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  • 公開日:2020年2月4日

民法改正で「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」になるとどうなるのか【REDSエージェントの不動産コラム】

REDSエージェント、宅建士の菅野です。2020年4月に改正民法が施行されます。4月1日を境に、不動産の売買契約書の条文も改正民法に合わせた新しいものに刷新されますので、今回はどこが変わるのかガッツリ説明します。

 

契約書・女性

(写真はイメージです)

 

改正民法の焦点は「瑕疵担保責任」→「契約不適合責任」

 

今回の改正民法で不動産にかかわるのは以下の7点です。

 

(1)「瑕疵担保責任」という用語が「契約不適合責任」へ変更
(2)個人根保証について極度額設定の義務化
(3)賃貸借契約更新後に新民法の適用
(4)賃借人の修繕権の制定
(5)賃借物の一部滅失等による賃料の減額
(6)原状回復について通常損耗、経年変化に対する賃借人の責任免除
(7)敷金返還の明文化

 

ほとんどが賃貸借に関する事項となっているようですが、売買に影響のあるのは(1)です。どのように影響があるのでしょうか。

 

現行民法で「瑕疵担保責任」について記されている条文は以下のとおりです。

 

第566条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権または質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合およびその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知ったときから一年以内にしなければならない。

 

第570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

 

要約すると
「売買契約したものに隠れた瑕疵があり、契約した目的が達成できない場合には、買主は契約の解除をすることができ、契約解除できない場合には損害賠償請求のみ可能」

 

という内容です。ここで「あれっ?」と思った方は売買経験がある方ですね。民法の条文と売買契約書に書かれている内容とはちょっと違うからです。

 

これまで瑕疵担保は民法規定よりも緩くしていた

 

弊社の場合、個人どうしの売買契約書にはこう書かれています。

 

売主は、買主に対し、建物の専有部分における隠れたる瑕疵につき以下のものに限り責任を負い、それ以外の建物の瑕疵および土地の瑕疵ならびに共用部分に原因がある瑕疵について、責任を負いません。
(1) 雨漏り
(2) シロアリの害
(3) 給排水管の故障
なお、買主は、売主に対し、本物件について、前記瑕疵を発見したとき、すみやかにその瑕疵を通知して、修復に急を要する場合を除き売主に立会う機会を与えなければなりません。
2 売主は、買主に対し、前項の瑕疵について、引渡完了日から3ヶ月以内に請求を受けたものに限り、責任を負います。なお、責任の範囲は、修復に限るものとし、買主は、売主に対し、前項の瑕疵について、修復の請求以外、本契約の無効ないしは解除を主張し、または損害賠償の請求をすることはできません。
3 売主は、買主に対し、本契約締結時に第1項の瑕疵の存在を知らなくても、本条の責任を負いますが、買主が本契約締結時に第1項の瑕疵の存在を知っていたときは、売主は本条の責任を負いません。

 

この契約書どおりだと契約解除も損害賠償もできません。「これじゃ買主に不利じゃん」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、個人どうしの不動産売買は基本的に中古物件で、築年数がある程度経ち売主が使用したものを売買するわけですから、程度の差こそあれ瑕疵はあって当たり前だと考えるべきものとなります。

 

また、民法の条文をそのまま適用すると、「買主が瑕疵を知った日から1年以内」に契約解除または損害賠償請求すればよいということになり、いつまで経っても売主は気の休まる日が訪れません。

 

ですので、この条文については契約書で期間や適用内容について取り決めができる「任意規定(任意法規)」という扱いとなります。(※ちなみに「任意規定」の反対は「強行規定(強行法規)」と呼ばれます。この法規については、契約で変更することはできません。たとえば「消費者契約法」や「宅地建物取引業法」などで、業者が消費者などに不利な契約を結ぶことはできません)

 

以上が現行の「瑕疵担保責任」に関する考え方となります。

 

契約不適合責任になってより明快に

 

それでは改正民法条文を紹介します。

 

(買主の追完請求権)
第562条 引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

 

(買主の代金減額請求権)
第563条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。 
 一 履行の追完が不能であるとき。
 二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
 四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

 

(買主の損害賠償請求および解除権の行使)
第564条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求ならびに第五百四十一条および第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

 

(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
第565条 前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。

 

(目的物の種類または品質に関する担保責任の期間の制限)
第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知ったときから一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

 

(抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求)
第570条 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。

 

いかがでしょうか。格段にボリュームアップしていて、かつ理解しやすい文章になっています。

 

今回の改正では、買主側の権利として「追完請求権」「代金減額請求権」というものが明文化されました。

 

「追完請求権」とは引渡しを受けたものが契約で定めた内容に満たない場合に、それを満たすよう請求できるという権利です。ただ売主には、不相当な負担を買主に与えない限り、買主の求める方法と違う別の方法で追完することができます。

 

次の「代金減額請求権」とは、上記の追完を売主が行わなかったら、買主は代金の減額を請求できるという権利です。契約内容を満たさないものを引き渡したのだから満額は払わなくてもいい、ということなので、理にかなっていますよね。

 

そして、もちろんこれまでの民法に規定されていた損害賠償請求権や解除権もあります。

 

売却物件の現状告知は細かさが求められるようになる

 

「モノ」だけでなく借地権などの権利の売買についてもこの法は準用されます。契約不適合責任の期間については、契約不適合を知ったときから1年以内と、瑕疵担保責任と同じですね。

 

最後の570条は、もともとの「瑕疵担保責任」の条文566条の内容を踏襲していますが、新たに「契約の内容に適合しない」という文言が加わっています。今回の改正はこの「契約の内容に適合しない」という部分が非常に重要となります。

 

契約の内容として「これだけの品物だから、この値段です」という説明の明示が必要となってくるので、それなりに高いものである不動産については、今まで以上に細かい現状の告知がなされなければなりません。

 

今後、売却をされる方は「物件状況報告書(告知書)」「設備表」を作成するときには気を遣う必要があります。いわゆる「瑕疵担保免責」についても、不具合や懸念事項を事細かに記載してかつ責任を負わない旨の記載が必要になってくる可能性があるからです。

 

最後に、「契約不適合責任」についても「瑕疵担保責任」と同様、「任意規定(任意法規)」となります。契約書(および、重要事項説明書)で売主・買主の責任についてのバランスを取り回しできるのはこれまでどおり仲介する不動産業者です。

 

法改正後はいっそう、仲介業者が重要な任務を負うことになりますので、売買をされるみなさま、ぜひ業者選びには慎重になっていただければ思います。

 

 

菅野 洋充(REDSエージェント、080-6789-2788、hiromitsu@red-sys.jp)
北海道出身。所有資格は宅地建物取引士、宅建マイスター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(個人資産相談業務)、ホームステージャー2級、競売不動産取扱主任者、ITパスポートなど。担当エリアは東京都内一円、埼玉県南部、南東部、神奈川県川崎市、横浜市。
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