地味にスゴイ不動産会社、REDS(レッズ)の校閲担当・ミサコです。

 

10月5日にスタートしたドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系 水曜夜10時〜)、第1回放送分の視聴率は12.9%と、まずまずの滑り出しだったようです。一部、現役校閲者さんからは「編集者じゃないのだから、あんなのありえない」「経験が物を言う校閲を新人にさせるなんて、校閲をナメてる」というような不満の声もちらほらあったようですが、むしろ面白がっている関係者のほうが多いのかも。なにしろ校閲って実は本当に大切な仕事なのに、世間にはほとんど知られていませんからね。こんなにフィーチャーされるなんて! 「校閲とは誤字脱字のチェックと、事実関係の確認をすること」…と、仕事の内容も毎回宣伝してくれるなんて! いきなり「校閲」という仕事に光があたり、嬉しいやらドギマギするやら…という感じです。

 

そういえば、出版社でもないのになぜ、不動産会社に校閲担当(残念ながらガールではありませんが)がいるのかについて、ちょっとご説明します。当社は不動産会社ですが、一般的な不動産会社とは異なり、インターネットでの集客がメインです。つまり、Webサイトのコンテンツによってお客様に当社のサービスや特徴をご理解いただくしかありません。そのコンテンツの内容が間違った事柄を伝えていたり、あるいは誤字脱字が多かったりすると、会社としての信頼性が揺らいでしまうので、編集、校正、校閲の担当者が記事のチェックをしっかりする体制を整えているのです。そして私はその中で、校閲を担当しています。

 

校閲ガール03_1

 

表紙に誤植発覚! 刷り直す時間はない。さぁどうする?

 

私は元々『地味スゴ』(というのが、このドラマの巷での呼び名になりましたね)の舞台である景凡社のような出版社で雑誌の編集をしていました。編集者として原稿の校閲もしていましたし、校閲さんに編集部に来てもらって校閲をお願いする…なんていうこともやっていました。なので、編集者としても校閲者としても、第2話のように「表紙に誤植」「見逃し」「訂正シールを貼る」なんていう展開は、我がコトのようにドキドキします。

 

第2話を見逃した方のために簡単にストーリーをご説明すると、景凡社に中途採用で入社した河野悦子(石原さとみ)は、憧れの人気ファッション誌『ラッシー』の編集部員になる夢を絶たれ、校閲部に配属されて、ぶつくさ言いながらも研鑽に励む毎日。文芸編集部の売れっ子編集者・貝塚八郎(青木崇高)が担当する人気主婦ブロガー・小森谷亜季(ともさかりえ)の初めての本の初校の校閲を任されたのですが、亜季に頼られて校閲の立場を超えて制作にのめり込んだあげく、こともあろうに本の顔ともいえる表紙の誤植を見落とすという大きなミスを犯してしまいます。「ミスを指摘する部署がミスをしてどうするんだ!」と編集部の上司たちから激しい叱責を受けますが、出版イベントを控えているので刷り直す時間はなく、今回はシールを貼って対応する…ということになり、校閲部員総出で5000部の本に訂正シールを徹夜で貼って…。

 

まぁ、実際はそんなことにならないように、原稿はライター(あるいは作家)もチェックし、編集者もチェックし、デスクや副編集長、編集長もチェックし、そして校閲さんもチェックするという何重ものチェック体制があるので、校閲担当だけに責任を押し付けられることはほとんどないですけどね。そういえば、編集者時代、校閲も済ませて「校了」(印刷へ回す前の最後のチェックが完了した…という状態)した原稿を印刷会社に渡したところ、印刷会社の営業担当から電話があって「ここ、間違っていませんか?」と確認されたことがあります。そして、実際、間違っていたのですよね。印刷会社の営業さんに心から感謝し、また、その人のことを改めて信頼したのはいうまでもありません。ドラマの中でも、印刷所の倉庫で徹夜でシール貼りをする校閲部のメンバーのために、印刷会社の営業さんが夜食の差し入れを持ってくるというシーンがありましたが、印刷会社との良い関係も、本(書籍でも雑誌でも)づくりの過程では大切な要素だったりします。

