単価550万円は今から思えば安い?

 

販売している時期から私は、坪550万円は別に高いとは思いませんでした。

実際、その価格で当初はかなり販売が好調でした。

この単価だと90㎡で1億5000万円くらいになります。

庶民感覚とはかけ離れていますが、そんなにお金持ちでなくても、ちょっとした高給取りなら買えるレベルかもしれません。

 

こういう物件は、ある意味で市場原理を超越しています。

六本木のあんなにぎやかな場所に住もうという発想自体が特殊でしょう。

ただ、六本木という妖しげな街の魅力を存分に味わえる場所であり、「ヒルズ族」的なステイタス(?)も備えた立地でもあります。

そういったマンションには、通常の市場価格は適用されません。

むしろ、この1.2倍くらいの価格でも買い手は現れたと思いますし、現に、今はそれ以上で取引されているはずです。

 

管理組合の運営上の問題点

 

こうしたマンションにはつきものかもしれない問題点を指摘しておきます。

まず、全611戸のうち事業協力者住戸が84戸、非分譲住戸が182戸も含まれていました。

他に店舗・事務所が12区画もあります。これは、かなり複雑な構成となります。

全体の半数近くが、高いお金を支払って購入した人ではないのです。

ここを買う方は、そういう人たちと並んで区分所有権を持つことで管理組合に加わることになります。

つまり、共有者の年収や資産の均質性が望めません。

最初の10年くらいは良いのでしょうが、その後の管理組合の運営で揉める可能性があります。

入居者の間で何か問題行動があったとしても、元の売主や管理会社は、実際に責任はないため、逃げに回ることが多いでしょう。余裕のある人は、さっさと処分して出て行くでしょう。自分は住まずに賃貸に回す人も出てくるかもしれません。

 

ほとんどの方は、そういったリスクまで「想像」せずに、このマンションをお買いになることでしょう。

先に申し上げたとおり「特殊」な物件ですから、何事も常識で推し量れないところがあります。

 

こういったリスクを背負っているだけでなく、あの喧騒の環境です。六本木という街にどっぷり浸かることを「良し」とする方でないとなかなか買えないマンションと言えます。

 

ただし、これらの懸念点を受け入れられる方にとっては、それなりに魅力的な物件だと思います。

新築時は震災後のタワー離れが影響などで、平均坪単価は500万円位まで落としている気配さえうかがえました。

今の実勢価格は軽く600万円を超えていると推定されます。ここでお買いになっても、そう悪い選択とも限らないかもしれません。

 
 
榊 淳司(住宅ジャーナリスト)
1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。一般の人々に分かりにくい業界内の情報や、マンション分譲事業の仕組み、現場担当者の心理構造などをブログ上で解説。近著に『マンション格差』(講談社現代新書)など。

 

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