地味にスゴイ不動産会社、REDS(レッズ)の校閲担当・ミサコです。

 

ドラマ「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系 水曜夜10時?)が始まりました。校閲ガール・河野悦子に扮するのは石原さとみさん。冒頭のシーンは大手出版社・景凡社の中途採用面接の場面でしたが、悦子の気合が入りまくったファッションに、いきなり目が釘づけです。新卒から数えると7回目の面接で、面接官には「君か」と呆れられ、「また来ました」と堂々と答えちゃう。受付でも「毎年落とされているプチ有名人」と噂されるキャラクターです。開始早々「どこまで突き抜けてくれるのだろう」と期待を持たせてくれますよね。

 

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景凡社の人気女性誌『Lassy(ラッシー)』の世界観に高校生の頃から憧れを持ち、Lassy編集部に入りたくて仕方がない悦子ですから、当然ファッションに手抜きナシです。第1話で目についたのは、がっしりしたチャンキーヒールのプラットフォームパンプス。ファッションに合わせてさまざまなシューズが登場しましたが、さすが悦子、この秋冬のトレンドもしっかり押さえていました。

 

憧れの景凡社へ入社! でも配属先はファション誌編集部ではなく……

 

さて、第1話で、面接官の一人だった校閲部の部長・茸原渚音(岸谷五朗)が悦子の言動に興味を持ち、晴れて悦子の景凡社への入社が実現しました。「いざ憧れのLassy編集部へ!」と意気揚々と出社した悦子を待っていたのは、地下中1階の突き当りにある窓もなく、どんよりと暗い校閲部と茸原部長です。

 

「河野悦子さんですね。ようこそ校閲部へ。河野悦子、略してコーエツ。まずはうちでやってみませんか?」

 

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納得のいかない悦子ですが、校閲部での働きが認められればLassy編集部へ移動できるかも!と、究極のポジティブ・シンキングぶりを早々に披露します。さて、ここで校閲部の先輩である藤岩りおん(江口のりこ)から「校閲とは何か」「悦子の最初の仕事は」に関する説明がありました。いわく

 

  • 試し刷りのことを「ゲラ」と呼ぶ
  • まずは「ノンブル」のチェックから始める
  • 次に原稿を「素読み」する
  • 誤字脱字をチェックする。明確な間違いは赤ペンで修正。疑問や指摘は鉛筆で書き込む
  • 表記も統一する
  • 文章を「読む」のではなく、一文字一文字「見て」
  • 削除する場合は「トル」
  • 赤字を撤回する場合は「イキ」。ここまでが校正。
  • その後、事実関係の調べ物をする。これが校閲。

 

ドラマではセリフだけでなく、実際にどうやって赤字を入れるかを動画のインサートで見せていましたので、校閲というものにまったくなじみがない方にも分かりやすかったと思います。だけど、「ゲラ」「ノンブル」「トル」「イキ」……、不思議な用語だらけですよね。

 

●「ゲラ」とは

 

ドラマの中でも説明がありましたが、試し刷りのことです。印刷所に入稿して、最初に出てくる印刷物のことですね(校正刷り、あるいは初校とも言います)。出版社では媒体ごと(雑誌ごとだったり、書籍ごとだったり)で印刷所を変えることが多いのですが、印刷所への入稿まではオンラインで行っても、ゲラや再校などの校正紙は印刷所から「印刷された紙の状態」で届けられます。そして、校正(あるいは校閲)はあのように手書きで行われるのです。編集者、著者、校閲部のチェックが終わったら、印刷所へ戻します。よくよく考えるとこの古典的なやり取りって、結構不思議ですよね。

 

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●「ノンブル」とは

 

ページ番号のこと。元々はフランス語の「nombre(英語のnumber=数に当たる)」から来ているそうです。

 

●「トル」「イキ」

 

校正記号と呼ばれるもので、今回は説明がありませんでしたが、削除したままスペースをあけておくなら「トルママ」あるいは「トルアキ」、削除した部分を詰めるのであれば「トルツメ」と、赤いボールペンや細めのサインペンで書くのが一般的です。

 

校正記号は、校閲者や編集者、あるいは著者が入れた赤字(の修正)を印刷所が間違いなく直して、次の校正刷り(再校)を出せるよう、作業のミスをなくすための、いわば「共通の約束事」なのです。

 

校閲者に必要なのは、疑問に思ったら自分の目でとことん確認すること

 