 

完成した本を開いた途端、ミスを見つけるという悪夢。

 

そうやって綿密なチェックをしたとしても、第2話にも出てきたように「見落とし」ってあるのです。「大きい文字ほど(間違いに)気がつかないんですよね」「完成した本を開いた途端、ミスを見つける」「自分の目が信じられなくなる」…などなど、ドラマ内でも校閲部員が次々と過去の失敗体験を告白して、大きなミスをしてしまった悦子をなぐさめていましたが、それって校閲者にとっては「あるある」以外の何モノでもありません。

 

ちなみにTwitterで「校閲」と検索してみたら、こんなツイートがありました。

 

平凡社 ‏@heibonshatoday
すみません… #校閲ガール、ボーダーKは今日もまだ見られてません…。
他社さんの本を書店で見ていたらカバーの著者名が間違っているのを発見してしまい、心臓が痛くなったことがあります…。

 

平凡社ライブラリー @Heibonsha_L
きゃー、カバーの誤植…す、刷り直しとか…
シール対応とか…また胃が痛い…
#他人事ではない
#校閲ガール
#私どもは平凡社

 

誤植って本当に他人事ではないのです。平凡社さんや、平凡社ライブラリーさんのように、第2話を見ながら胃や心臓が痛くなった編集者、ライター、校閲者はきっとたくさんいると思います。「何度も読み直しているのに、なぜスルーしちゃったのかな、なぜ気づかなかったのかな…」と、痛い過去を思い出しながら。

 

校閲者にとって最高の褒め言葉とは?

 

編集者気取りで会社に損害を与えたうえ、大切なデビュー作の表紙を誤植で汚してしまって作家にも迷惑をかけた悦子。校閲の立場を超え、たびたび編集に首を突っ込む悦子の態度を苦々しく思っていた校閲部の先輩社員・藤岩りおん(江口のりこ)が、しょげる悦子にこんな自分の過去を告白します。「ある有名な女性作家のミステリーの校閲を担当し、褒められて浮かれていた。ところが出版後、クライマックスで登場する黒幕の名前が間違っていることが発覚。書籍はすべて回収し刷り直しとなり、怒ったその作家は今もうちの会社には書いてくれない」と。

 

「個人のミスは校閲部のミス、ひいては出版社の運命を左右することもある。それを忘れないように」。藤岩の言葉は悦子の心に響きます。「思い違いだった。大反省だよ」――校閲部を飛び出し、作家に会ったり、現場を検証したりと破天荒な悦子でしたが、第1話を見て「あんな校閲は現実ではありえない」とあがった声に、実は2話でしっかり応えているんですね。

 

残念ながら普段はほとんど光のあたることのない「校閲」という仕事を、こんなにも大々的に取り上げてくれている『地味スゴ』。悦子がひと目惚れした男性(菅田将暉)が、実は小説家・是永是之(本名は折原幸人)であることも少しずつ明らかになっていき、そこからも目が離せません。

 

是永是之から戻ってきた初校の中に「文字を通して、あなたと心がつながった気がしました」というコメントがありました。それを見て、校閲部の部長・茸原渚音(岸谷五朗)は「素敵な表現ですね。校閲者にとっては最高の褒め言葉じゃないですか?」と悦子に言います。でも、茸原部長がこのまま「物分かりのいい、ただの良い人」で終わるわけはないだろうなぁとか、悦子と是永是之こと幸人は、今後どうなるんだろうとか、口喧嘩してばかりだけれど、悦子と青木のコンビもいい味出してるなぁとか、次回以降の展開がいろいろ気になります。
以上、仲介手数料が最大無料の不動産会社の校閲担当、ミサコでした。

 

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