さて、第1話で校閲部の茸原部長は、悦子のことをこんなふうに評していました。「校閲とは文字ひとつから疑ってかからなければならない仕事。疑問に思ったら自分の目で確認する。彼女はそれを地で行く人だった」

 

面接時に茸原部長が着用していたネクタイピンに関して「本当はピアスでは?」と疑問を持ち、悦子は面接の帰りにわざわざそれを売っている店に立ち寄って、「ピアスとして販売しているもので、ネクタイピンではない」ということを確認していたのです。そして、この「疑問をとことん追求する姿勢」が、悦子らしい校閲へと繋がっていきます。

 

大御所作家・本郷大作(鹿賀丈史)のゲラ刷りの校閲を担当することになった悦子ですが、ゲラ刷り(初校)に入れた赤字が、再校に反映されていないことに気づきます。それは実在する橋の名前でした。それ以外に悦子が指摘した部分は全て直っているのに、その1ヶ所だけが初校のままだったのです。

 

ドラマの中でも説明がありましたが、例えフィクションである小説でも、事実について書いてある場合には、誤りがないように事実関係をチェックします。これを「ファクトチェック」とも言います。実在する駅名や地名、例えば電車のダイヤ(時刻表)、家の間取りなど、事実確認する対象は多岐に渡ります。あと、雑誌や書籍に店の情報を掲載する際に、住所や電話番号を確認するのも重要なファクトチェックです。場合によっては、そこに書いてある番号に本当に電話をして確かめます。

 

なので、校閲を行う場合には、「あれ?」と気づくためのアンテナと、このような地道な作業をコツコツと続ける気力が必要なのです。見た目はファッショナブルで派手な悦子ですが、実は意外に校閲者の仕事に向いているのかもしれません。

 

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ドラマの細部まで楽しもう。悦子やLassy編集部スタッフのファッションも見逃せない!

 

さて、このドラマ、校閲部の地味な感じも「あるある」と思えるのですが、ファッション誌『Lassy』編集部の面々も、なかなか興味深そうです。

 

例えば編集長・亀井さやか役は芳本美代子さん。チラっとしか出てきませんでしたが、風格というか威厳があって、ファッションも含めて映画『プラダを着た悪魔』の名物編集長・ミランダ(メリル・ストリープ)を彷彿とさせます。また、副編集長・波多野望(伊勢佳世)は、「あれもやって」「これはまだ?」と、キリキリと部下に向かって指示を出しまくっていて、「あんな人が上司だったら胃が痛くなりそう……」と、部下である編集部員・森尾登代子(本田翼)に思わず同情してしまいます。

 

悦子のファッションはもちろん、Lassy編集部のファッションもトレンドを押さえつつ、オフィスで動きやすいパンツスタイルが多い印象です。スカーフ使いやアクセサリー、靴、バッグ、さらに悦子の部屋着やヘアスタイルに至るまで、秋冬のお手本になりそうなスタイルばかりです。それに比べて、校閲部は地味な印象が拭えませんから、悦子のファッションがより引き立っています。

 

一方、地下にあってどんよりと暗い校閲部ですが、何人も部員がいるのに、いつでもしーんと静まり返っていて、紙をめくる音とペンを走らせる音だけが聞こえてきそう。デスクの上のちょっと昭和チックな蛍光灯のスタンドとか、辞書や百科事典などが部内にたくさん置いてあることなど、「あるある」と納得です。

 

出版社によっては、社内の校閲部に社員校閲者がいるのではなく、校閲はすべて外注で補います。具体的には、校閲の会社に発注し、分量が少ないときや単発の場合には1名か2名を、継続して常に校閲の仕事がある場合には数人を派遣してもらいます。その派遣された「校閲さん」(と呼ばれます)が校閲室、あるいはそれぞれの編集部にいる場合もあります。景凡社の校閲部の面々、ひと癖もふた癖もありそうな個性派揃いとお見受けしました。これからの展開では、きっと校閲ガール・悦子を悩ませたり、学ばせたりするのでしょう。

 

悦子のファッション、そして「このタコ!」をはじめとする威勢のいい啖呵、一目ぼれした大学生・折原幸人(菅田将暉)との展開、さらに校閲者として成長していく様子を、次回以降も楽しみにしたいと思います。

 

以上、仲介手数料が最大無料の不動産会社の校閲担当、ミサコでした。

 

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